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強制的に転生させられたおじさんは公爵令嬢(極)として生きていく  作者: 鳶丸
本編

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1218 おじさん妹が寝ている間にまたもや開発してしまう


「いってきまんもーす!」


「まんもーす!」


 喧しいのが公爵家から出て行く。

 二人を見送りながら、おじさんは思った。

 今日も元気だなーと。

 

「さて」


 と、おじさんは妹の部屋に戻る。

 果物をすりおろしたものを食べて、少しは元気になったようだ。

 

 ただ、隣にいるおじさんにぎゅっとしがみついている。

 安心するのだろう。

 ぐりぐりとおじさんのお腹辺りに顔を押しつける妹だ。

 

「ねーさま、いいにおいがする」


 そんな妹の頭をなでるおじさんだ。

 弟が小さい頃にも似たようなことがあった。

 

 小さい子どもは免疫機能が低い。

 だから風邪を引きやすいのだ。

 

 ただ、弟が小さい頃はおじさんもまだまだ修行中の身であった。

 故に、あれこれできるほどではなかったのだ。

 

 今ならそのようなことはない。

 だから、なにかできることを考えてみる。

 

 妹がすぅすぅと寝息を立てた。

 さらに軽い魔法をかけて、深い眠りに誘う。

 

「ふむ……どうしましょうか」


 と、考えを巡らせるおじさんだ。

 暫く考えて、ピコンと閃く。

 

「そうですわね。加湿器でも作りましょう」


 冬の空気は乾燥する。

 十分な湿度を保つことで、風邪の予防にもなるだろう。

 この時期はあった方がいい。

 

 そう言えば――美容にも良かったんだっけか。

 肌の乾燥を防ぐとかなんとか。

 

 化粧水やら乳液やらは作ってみている。

 が――正直なところ、おじさんにはよくわからない。

 母親や祖母からは好評なのだが……。

 

 ま、とりあえず加湿器を作りますか、と思うおじさんだ。

 

 ちょっとやそっとのことでは起きないだろうが、いちおう妹の部屋でやる。

 起きたときにいなければ寂しいだろうから。

 

 ちなみに、今生のおじさんは病気知らずである。

 記憶にある限り、病気にかかったことがない。

 

「お嬢様、念のために結界を張っておきましょうか?」


 妹の部屋に控えていた侍女の提案だ。

 それに頷くおじさんである。

 

 宝珠次元庫から素材をほいほいとだしていく。

 

 ――加湿器。

 ざっくりというと四つの種類がある。

 

 ひとつはスチーム式。

 要はやかんを熱したときと同じだ。

 水を加熱して水蒸気を噴出するタイプになる。

 

 もうひとつが気化式だ。

 水を含んだフィルターとかに風をあてて蒸発させる。

 これは濡れタオルの強化版だと言っていいだろう。

 

 三つ目が超音波式。

 振動で水をミスト状にして放出するタイプ。

 手軽だけど、水の中の雑菌とかもそのまままき散らしてしまうのがネックだ。

 

 四つはこれらのハイブリッド方式。

 加熱式と気化式を組み合わせたものとかそういうの。

 

 おじさん的には安全に使えるという点で加熱式を選択するつもりだ。

 そう言えば、聖樹国で手に入れてきた熱血石があったな、と。

 

 ん~いやここは精霊の雫を使うのもありだ。

 あれは色々と使い勝手がいい。

 

 それに使い切れないくらい溜まっているのだ。

 聖域を利用した精霊たちがお礼代わりにくれるから。

 

 水は魔法で生成すると、いちいち補給しなくていい。

 あとは加熱の方法だけ考えれば、とりあえずは機能する。

 

 が――加湿のしすぎも逆に良くない。

 確か六十パーセントを超えたら、カビや雑菌が増える原因になるはずだ。

 となると――湿度を自動的に調節する機能があれば便利である。

 

 最大で五十パーセントくらいにしておけばいいだろう。

 

 んににに、と考えながら、魔法式を構築していくおじさんだ。

 さらさらっと空中に描かれていくそれは、とても精緻なものであった。

 

 魔道具のことはよくわからない侍女である。

 だが、それが芸術的な美しさも伴ったものだと思うほどだ。

 

「ん~こんなもんですか」


 トリちゃんと使い魔を喚ぶ。

 

『んーむ。主よ、またしてもよくわからん魔道具を』


「トリちゃんはカサカサに乾燥していますものね」


『ぬわははは! 古書の管理は気を使うものなのだぞ、主よ!』


「む? そうなのです?」


『うむ。湿度が高ければ紙が波打つし、よれもする。インクがにじむこともある。それにカビがな、はえてしまうと致命的なのだよ』


「そうなのですか。意外と気難しいんですのね」


『意外とはなんだ! 意外とは! 我はデリケートなの!』


 正確には古書ではない。

 魔道具に近いが、知性ある神遺物インテリジェンス・アーティファクトだ。

 

「では、トリちゃんにも完成品を差し上げましょう」


『うむ。それはいいな。では、さっさと作るか!』


 そこからは一瞬であった。

 トリスメギストスとおじさんは混ぜるな危険である。

 それを黙って見守る侍女たちだ。

 

 なんだか微笑ましい光景であると思う。

 それと同時に、ぽんぽこ魔道具を作ってしまう現場に居合わせて感動していたのだ。

 

「できましたわ!」


 錬成魔法の発動を終えたおじさんの手に加湿器の魔道具があった。

 ただまぁ無骨である。

 

 いや、はっきりと言えば電気ポットにしか見えない。

 あのお湯をわかすやつだ。

 

