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婚約破棄された雑用係の私、公爵様の甘々な求愛に無自覚なまま愛されすぎている件  作者: おーちゃん


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27話

第27話 禁書庫へ遠足


 朝。

 アレクシアは鏡の前で深呼吸して決意する。


「今日は絶対に調査を進める」


 王宮からの追加通達は、昨日よりさらに厳しい。

 レティシアの出生を至急調査せよ。禁書庫の閲覧を許可する。

 禁書庫。あそこは本来、王族と高位官僚しか入れない場所。

 アレクシアが許可されたということは事態は相当深刻となる。

 アレクシアは外套を羽織り、決意を固めた。


「よし。今日は誰にも邪魔させない」


 そう呟いた瞬間。


「視察官殿ーーーー!!」


「嫌な予感しかしない」


 廊下に出た瞬間、メイドたちに囲まれた。


「視察官殿! レティの出生を調べに行くんですよね」


「私たちも行きます!」


「レティの護衛は私たちの使命です」


 メイドたち、遠足気分で同行希望をする。


「王宮で恋バナしましょう」


「恋バナはしません!!」


 アレクシアは叫んだ。


「あなたたちは屋敷で待機してください。これは危険な任務です」


「危険ならなおさら行きます」


「レティを守るためなら命をかけます」


「閣下の未来の奥様ですから」


「未来の奥様じゃありません!!」


 レティシアは真っ赤になった。


(勝手に決めているし)


 そこへ、ヴィクトールが現れた。


「レティ今日はどこへ行くんだ。聞いてないが」


「閣下、落ち着いてください」


「落ち着けない。どこだか教えてくれ」


「閣下。今日はレティシアの出生を調べるため、王宮の禁書庫へ向かいます」


 アレクシアが言う。当然に公爵は来ないのが前提で言った。


「私も行く!!」


 公爵、当然のように同行宣言してしまう。


「ダメです!!」


「なぜだ!!」


「あなたが行くと混乱が増えるからです」


「増えない!!」


「増えます!!」


「増えない!!」


「増えます!!」


「やめてください!!」


 レティシアが叫んだ。


(王宮にみんなで行く気か)


「視察官殿。閣下は絶対ついてくるわよ」


 ドロシーが腕を組んで言った。


「なぜですか?」


「レティが行くからよ」


「」


「それに、私たちも行くわよ」


「なぜですか!?」


「レティが行くからよ」


「」


 アレクシアは頭を抱えた。そんなに多くの人間が入れる場所ではない。禁書庫であるから当然だった。


「あなたたち本当に仕事してます?」


「してるわよ。レティの護衛が仕事よ」


「そんな仕事ありません!!」


「あるわよ」


「ないです!!」


 レティシアは全力で否定するも、ドロシーが豪傑ムーブで全てをねじ伏せる。

 ウォーレスが紅茶を飲みながら、


「視察官殿、諦めた方がいいよ。この屋敷の遠足は全員参加が基本だからね」


「遠足じゃありませんが。重要な任務です」


「でも、みんなお弁当作ってるよ」


「お弁当を?」


 メイドたちが胸を張る。


「レティのために作りました」


「閣下の分もあります」


「視察官殿の分もあります」


「私はいりません!!」


「食べてください!!」


「いりません!!」


「食べてください!!」


「いりません!!」


「食べてください!!」


 レティシアは思った。

(本当に遠足気分だわ)


 こうしてアレクシアの意思とは無関係に、公爵邸・禁書庫遠足隊が結成された。

 出発は行軍となる。

 メンバーは、

 レティシア(主役)

 ヴィクトール(暴走)

 ドロシー(豪傑)

 ハンナ、カトリーヌ、マルタ(恋バナ要員)

 ウォーレス(観察者)  アレクシア(視察官)


