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強制的に転生させられたおじさんは公爵令嬢(極)として生きていく  作者: 鳶丸
本編

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1119 おじさん不在の中でボスと戦う蛮族たち


 結局のところ、ケルシーたちはどうにもできなかった。

 聖女を助けることも、お宝を手に入れることも。

 だから――おじさんを呼んだ。

 

 大声で。

 

「リー! 助けてええええ!」


 ややあって、おじさんが姿を見せた。

 

「なにをしているのですか」


 この学園ダンジョンのコアであるディーパから連絡がいったのだ。

 で、今である。

 

「ええと……」


 ちょっと言い淀む聖女だ。

 さっと状況を見て、理解するおじさんである。

 

 開けっぱなしで放置された宝箱。

 それが断定の理由だ。

 

「ま、その前に」


 ぱちんと指を弾くおじさんだ。

 ディーパの権能によって、アルベルタ嬢たちを転移させたのである。

 

「リー!」


 ケルシーがおじさんの周りをぐるぐる回る。

 そんな蛮族二号を落ちつかせるように、頭をなでるおじさんだ。

 

「宝箱を見つけたの! でもエーリカが横取りしたんだー」


 告げ口するかのようなケルシーであった。

 スッと目をそらす聖女だ。

 

「エーリカ、ここから出たいのならお宝を戻すのが正解です。それはもうわかっていますわよね?」


 アルベルタ嬢たちが同意するように大きく首肯した。

 

「ちぇ……仕方ないわね」


 ほっぺたを膨らませる聖女だ。

 そして――渋々宝珠次元庫からお宝を戻す。

 

「ん~どうやったらここからお宝を持ち帰れるの?」


 少しは冷静になったようである。

 聖女がおじさんに確認をとった。

 

「方法は幾つかあるのですが……ネタばれになるので言いません。言える範囲だと……ダンジョンの壁をぶち抜くという方法がありますわね」


「誰がそんなことできるのよ!」


 わたくしは……と口を開きかけて、口を噤む。

 おほほほ、と笑って誤魔化すおじさんだ。

 

「ははーん」


 そんなおじさんの態度を察したのだろう。

 聖女がニヤリと笑った。

 

「そんな無茶なことをするのはあれね! 学園長でしょう!」


 ……よかった。

 蛮族であってくれて。

 

「まぁそんなところですわね」


 軽くお茶を濁すおじさんだ。

 やっぱりねーと納得している聖女である。

 

「ところで時間はまだ余っていますが、どうしますの?」


 つまり壁の穴をとおって迷宮攻略に復帰するのかと問うおじさんだ。

 

「ちなみに帰りは穴が狭くなったりしませんから。あれは行きだけのトラップですわね」


「リー様。私は通れないと思います!」


 ルミヤルヴィ嬢が自己申告をした。

 この場にいる面子では、通れるのは聖女とケルシーくらいであろう。

 小柄な二人だからこそ、といったところだ。

 

「この穴をとおって部屋に閉じこめられたのはエーリカだけでしょう? なら、エーリカが脱出すればいいということにしておきますわ」


 温情采配であった。

 本来なら、おじさんが出張った時点で失格ではある。

 

 が――おじさんは知っているのだ。

 

 聖女が朝からストレスを溜めていたことを。

 だから、迷宮攻略ではっちゃけたのだろうというのは想像に難くない。

 

「いいのですか!」


 アルベルタ嬢とイザベラ嬢が声をあげた。


「本来はダメですわよ。でも、今日はエーリカの調子が……」


「うぐぐ」


 心当たりがあるのだろう。

 聖女が俯いた。

 

 いつもより意図して蛮族になったのだ。

 

「ですので特別ですわよ。このパーティーはエーリカとケルシーの二人が揃っていますしね」


 いくらなんでも蛮族が揃うとしんどい。

 そう思ったのだ。

 

 ここにいたのがパトリーシア嬢だったら、まだなんとかなったかもしれないが。

 

「さぁどうします? もう時間はありませんわよ。今からだとギリギリになるはずですから」


「やったるもんに!」


 ケルシーが声をあげた。

 首肯するおじさんだ。

 ついでに、ルミヤルヴィ嬢、イザベラ嬢、アルベルタ嬢、聖女と順に見回す。

 

