九話 黒魔法
「メイ、さっきの声ってもしかして……」
ミアがうずくまるメイに聞いた。
「リリアナが黒魔法の使用で連行されたわ」
「え……」
黒魔法。それは大昔から禁忌とされた魔法のことだ。普段は金色に光る魔法陣が黒く見える。闇属性に括られたそれは世界の物理法則をゆがめてしまう。
「リリーが使ったのは蘇生よ」
おそらくミアがリリアナから感じた恐怖はそれが原因だろう、とメイが言った。
「でもそれはっ……」とメイが奥歯を噛み締める。
「メイ……」
オダルディが階段から転落した時だった。なにかがリリアナに話しかけて来たのは。
「王女様、この男を助けたいんだろう?」
なにかがリリアナに囁く。リリアナは虚な目で動かなくなったオダルディを見つめている。
「助けてやろう」
「どうやって……?」
「リリー、耳を貸さないで!」
メイがそう叫ぶが、リリアナはなにかをじっと見つめ続ける。
「…………いいよ」
メイの耳にはそれにしか聞こえなかったが、ただ一つだけわかったことはリリアナは大切な何かをなくしたということだけだった。リリアナの口がなにか呪文を唱える。
オダルディの倒れた床に魔法陣が浮び上がる。魔法陣は黒く、禍々しい。
――黒魔法!
リリアナが呪文を唱え終えると、突然メイの視界が光りに包まれる。次の瞬間、オダルディがまた呼吸を再開した。
しばしの沈黙のあと、リリアナは床に倒れ込む。
なにかはメイに言った。
「君はなにか望みはあるかい?」
「何をしたの」
「何でも叶えよう。――対価をくれるならね」
「あんたなに」
「僕の話を少しくらいは聞いてくれてもいいんじゃないか」
「リリアナに何をしたの!」
メイが声を荒げると、絶望的な答えが聞こえた。
「別に大したものは頂いていないししていないよ。それに、今運命を捻じ曲げても、ね」
メイが何も言えずにいると、「ああ、ちなみに僕は神だよ〜」そんな気の抜けた声がメイの耳に届く。
「どういうことかしら」
「今にわかるさ」
自称神は瞬きの間に消えた。メイは倒れた二人を運び、ベットに寝かせる。寝かせた数十分後、二人は目を覚ました。
「ねえ、あいつに何を取られたの?」
メイがそう聞いても、リリアナは答えない。
「なにも」
そう答えるだけ。
――あれは黒魔法よね?
――あの自称神はなんなの?
そんな疑問は残り続け、ついにメイがトリリアン王国を離れる日となった。
トリリアン王国を離れてからメイは黒魔法について調べた。
黒魔法は闇属性であること。
もう死滅しているはずであること。
世界の物理法則を歪める魔法の総称であること。
その中に、蘇生があること。
リリアナが使ったのはこれなのだろう。
でもあの自称神のことはまったくわからなかった。
そんな時に、メイはオダルディの訃報を聞いた。『今運命を捻じ曲げても、ね』そんな自称神の言葉が蘇る。
「つまり、オダルディさんは結局死ぬ運命だった、と?」
メイの意識が現実に戻る。
「多分ね。でも……オダルディは生きていたのよ」
「だからオダルディさんはまた死んじゃうって言いたいの……?」
ええ、とメイが頷く。メイは立ち上がり、ミアの肩に手を乗せる。
「わたしが、運命をねじ曲げてやるのよ」
ミアが自分も手伝う、と言うとメイは「あの二人の絡みが見たいだけだわ……」とぼそっと呟く。
——メイはやっぱりツンデレだね。
ミアはそんなメイを見つめ、そう思った。
◇◇◇
「——禁忌を犯した者、黒魔法を使用した者は特別な裁判にかけられます。
魔女裁判みたいだと思った人、気にしないで関係ないから。
その日、トリリアン王国ではその裁判が行われることになっていた。
被告人はなんと第一王女、リリアナ・シャビア。
弁護人はあの有名な手紙の魔女、メイ・リーファン——え、知らない?
えー他は、割愛させていただきます。
なんかどっかからメイのことをちゃんと解説しろとか言ってる奴がおられますが無視させていただきます」
「すごい適当な裁判長……」
レビーが今までの裁判長の言葉に突っ込む。
「大丈夫、あの裁判長もちゃんとやってくれるよ!」
まぁやらなかったらどんな目に遭わせるかもうとっくに知ってると思うけど……とミアが不穏なことを言う。
「……ミア、まさかと思うがあの裁判長を傀儡にしてないよな」
「傀儡とは聞き捨てならないなぁ。ちょっと言うこと聞いてもらうだけ」
「それを傀儡と言うんだよ……」
「まぁ、冗談は置いといて」
レビーから呆れたようなため息がする。
裁判長の厳かな声が聞こえる。
「裁判を始めます」
どうも涼木です!
更新が遅れていまい申し訳ないです……
十話は一ヶ月後までには更新できたらいいなと思います。
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