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強制的に転生させられたおじさんは公爵令嬢(極)として生きていく  作者: 鳶丸
本編

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1209/1252

1175 おじさんは平常運転でやらかす


 部屋の中の空気が停滞している。

 それを壊したのはマーガレットだった。

 

「ねえ、ここで話をしていても始まらないじゃない」


 だから――と全員の顔を見回す。

 

「あそこに行ってみないかしら?」


 どこやねんとおじさんは思った。

 でも、口にはしない。


「……開かずの部屋か」


 ドミトリが腕組みをしたままで、深く頷いた。

 

「いいだろう。この場での言葉を信じるのなら、誰も封印の鍵の情報は知らない。で、あるのなら開かずの部屋に行くしかないだろう」


 言い終わると同時に、がたんと音を立てて立ち上がる。

 

「グズグズするな、時間は有限なのだからな」


 さっさっと歩いていくドミトリだ。

 その背中を見て、他の面々も立ち上がった。

 

 部屋のドアに手にかけ、先にでるドミトリ。

 その口から、驚きの声があがった。

 

「な!?」


「なにをしてるのよ! あなたが止まっていたら部屋から出られないでしょう」


 マーガレットが立ち尽くすドミトリを急かした。

 そして――彼女もまた見てしまったのだ。

 

 廊下を浮遊するラルフの幽霊を。

 

 うっすらと白がかかったような半透明。

 だが、その姿は生前のラルフそっくりであった。

 

「お、おばけえ!」


 金切り声をあげるマーガレットだ。

 その声に続くように、皆が廊下にでる。

 

「あれは……確かにラルフ」


 エドガー老が呟く。


「……」


 ゼスは無言であった。

 

「……ほおん。そういうことですか」


 おじさんは納得しているようだ。

 ヴァネッサも同様である。

 

 ラルフの幽霊と思われる存在が、スッと動いた。

 ただし、それは廊下の奥に向かってだ。

 

「やはり、開かずの部屋か!」


 廊下の奥へと姿を消した幽霊。

 ほぼ、同時にドミトリが叫ぶ。

 

「少しよろしいですか?」


 呆然とするエドガー老の肩をちょんちょんとつつくおじさんだ。

 

「これは……お客人。失礼しましたな」


「開かずの部屋とはなんですか?」


 だいたいの想像はつく。

 が、いちおう確認しておくおじさんだ。

 

「元々はラルフの私室でありましたな。ただ失踪して以降、その扉が開くことはなかったので、開かずの部屋と」


「ほおん……なぜ開かないのです? 鍵でもかかっていましたか?」


「魔導封印ですな。強力な封印で、我らにはなんとも」


「ゼスにドミトリ。あのお二人は魔道具師では?」


「ええ……ですが、あの封印は解けませんでした」


 ま、いいでしょう。

 そんなことを軽く言うおじさんだ。

 

 ふんふんと鼻歌を歌いながら、廊下を進んでいく。

 エドガー老が前、ゼスとマーガレットも一緒だ。

 ドミトリは先に走っていった。

 

 しばらく歩くと、突き当たりの部屋の前にドミトリがいた。

 

「クソっ! やはり開かないか!」


「ちょっと! 独り占めしようたってそうはいかないわよ!」


 マーガレットも走り、エドガー老を追い抜いていく。

 おじさんは焦らない。

 だって、開くはずがないのだから。

 

 ドアのノブをがちゃがちゃと動かすマーガレット。

 それを冷ややかな目線で見るドミトリである。

 

「少しよろしいですか」


 おじさんが前に進み出た。

 そして――すっと指をドアの表面に沿わせる。

 

 にぃと笑うおじさんだ。

 

「さて、この程度の術式であれば、わたくしが開けることができますわね」


 ぎょっとするヴァネッサである。

 そんなこともできちゃうの? と。

 

「……お客人」


 と、エドガー老が声をあげようとした。

 だが、それよりも先にゼスが大きな声で言った。

 

「む、無理をしたら壊れます!」


「……壊れるとは?」


 おじさんが聞き返す。


「あれはラルフ様の、さ、最高傑作で……その、思いだしたんです」


 ゼスがごそごそと上着のポケットに手を入れた。

 そこから出てきたのは、やっぱり古めかしい鍵であった。

 

「それは?」


 ドミトリが確認をとる。

 

「ラルフ様が失踪する前、預かっていた鍵です。し、私室の鍵とは言われませんでしたけど、ひょっとしたらと思って……」


「か、貸しなさいよ!」


 ゼスの手からひったくるようにして、マーガレットが奪い取る。

 そして鍵穴に差しこんだ。

 

 鍵がそのまま穴の中に吸いこまれ、ドアがうっすらと光った。

 次の瞬間、がちゃんと音を立てる。

 

 勝手にドアが開いたのだ。

 中には、椅子に座っている白骨死体があった。

 

「あ、あの服はラルフ……」


 どうやら見覚えがある服を着ていたのか。

 ドミトリが呟く。

 

「あの指輪、ラルフでまちがいないわ」


 マーガレットは白骨死体がつけていた指輪を見て言う。

 

「やはり死んでいたのか、ラルフ……」


 エドガー老は、そっと目を閉じた。

 そして指を組んで、立ったまま祈る。

 

「……ら、ラルフ様」


 ゼスはわずかではあるが震えていた。

 

「なるほど……そういうことですか!」


 おじさんは笑っていた。

 白骨死体はあれど、あれはもうおじさんにとっては作り物と同じだ。

 

「さて――どうしましょうかね」


 不敵に笑うおじさんである。

 そして、とことことドアの前へ。

 もう一度、軽く表面を触ってみる。

 

 にやりと笑って――おじさんはドアを閉めた。

 

「な、なにをしているんです!」


 ゼスが声をあげた。

 

「なにって……ドアが開きっぱなしなのは気持ち悪いので」


「だ、だだ、ダメですって。そのドアは内側からは開かないんです」


「な、なんですってー!」


 マーガレットがハデな声をあげる。

 ついでにヴァネッサも同じ反応を見せていた。


「なんてことをしてくれたのだ、お客人」


 ドミトリがおじさんを睨む。

 

「……お客人」


 エドガー老が深い息を吐く。

 

「わたくし、なにかやっちゃいましたか?」


 こてんと首を傾げるおじさんだ。

 その姿にヴァネッサは思う。

 

 この孫娘はなにを考えているのだ、と。


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