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強制的に転生させられたおじさんは公爵令嬢(極)として生きていく  作者: 鳶丸
本編

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1123 おじさんちに帰ってきた聖女がとんでもないことになる


 学園での講義を終えて、帰ってきたおじさんである。

 今日も学生会の面々がついてきていた。

 

 どうにも明日の学園長との戦いが終わるまでは気になるらしい。

 おじさんとしては一緒にいることが嬉しいわけだ。

 

 ただまぁ連日で宿泊になっても大丈夫かな? とは思う。

 

「たっだいまんもーす! まんもーす!」


 蛮族たちがいつも雄叫びをあげた。

 エントランスで、だ。

 

 そこでスッと姿を見せた者がいた。

 

「げえええ!」


 その顔を見て、聖女がとても下品な声をあげる。

 だって、コントレラス侯爵家の奥方がいたからだ。

 

「げええ! とはなんですか!」


 奥方の顔はちょっと赤い。

 とっても恥ずかしいのだろう。

 

「我が家は建国王陛下の御世からお仕えする名門! その名を汚すような言動は――」


 うひいと聖女が頭を抱える。

 完全に油断していたのだ。

 

「――うるさい」


 声を荒げるでもない、語気が強いわけでもない。

 ただ、その一言で場が静まりかえった。

 

 母親である。

 

「名門貴族とやらは他家の玄関で大声をあげるのかしら?」


「――申し訳ありません」


 スッと頭を下げる奥方である。

 

「うちの娘がご迷惑をおかけするのが忍びなく。つい声を荒げてしまいました。御海容いただければ幸いです」


「許します。ただ――あなたの懸念も理解できるわ」


 母親が聖女を見た。

 その瞬間、聖女は背すじを伸ばして敬礼した。

 

 なにか今日の母親は迫力がある。

 雰囲気に飲まれているのだ、聖女は。

 

 いや、聖女だけではない。

 おじさん以外の全員である。

 

「ですから、少し試しましょう。あなたの懸念が杞憂で終わるか」


 母親の言葉の意味がわからない奥方だ。

 

「エーリカ!」


 母親が聖女を呼ぶ。

 はい、ととても良い返事だ。

 

 その良い返事に奥方は目を丸くしていた。

 だって、家でそんな返事を聞いたことがないから。

 

 だいたい文句を言うし。

 

「あなた、公と私で使い分けができるわよね?」


 つい、勢いで良い返事をしてしまう聖女だ。

 

「よろしい。ならば、これからその使い分けを見せてあげなさい」


 はい! とまたもや良い返事をする聖女。

 ちょっと目がぐるぐるしている。

 

 おじさんは大丈夫かと思わないでもない。

 ただ、聖女が答えてしまっている以上、どうしようもないのだ。

 

 今から割って入るわけにもいくまい。

 

「そうね、ちょうどいいわ。うちのリーちゃんが正式なお茶会を開いたということで。そこにいるのはフィリペッティ家のアルベルタね?」


 返答をすると同時に、華麗なカーテシーを決めるアルベルタ嬢。

 

「他には……」


 母親がぐるりと見渡す。

 おじさんはその意図を汲んで言った。

 

「パティ、セロシエ、ニュクス」


 はい、と名を呼ばれた者が返事をする。

 

「お母様、彼女たちは伯爵家の令嬢ですわ」


 我が意を得たりと母親は頷いた。

 

「イザベラ、あなたもです」


 イザベラ嬢がカーテシーを決める。

 

「彼女はコントレラス侯爵家でも信頼の厚い子爵家の者です」


「いいわね。では、エーリカを含めて今の四人が招待されたということで」


「畏まりました」


 ばちこんとカーテシーを決めるおじさんだ。

 制服姿であるのに、貴人の風格がある。

 なにせ超絶美少女なのだから。

 

「そうね、いつものサロンを使ってちょうだい」


 母親が先に下がっていく。

 それに続くように、コントレラス侯爵家の奥方も下がった。

 

「リ、リー? なになにどうなってんよ?」


 聖女は完全にパニック状態である。

 

「恐らくですが……」


 と、おじさんが額に指を当てて言う。

 

「コントレラス侯爵家の奥方様は、お母様に挨拶にこられたのでしょう。そのときエーリカの態度が話題になったはずですわ」


「ああ――うん。まったく、わからん」


 聖女の言葉に苦笑するおじさんだ。


「昨日、お母様がエーリカに蛮族の御免状をお出しになったでしょう? そのことですわよ」

 

