友人
少し短いと思います
聡と安藤は学生達の事情聴衆に付き合った。
警察の聴衆は実に簡素な物で聡と安藤は少し拍子抜けした感が彼らの態度に見え隠れしている。
二人は廊下に出ると安藤が、
「なぁ、相馬、何でこうだと思う」
警察の調べに対して思った事を聞いた。
「他県の事件との類似性だろう」
聡が答える。
「やっぱりそう思うか」
第一目撃者である生徒達の居る部屋からは明るい笑い声が聞こえて来た。安藤が怪訝に思いドアをノックすると中から男性の声で
「どうぞ、開いてますよ」
返事があったのでドアを開くと生徒三人が泣き笑いし、その中心に見知らぬ男がいた。
「あっ教授」男子生徒が挨拶すると男が立ち上がりながら振り返り
「初めまして、私、臨床心理士の阿部と申します」名刺を差し出しながら言い、頭を下げる。
聡と安藤も名刺を差し出し
「安藤と申します」
「相馬と申します。うちの生徒が御世話になっております」と挨拶を交わす。
聡は、生徒達三人の顔を見渡して
先程までのくもりが無い事に驚いた。
「相馬、彼等の表情・・・見たか?」
「ああ、これが臨床心理士の力なんだな・・・うーん、実際、驚いたよ」
「僕は彼らの話を聞くだけですよ、何もしちゃいない」
二人の会話を聞いていた阿部は笑いながら告げる。
「興味本位で御聞きしますが、昔ね催眠術とかの本を読んだ事あるんですけど臨床心理士の先生から見て催眠術とはどう思われますか」聡が聞くと
「難しい質問をされますね。各個人個人の性格が違いますから暗示に掛り易い人とそうで無い人がいます。暗示に掛り易い人は、何をしても掛り易い訳ですから催眠術と言うのは、現実的では無いと思っています。ただ、誘導は、有り得ると思います。脳は結構、嘘を突きますからね、其の影響は、目や耳、匂いや味覚までも左右させますからね」安部は答えた。
「・・・うーん、なるほどね。脳の事に関しては全く同意見です。ありがとう。変な質問して」
聡は言い、
「君達はもう大丈夫かい?・・・警官と話が出来るぐらいに落ち着いたかい?」と聞くと
二人の会話を聞いていた学生達もはっと現実に帰り、
「はい、阿部先生のお陰でこの辺に乗ってた物が すぅーってなくなっています」
女学生の一人が言うと
「だよね、先生は臨床心理士じゃなくって除霊師じゃないんですか?」
もう一人の女学生が笑いながら言った。
「本当に臨床心理士だって」
阿部も微笑みながら返すとドアが開き、
「あの・・・御話を伺っても」
警察官がドアと壁の隙間から顔を覗かせ聞く
「良いですよ、私達も此処で聞いていて良いですよね」阿部が答えると
「同席して頂いて結構です。じゃ、早速に」
警察官と刑事が二人入って来た。
「じゃ、廊下から部屋に入って来た所からで良いでしょうか」
椅子に座りながら刑事と警官が聞き取りを始めた。
・・・・・実験室のシミは、ゆっくりと壁の元の位置へ移動して行く。
仕事を定時に上がった優子は、会社の同僚に誘われ会社の近くのカフェでガールズトークに花を咲かせている。久しぶりの友人達との時間は、楽しい物だった。
「優子、何時までバイクに乗ってるの? 社内の男共が、美人なんだけど近寄りがたいっとか言ってるよ、あんたこのままだと婚期、逃すかも」友人の一人が言うと
「きっと、こんな私が惹かれる相手が現れるって。それまで待つしかないね」優子が言う。
「今のあんたが好きになるって言ったら、後、特殊能力者か何かじゃないの?」友人が言った。
「あんたねぇ」違う友人が言い、
「私なんか、もう焦っちゃってさぁ、この際、言い寄って来る奴でいいかってまで思ってるんだから」
みんなで、大笑いしていると優子の携帯が鳴った。
「あ、ごめん。お父さんだ」優子は言いながら立ち上がって
「もしもし、お父さん、何?・・・うん・・・え~、大丈夫なの?ほんとに・・・怖いね、うん、もう暫くしたら帰るよ」と電話を切ると
「お父さんのトコの大学の研究室で惨殺死体が出たんだって」優子が言うと
「あの例の犬がやったって奴?」
「そうみたい」
「大阪に出たんだ、北上してる見たいだね」
「あれ、絶対、犬なんかじゃないよ。そんなに大きい犬って居ないと思う。優子はどう思う?」
「うーん、よ・う・か・い、かな」
「うん、可能性有るね」
「笑うとこかも、だよ」
「笑え無いって、京都のあれ、知ってる?」
「おっと、話、飛ぶね〜」
「ニュースでしてた焼野原よね」
「そうそう、それさー、超高熱と超低温の焼野原でしょ。で、狐が穴だらけで死んでたって。狐の一匹を殺すのにそんなに大袈裟なハイテク使うかよ〜」
「そうなんだ」優子が言うと
「あんまり、うち、暇だったから新聞読んでたら書いてあったよ」
「なんで あんなとこに狐がいたんだろう。狐ってもっと寒いとこじゃ無かったっけ」
「北狐の事?、違う、違う。普通の狐ってあちこちに居る見たい」
「タヌキもそうだしね」
(病院に現れた狐かな、だったら誰かが仇を打って呉れた事になるんだけど、あり得ないことかな)
優子は、そう考えながら未だ湯気の少し上るカフェラテに口を付けた。
目撃調書の終わった三人の学生を聡は其々、家まで送る事にして住所を聞き始めると安藤が女子生徒一人の家は自分の家の方向だから乗せて行くと言い。
もう一人の女生徒と男子生徒を乗せて聡自身も帰る事にした。
刑事と警察官、阿部氏に挨拶をして三人は駐車場に向かった。
「相馬教授、教授の車、自動車部の人達が欲しがってますよね」男子生徒が聞くと
「教授が手放さないのは、亡き奥様との思い出がいっぱいある車だからよ、超有名な話よ」女生徒が言い、「助手席に座っちゃダメよ、奥様の席なんだからね」と言った。
「何で君は知ってるんだい?」
聡が聞くと
「さっき、安藤教授から聞きました」
答えて、舌を少し出して微笑んだ。
「私も教授みたいな旦那さんが良いな〜」
女生徒が呟くと男子生徒がクスクスと笑っているので
「なによー、その笑いは」
ムッとしながら女子生徒が男子生徒を睨む。
「まぁまぁ、さぁ乗って」
聡が二人の学生を促し、車に乗せた。




