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【第28話 開くという戦略】

夜。


静まり返った部屋。


坂井新之助は、地図を広げていた。


無数の線。


繋がる流れ。


そして——


遮られた跡。


(相手は、流れを絞る)


(なら——)


「開く」


小さく呟く。


———


「……で、どうやる」


商人の男が腕を組む。


佐吉も、じっと見ている。


全員が、答えを待っていた。


新之助は、ゆっくりと顔を上げる。


「全部、使う」


短い一言。


「……何をだ」


「人も、物も、情報も」


空気が変わる。


———


「まず——」


新之助は、指を一本立てる。


「流れを増やす」


ざわめき。


「今の倍だ」


「無茶だろ」


商人が即座に言う。


新之助は、否定しない。


「無茶だ」


認める。


「だが——」


一歩踏み込む。


「必要だ」


———


「なぜだ」


問いが飛ぶ。


新之助は答える。


「相手は、絞ることで利益を得る」


「なら——」


地図を叩く。


「絞れない量にする」


沈黙。


(管理不能にする)


———


「次に」


二本目の指。


「参加者を増やす」


ざわめき。


「村も、商人も」


「全部、巻き込む」


「……制御できんぞ」


当然の指摘。


新之助は頷く。


「完全には、できない」


沈黙。


「だが——」


「それでいい」


空気が変わる。


(制御ではなく、流れ)


———


「そして」


三本目の指。


「情報を開く」


沈黙。


「価格」


「量」


「流れ」


「全部、見せる」


ざわめきが広がる。


「……そんなことしたら」


「真似されるぞ」


新之助は、静かに言う。


「構わない」


———


「なぜだ」


問いが重なる。


新之助は、はっきりと答えた。


「それでも、こちらが勝つからだ」


空気が止まる。


———


「閉じた仕組みは、限界がある」


「だが——」


一歩踏み込む。


「開いた仕組みは、広がる」


沈黙。


「速さも、量も、違う」


———


部屋は、静まり返る。


やがて——


「……本気か」


商人が呟く。


新之助は頷く。


「ああ」


———


「負けたら」


佐吉が言う。


その目は、真剣だ。


「全部、終わりだ」


沈黙。


新之助は、迷わず答えた。


「そうだ」


空気が張り詰める。


———


「だが——」


一歩踏み出す。


「勝てば」


視線を上げる。


「変わる」


沈黙。


「この先が」


———


長い沈黙。


やがて——


「……乗った」


商人が言った。


苦笑しながら。


「ここまで来たんだ」


肩をすくめる。


「やるしかねえ」


———


「俺もやる」


佐吉が言う。


その声は、迷っていない。


「やりましょう」


一人、また一人と頷く。


———


「……いい」


新之助は、小さく呟いた。


「始める」


———


翌日。


動き出す。


人を集める。


村を回る。


商人に伝える。


「開くぞ」


短い言葉。


だが——強い。


———


流れが、広がる。


新しい者が入る。


新しい道ができる。


情報が、回る。


———


その頃。


「……何だ、これは」


黒舟組の一人が、顔をしかめる。


「増えすぎだ」


沈黙。


「追えねえ」


別の男が言う。


空気が変わる。


———


「……どうする」


誰かが問う。


答えは、すぐには出ない。


———


夕暮れ。


新之助は、一人で立っていた。


(始まった)


戻れない。


止まらない。


「……いい」


小さく呟く。


「全部、使う」


視線の先には——


広がり続ける流れ。


そして——


揺らぎ始めた、敵の影。


——最終決戦、開幕。


――続く

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