 蓋があって円筒形。

 そこに水を入れて、密閉して加熱する。

 蒸気口は上部に。

 

 構造的にはシンプルで合理的だ。

 ついでに言うと、風の魔法で蒸気を拡散する機能までつけている。


 おじさん個人的に言えば、これで問題ない。

 ただ妹からすれば、もう少しかわいいものがいいだろうと思う。


 さすがにこのままでは部屋にもなじまない。

 妹の部屋はかわいいアイテムでいっぱいだから。

 それもおじさんが作ったのだけど。

 

『主よ、少し動かしてみるか』


「……ですわね。まずは機能的に問題がないか確認しましょう」


 まず起動させるスイッチを押す。

 ここはもうわかりやすく作ったのである。

 

 ピッと音がして、タンク内に水が充填されていく。

 一度動かすと、半分以下になった時点で水が自動充填される仕組みだ。

 魔法バンザイである。

 

 少し待つと蒸気が噴出され始めた。

 いい感じで風の魔法が蒸気を拡散していく。

 

「……いい感じですわね」


『主よ、あのアイデアも試してみるか』


「そうですわね」


 宝珠次元庫からおじさんは小袋をだす。

 この中には大聖樹の素材がたくさん入っているのだ。

 テラのアバターに魔力をわけたときにもらったものである。

 

 そこから大聖樹の青々とした葉っぱを一枚。

 蒸気口の蓋を開けて、そこに設置しておく。

 葉っぱ自体が蒸気でむされる感じだ。

 

 ――ふわりとした香りが漂う。

 

 森林浴でもしているような。

 少しツンとした酸味のようなものがある。

 が、全体的には爽やかな香りだ。

 

「うん、いいですわね」


 侍女たちを見るおじさんである。

 反応を見るに、侍女たちも気に入っているようだ。

 どこか癒やしの効果というか、気分が落ちつくのである。

 

「あとは……この見た目ですが」


『ああ――妹御が使うのならそうか、そこは考えるべきであったな』


「まぁガワだけ作ってしまいますか? トリちゃん、クリソベリルとオブシディアンの絵を描いてあげてくださいな」


『で、あるな。剣歯虎たちもついでに描いておいてやろうではないか』


 ぬわはははと笑うトリスメギストスだ。

 サクッと作って、できあがりである。

 

「これでいいですわね!」


 おじさん、ご満悦である。

 

『主よ、我はそのガワは要らんぞ』


「わかってますわよ」


 苦笑しながら、サクッと二台目を作るおじさんだ。

 

「トリちゃん、これをお持ちなさいな」


『うむ。これでいい艶をだせるぞ!』


 いつも世話になっているのだ。

 こんなことで喜んでくれるのなら、いつでもやる。

 そのくらいの覚悟があるおじさんだ。

 

「……あの、お嬢様。そちらはどういう魔道具なのでしょう?」


 側付きの侍女がおじさんに聞く。

 

「これは部屋の中の湿度――ええと、空気の乾き具合を一定に保ってくれる魔道具ですわね」


「……よくわかりません」


 だろうな、と思うおじさんだ。

 どう説明したらいいものか。

 空気の飽和度の話なんてことをしても難しいだろうし……。

 

『侍女殿、空気の中に水が含まれているということはわかるかな?』


 ぶんぶんと首を横にふる侍女だ。

 

『ふむ……ちょうど今頃だと、窓に水滴がついていることがあるだろう?』


「ああ! あります、あります!」


 トリスメギストスの問いには、別の侍女が答えた。

 思わずといった感じである。

 

『まぁ詳しいことは省くがな、暖かい空気と冷たい空気では含んでいられる水の量がちがうのだな。だからその差が水滴になって窓につくわけだ』


 ざっくり説明していくトリスメギストスだ。

 

「……なるほど。なんとなく理解できるような」


『うむ。まぁそこは完璧に理解せんでもいい。主が先ほど作った魔道具はな、空気に水を含ませるものだ』


「なぜ、そんなことを?」


 今度は別の侍女が聞く。

 興味津々なのだ。

 

『乾いた空気というのはな、病の元が動きやすいのだ。加えて言うなら、肌にもよくない!』


 なんですって!

 と、サイラカーヤ以外の侍女が声をあげた。

 それを見て、サイラカーヤも声をあげる。

 

『まぁそのための対策は既に主が打っておるがな。ほれ、あの化粧水とか乳液とかいうやつがそれよ!』


 さすがお嬢様! と侍女たちから声があがった。

 なにやら手を組んで祈りを捧げる侍女までいる。

 

『その化粧水とか乳液とかの効果をより高めてくれるのが……』


「この魔道具ということですか!」


 最後はサイラカーヤが締めた。

 むふん、とどや顔を決めている。

 

「まぁだいたいそんな感じですわね。風邪も引きにくくなるでしょうけど、そっちは手洗いとうがいも推奨しますわ」


 そうなのだ。

 手洗いとうがいは基本である。

 

「お、おおおお……お嬢様! こちらの魔道具を是非とも販売していただきたいですわ!」


 侍女たちから要望が上がった。

 まぁだいたいこうなることは目に見えていたおじさんだ。

 

「ま、その辺りはお父様とお母様次第ではあるのですが……いいでしょう。わたくしが交渉しておきます。我が家の部屋にはすべて設置するように、と」


 いぃいいいいいやっっふうううう!

 

 侍女たちが跳び上がって喜ぶ。

 蛮族に少なからず影響を受けているのかもしれない。


誤字報告いつもありがとうございます。

助かります。

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