「ああ――なるほど。そういうこと!」


 首肯してやる。

 聖女も納得できたようだ。

 

「要はあれね、文句つけにきたってことね!」


「身も蓋もないことを……まぁそういうことですわ」


「ふふーん! 私が蛮族だっていいじゃない! ねええ~!」


 聖女とケルシーがハイタッチをしている。

 しかし、ふと気づいたようだ。

 

「誰が蛮族だー!」


 ぷんすこ怒る聖女である。

 情緒が不安定になっているようだ。

 きっとストレスのせいだろう。

 

 だが、ほぼほぼ全員は思っていた。

 あなたたちですわよ、と。

 

「で、今の状況はですね。お母様が奥方様の説得をしていたのですわ。しかし、エーリカは帰ってきて早々やらかしてしまった」


 だったいまんもーすの件である。

 

「だから、奥方様の有利になりそうだったところを、お母様が強引にエーリカの試験をするということに話をすり替えたのですわ」


「おお! そういうこと!」


 ハデに手を打つ聖女だ。

 ようやく合点がいったのだろう。


「大丈夫なのです?」


 パトリーシア嬢が声をかける。

 

「なんでさー。アタシだってやればできるってば!」


 ばちこんと下手なウインクをする聖女だ。

 

「わかって言ってるのですか?」


「なによ、わかってるかって。どういうこと?」


 パトリーシア嬢は、軽く息を吐いた。

 

「失敗すれば、リー様のお母様に恥を掻かせることになるのです」


「え?」


「え?」


 先に聖女が、後でパトリーシア嬢が同じことを言った。

 まったく意味がわかっていなかった聖女だ。

 

「もしかして、わかってなかったのですか」


「どどどどど、どーしよう? リー!」


 おじさんに縋る聖女だ。

 

「仮に失敗してお母様に恥を掻かせた場合、当家を出禁になるでしょうね。あと、最悪はかなり酷い目にあいます」


 ちょっとお茶目をしてみたおじさんだ。

 だが――それは効果覿面すぎた。

 

「うぼええええ」


 嘔吐く聖女である。

 緊張が最大限に高まってしまったのだ。

 おじさんの一言で。

 

 絶対に失敗できないお茶会試験。

 その事実に気づいた聖女は、顔を真っ青にさせていた。

 

「……エーリカ。公式なお茶会の作法、もちろん頭に入っていますわよね?」


「……もちろんよ、まったく入ってない」


「でしょうね」


 そう答えるしかないおじさんであった。

 

「エーリカ、知っていると思いますけど、奥方様は手強いですわよ」


 イザベラ嬢が言う。

 

「う……な、なんとか、なんとかならない?」


「今回は侯爵家の面子もかかっていますから。リー様のお母様に文句をつけるということは、よほどエーリカのことを信頼していなければできません」


 でへへへ、と照れる聖女だ。

 

「……バカね。イザベラの言う奥方様の信頼ってのは、蛮族だと信じているということよ」


 辛辣なことを言うニュクス嬢であった。


「なんだとー! 誰が蛮族じゃーい!」


「じゃーい!」


 ケルシーが、けらけら笑っている。

 

「仕方ありませんわね。少し時間を稼ぎましょう」


 おじさんの言葉に、さっと近寄ってくる侍女だ。


「サイラカーヤ。お母様に伝言を。正式なお茶会ということですので、わたくしたちは着替えてきます、と」


 畏まりました、と侍女が姿を消した。

 

「これで少しは時間が稼げます。その間にどうするか考えましょう」


「ね、ねぇ。リー、もし失敗しちゃったら?」


「さぁ? わたくし、お母様を本気で怒らせたことがありませんので。ただ、こういう話は聞いています。王城でお母様の逆鱗に触れた者は、その場で決闘を申し込まれ……」


「どうなったのさ?」


「……ちょんぱ、ですわね」


 親指で首に横線を引くおじさんだ。


「いやあああ! 聞きたくなかったああああ!」


 うずくまる聖女である。

 そんな聖女を見て、ケルシーはゲラゲラと笑うのだった。


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― 新着の感想 ―
>そんな聖女を見て、ケルシーはゲラゲラと笑うのだった。  ケルシー、お前もエルフ族の代表としてかなりアレやぞ……。
最近の蛮族は年齢に対して明らかに知能が低いですよね、知能障害持ちレベルで…。 序盤はまだ多少足りない子程度だったのに…悪化した? 前世を覚えていて、その経験がありながらこの振る舞いは相当マズイですよ…
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