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【第二部 第2話 高すぎる価値】
「高いな」
それが、最初の反応だった。
坂井新之助は、並べた松茸を見つめる。
香りはいい。
形も悪くない。
だが——売れない。
「こんなもん、誰が買うんだ」
客が言う。
そのまま、去っていく。
———
「……厳しいな」
佐吉が呟く。
新之助は頷く。
「ああ」
(価値はある)
(だが——伝わっていない)
———
「安くするか」
商人が言う。
新之助は、首を振る。
「違う」
短く言う。
「安くするものじゃない」
沈黙。
———
(高い理由が、必要だ)
———
「料理にする」
新之助は言った。
空気が変わる。
「そのまま売るな」
「価値を、見せる」
———
夜。
火が入る。
香りが立つ。
だが——
「……焦げてるな」
佐吉が言う。
沈黙。
味は、悪くない。
だが——
「売れる味じゃねえ」
商人が言う。
———
(失敗だ)
新之助は、静かに認める。
(料理も、簡単じゃない)
———
「やり直す」
短く言う。
——失敗から始まる。
――続く