「やります! 今からでも三階層を攻略してきます!」


 アルベルタ嬢もやる気のようだ。

 ルミヤルヴィ嬢、イザベラ嬢も賛成である。

 

「ならば、壁の向こう側に転移させますわね」


 おじさんの言葉に、はい、とケルシーが勢い良く手をあげた。


「穴、とおってみたい!」


 いいでしょう、と苦笑しつつ指を鳴らすおじさんだ。

 

「さ、二人とも時間がありませんわよ」


 行ってくる!

 そう言って、壁の穴に頭を突っこむ蛮族たちであった。

 

「アリィ、ひとつだけ」


 おじさんが言う。

 

「エーリカたちを釣るならお菓子がいいですわよ」


 その意図を正確に察したのだろう。

 アルベルタ嬢の顔に生気が戻った。

 さすがに少し疲れていたのだ。

 

「エーリカ、ケルシー。ここからは時間を無駄にできません。ですから、三階層まで攻略できたら、お菓子をご褒美に差し上げますわ」


 なぬ!? と目を見開く蛮族一号と二号だ。

 

「ですから、攻略が終わるまでは私の指示に従ってくださいな」


「もう! そういうことなら早く言ってちょうだいな!」


「ちょうだいな!」


 と、一号と二号はアルベルタ嬢に手を差しだしている。

 前払いのお菓子をくれということだろう。

 

「いいでしょう。その代わり、ちゃんと言うことを聞くのですよ?」


 はい、と良い返事をする蛮族たちであった。

 

 蛮族たちの力が噛みあえば、強い。

 しかも脇を固めるのは優秀な者たちである。

 快進撃であった。

 

「イザベラ!」


 アルベルタ嬢が指示をだす。

 瞬間、イザベラ嬢が火弾を放った。

 

 弾幕を張る。

 雑魚ゴブリンとボスゴブリンの足止めだ。

 

 その隙をついて、ルミヤルヴィ嬢が雑魚を狩る。

 アルベルタ嬢も雑魚ゴブリン目がけて魔法を放つ。

 

「おらあああ!」


 聖女がボスゴブリンを殴りつけた。

 状態異常を付与するやり方で。

 

「ぐえええ」


 ボスゴブリンが腹を押さえている。

 

「エーリカ! もしかしてあれをやったのですか?」


「もっちろん!」


 話には聞いている。

 聖女は殴るのと同時に状態異常を付与できる、と。

 しかも――世にも恐ろしい腹をくだすもの。

 

「嘘でしょ……」


 イザベラ嬢が絶句していた。

 

「いっけええええ!」


 そこでケルシーが風の槌を放った。

 マズい、とアルベルタ嬢が判断する。

 

「退避いいい! ルミヤルヴィ! すぐに離れなさい!」


 ルミヤルヴィ嬢はボスゴブリンに接近していたのだ。

 雑魚を仕留めたから。

 

 しかし、アルベルタ嬢の切羽詰まった声を聞いて即座に反応した。

 やってはいけないことだが、完全にボスに対して背を向ける。

 

 そして、全速力で駆けだす。

 

 ほぼ同時にケルシーが放った風の槌がボスゴブリンにぶち当たった。

 狙いは当然、胴体だ。

 もっとも面積が大きいから。

 

 ケルシーはそこまで緻密な制御ができないとも言う。

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛……」


 ボスゴブリンが腹を抱えてうずくまる。

 同時に、酷い悪臭が漂った。

 

「っくっさああああああああ!」


 ケルシーと聖女が同時に叫ぶ。

 

「うううう……なんてことなの」


 あまりにも悪臭である。

 もはや着用している装備にも移りそうな……。


 しかし、しっかりと時間内にボスを撃破できたのであった。


今年も拙作を応援していただいてありがとうございます。

良いお年をお過ごしくださいませ。

今年最後の話がこんなのになりましたけどw

明日も更新していきます

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― 新着の感想 ―
毎日楽しく読ませてもらってます 今年も執筆頑張って下さい
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