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強制的に転生させられたおじさんは公爵令嬢(極)として生きていく  作者: 鳶丸
本編

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1247/1254

1213 おじさんは決闘の話を聞く


 ――王城にある騎士の訓練場。

 そこに立つのはヴェロニカであった。

 

 美少女である。

 優雅なたたずまいに、凜とした表情。

 

 決闘をするなど微塵にも感じさせない泰然と構える。

 その姿は美しくも、どこか威厳を感じさせた。

 

 国王を初め、列席する貴族たちも決闘の開始を待っている。

 が、未だにその相手は姿を見せていない。

 

 そろそろ定められた刻限かという頃である。

 ラムザウアを先頭にフィルノート家が姿を見せた。

 

 決闘の当時者であるザリオ。

 その後ろに控えるのは騎士と魔法士たち。

 

「ふむ……どういうことか」


 国王がおもむろに口を開いた。

 対して、ラムザウアがにやりと口角をつり上げる。

 

「そこの娘は昨日、フィルノートに対して決闘を申し込みました。つまり我が家を敵に回したということでございますな。陛下、我が家も面子を潰されてはどうにもこうにも……ですから、こういうことでございます」


 騎士たちが十人。

 魔法士が五人。

 ザリオとラムザウアを含めれば、総勢で十七人。

 

「ヴェロ……」


 国王が口を開こうとしたときであった。

 凜とした少女が笑みをうかべ、言い放つ。

 

「なんの問題もございませんわ、陛下。誇りを捨ててでも勝ちを拾いにいくというのも、また貴族らしいかと。ま、潰しますけど」


 その返答に、思わずクククと笑ってしまう国王だ。

 隣に座っている王太子は、どこか心配そうな目で見ている。

 

「とは言え、だ。ここでそなたに一人、推挙したい者がいる」


 国王はちらりとハリエットを見た。

 元王族であり、今回の件をねじこんできた張本人だ。


 ただ、その言に理がないわけではなかった。

 フィルノートが多勢で押してくることを予測していただけではない。

 主家として明確な敵対に対する報復を、ということだ。

 

 姿を見せたのはスランであった。

 ただし、けっこうボロボロである。

 

「皆も知るようにカラセベドの跡継ぎである。今回の一件、カラセベド公爵家は何も聞かされていなかった。つまり、越権行為ではあるな。故にヴェロニカの側に加勢したいという話があった」


 今だ青年と呼ぶには少しあどけない顔立ちの少年だ。

 その少年はつい数年前までは、殿下と呼ばれていたわけである。

 

「余はそれを認めようかと思う。どうか?」


 列席する貴族たちに問う国王だ。

 対して、肯定だという意思を返す貴族たち。

 

 当時者であるフィルノートも肯定だと声をあげた。

 これが自分たちのように、魔法士や騎士たちを集めてきたのなら抗議していただろう。

 

 だが、姿を見せたのは、たった一人の少年なのだ。

 それも数年前までできない子扱いされていた、その人なのである。

 

 ならば断る道理もない。

 そう判断したのである。

 

「……ふん。私の足を引っ張ったら許さないわよ」


「ま、怒られない程度にはがんばるよ」


 ヴェロニカの隣に立つ少年だ。

 革製の防具は既にボロボロである。

 血色はいいが、身体中に生傷があった。

 

「……いいでしょう。潰すわよ」


「賛成だね」


 スッとヴェロニカの前に立つスランだ。

 腰から片手剣を抜く。

 

 今回は決闘である。

 だから、本身の真剣だ。

 いつもの木剣ではない。

 

 が、そこに気負うような様子はまるでなかった。

 

「ちょっとさ、がんばってきたんだよね」


「ほおん……」


 二人の短いやりとり。

 その直後に、国王から決闘の開始が告げられた。

 

 ――瞬間。

 魔法士たちから魔法が飛んでくる。

 人数をいかした飽和攻撃だった。

 

 だが、それを見てスランもまた口角をあげた。

 

「遅いなぁ。それに精度も低い。まったく養母上のお陰だね」


 ――魔纏。

 一瞬にしてムラなく魔力を操作してみせるスランだ。

 それを見たヴェロニカは微笑む。

 

 ようやく見れた、と。

 

