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【第10話 市場を奪う】

「……見えた」


坂井新之助は、静かに呟いた。


隣町での販売は成功した。


だが、それは一時的な回避にすぎない。


(本質は変わっていない)


流通を握る者が、力を持つ。


ならば——


(握ればいい)


———


「集まってくれ」


新之助が声をかける。


農民、商人、運び屋。


全員が揃う。


「次の話をする」


空気が張り詰める。


「……まだやるのか」


誰かが苦笑する。


新之助は頷いた。


「ここからが本番だ」


沈黙。


「市場を、奪う」


ざわめきが起こる。


「……どういう意味だ」


商人の男が問う。


新之助は、ゆっくりと言った。


「“場所”を押さえる」


「場所?」


「人が集まる場所」


短く言う。


「そこを押さえれば、流れは作れる」


空気が変わる。


「……つまり」


「新しい市を作る」


沈黙。


「……できるのか」


新之助は答えた。


「できる」


言い切る。


「理由は三つ」


指を立てる。


「一つ。商品がある」


頷きが広がる。


「二つ。流通がある」


運び屋たちが顔を上げる。


「三つ——」


少し間を置く。


「客がいる」


沈黙。


「客は“良いもの”に集まる」


静かに言う。


「なら、場所を変えればいい」


———


数日後。


町の外れ。


空き地に、人が集まっていた。


「本当にやるのか……」


ざわめき。


新之助は頷く。


「ここだ」


杭を打つ。


縄を張る。


「今日から、ここが市だ」


沈黙。


次の瞬間——


「やるぞ!」


誰かが叫んだ。


屋台が並ぶ。


品が並ぶ。


声が上がる。


「丹波の米だ!」


「新鮮な野菜だ!」


最初は、まばらだった。


だが——


一人、足を止める。


「……何だここは」


「新しい市か?」


人が増える。


「安いぞ」


「うまいな」


流れが生まれる。


———


その頃。


元の市場。


「……人が減ってるな」


商人が呟く。


「どこに行った」


報告が入る。


「……外れに、新しい市が」


空気が変わる。


「誰だ」


「……あいつらです」


沈黙。


「……勝負に出たか」


低い声。


———


新しい市。


人で溢れていた。


「すごい……」


村人が呟く。


「こんなに来るのか」


新之助は、静かに見ていた。


(流れは、変わった)


場所を作る。


そこに、価値を集める。


それが——支配だ。


———


夕方。


一人の男が近づいてきた。


外部商人の一人。


その目は、鋭い。


「……やるじゃねえか」


新之助は答えない。


男は続ける。


「だがな」


一歩近づく。


「これは終わりじゃねえ」


空気が張り詰める。


「次は、もっとデカいのが来る」


沈黙。


「覚悟しとけ」


そう言って、去っていった。


———


夕焼けの中。


新之助は、立っていた。


(ここまでは、予定通り)


だが——


(ここから先は、違う)


相手は、本気になる。


「……いい」


小さく呟く。


「来い」


その目は、静かに燃えていた。


——市場は、奪った。


だが戦いは、終わらない。


次に来るのは——


“権力”だ。


――続く

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