 総勢8名。


「なぜこうなったの?」


 アレクシアは空を見上げても、結果は変わらない。こうして禁書庫へ行くと決定した。


 王宮へ向かう馬車の中。

 メイドたちはテンションMAXだった。


「レティ、閣下と手を繋いでみたら?」


「繋いでません」


「じゃあ腕を組んでみたら?」


「組みません」


「じゃあ抱きついてみたら?」


「抱きつきません!!」


 ヴィクトールが言う。


「抱きついていいぞ」


「閣下まで!!」


 道中は恋バナ大会と成り果てる。

 アレクシアは頭を抱え、この馬車、爆発しないかしらと思う。



 王宮の門が見えてきた。

 アレクシアは深呼吸した。


「いいですか、みなさん。王宮は厳粛な場所です。騒いではいけません。走ってはいけません。恋バナは禁止です。閣下はレティシアから離れてください」


「全部無理です」


 メイドたちが即答した。当たり前のように言った。


「無理じゃありません」


「無理です」


「無理じゃありません」


「無理です」


 レティシアが遠足気分なメイドに叫んだ。


「遠足ではない!」


 王宮前にてアレクシア絶望してしまった。



 禁書庫の前には、王宮騎士団が並んでいた。


「視察官殿、お待ちしておりました」


 騎士は言葉を失った。


「なぜ、こんな大人数が?」


 アレクシアは泣きそうだった。


「私も聞きたいです」


 騎士は困惑しながら言った。


「禁書庫は本来、三名までしか入れません」


「三名。そうですよね。禁書庫ですからね」


 アレクシアは振り返った。どう数えても8名いる。これを3名に減らすのは難しいか。特にメイド達。


「では、私とレティシアと」


「私だ」


「私よ」


「私たちよ」


「閣下はダメです」


「視察官殿はダメです」


「メイドはダメです」


「いつになったら入れるのかしら」


 レティシアは悩んでしまう。


(遠足でいいのか)


 この会話のやり取りに、禁書庫前で王宮騎士団が困惑したのだった。


 騎士が説明している最中、ドロシーが禁書庫の扉に手をかけた。


「開かないわね」


「当たり前です。魔法で封印されているのです」


「ふーん」


 ドロシーは扉を軽く叩いた。


「開け」


 ゴゴゴゴゴッ。

 扉が開いた。


「開いたーーー!!?」


 騎士団が叫んだ。


「なんで開くんですか!!?」


「ちょっと叩いただけよ」


 ドロシーは禁書庫の扉を開ける。魔法なしの物理で。


「ちょっとじゃないです」


 アレクシアは震えたのは、この人、魔法より強いのと疑問に。


 禁書庫、混乱の中で始まる調査。

 禁書庫の中は、古い書物が山のように積まれていた。

 アレクシアは深呼吸した。


「よしここからが本番です。レティシアの出生の記録を探します」


 レティシアは頷いた。


「はい!」


 だが、アレクシアの説明通りにはいかない。

 メイドが暴走しだすから。遠足みたいに。


「こっちの本に恋愛の相性占いがあるわよ」


「こっちは理想の夫ランキングよ」


「閣下との相性は100%よ」


「やめてください。私の出生を探して!!」


 レティシアはこうなると思った。

 我慢の限界になったアレクシアは叫んだ。


「あなたたち!! 禁書庫で恋バナをするな!!」


 その時、上の棚から本が落ちてきた。


「レティ!!」


 ヴィクトールが本棚を殴った。

 ――ドゴォォォン!!

 本棚が倒れた。


「閣下!!」


「レティを守った」


「守り方がおかしいです!!」


 公爵、レティシアを守るために本棚を破壊してしまった。


 アレクシア、ついに限界を迎える。頭を抱えた。


「もう無理です。この屋敷の人間を連れて調査なんて」


 ウォーレスが微笑んだ。


「視察官殿、諦めたら負けだよ」


「負けでいいです」


「ダメだよ」


「ダメなんですか」


「ダメだよ」


「やめてくださいい!!」


 レティシアは叫ぶ。


(出生のこと怖いけど、みんながいるから大丈夫)


 その想いが、彼女の中で静かに強くなっていった。

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