「ヴェロニカ、ボクがいく。キミは……」


「指示しないで! わかってるんだから」


 そう――と残してスランはさらに前へ出た。

 魔法を斬ったのだ。

 

 次々と襲いくる魔法を前に怯むこともない。

 ただ、ただ、斬った。

 舞うように身体を動かし、血路を開いていく。

 

 自分と後ろのヴェロニカにさえ当たらなければいいのだ。

 精度が低いということは狙いも曖昧である。

 

 落ちついて対処すれば、どうということもなかった。

 問題はその次。

 

 魔法の切れ間からスランはしっかり見ていた。

 騎士たちが徒党を組んでツッコんできているのを。

 

 さて、どう捌くか。

 

 思考した瞬間であった。

 

深緋蔦蔓(クリムゾン・バインド)


 ヴェロニカが魔法を発動したのである。

 一瞬にして、魔力で編まれた茨の蔓が騎士たちに絡みついた。

 

 全身鎧ではなく、動きやすさを重視した軽鎧。

 それが仇となった。

 

 騎士たちの身体が緋色に染まっていく。

 悲鳴とともに。

 

 同時にスランは駆けていた。

 騎士たちのもとへ。

 

 魔法を巧みに避けながら、騎士たちの動きを止めるべく斬る。

 手足の筋を断つように、だ。

 

 高い魔法の精度と威力。

 ヴェロニカの魔法から逃れられた騎士はいなかった。

 つまり、スランがあっという間に騎士たちを制したのである。

 

「はん! 手応えがないわね。少しくらいは反撃できるような魔法を使ってあげたのだけど」


 ヴェロニカの言葉に頷くスランだ。

 あれは蔦を魔纏で斬ればいい。

 それだけで拘束から解けるタイプだ。

 

 だが――それに対処できる者がいなかったという話である。

 

「な、なんだと!? お前ら、どうなっている? やれ! やれ!」


 驚いていたのは余裕の表情だったラムザウアだ。

 騎士たちがあっという間に制圧されてしまったのだから。

 

 残っている魔法士たちが口を開こうとしたときである。

 

因果欠落(ミッシング・リンク)


 ヴェロニカは軽口を叩きながらも魔法の用意をしていたのだ。

 同時に、がっと喉を押さえる魔法士たち。

 

 いや、自分で自分の首をしめているのだ。

 なぜそうなっているのか、理解できないのだろう。

 恐怖に染まった表情になっている。

 

「その魔法は効果が短いわよ」


 それだけで十分であった。

 スランは身体強化を利用して、あっという間に接近する。

 そして――魔法士たち五人を無力化した。

 

「で、残ったのは二人だけだね」


 切っ先をザリオにむけるスランだ。

 

「ふん。最初からこんな雑魚どもに期待はかけていなかったさ、私はね」


 立派な装飾が施された剣を抜くザリオである。

 

「父上はね、お前が気に入らなかったのさ」


 言いながら、斬りつける。

 だが、スランは表情を変えずに、その剣を躱す。

 

「私が公爵家の後釜になればと考えていたのさ。だから――」


 またもや剣を振るうザリオだ。

 それを冷静に見極めるスランである。

 

「なら、ボクを殺しにくればよかった。こんなまどろっこしい手を取らずにね」


「ふはは。もちろんそう言ったさ。だが、父上は――」


 連続で剣を振るうザリオだ。

 スランは回避する。

 剣を打ち合わせるようなことはしない。

 

「ま、私はね、どちらでも良かった。だが、あの娘を見て気が変わったんだよ」


 げすい目だ、とスランは思った。

 

「あの娘を私のものにできるのなら、その方がいい、と!」


 ふぅと息を吐く。

 スランはまたもや剣を躱す。

 だけ、ではなかった。

 

 躱すと同時に、空いた腹に膝を入れたのだ。

 ぐふぅと息を吐くザリオ。

 

「ヴェロニカはね、ボクがもらう」


 スランの言葉は真意だったのか。

 あるいは挑発だったのか。

 

 真っ先に反応したのはヴェロニカだった。

 

「ば、ばばば、ばかー!」


 背中にどかんと風弾をぶち当てられるスランであった。


誤字報告いつもありがとうございます。

助かります。

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