リフトで二人っきり
ミツキちゃんを引っ張って部屋の外へ。
とりあえず部屋から出てくるところさえ見つからなければいい。
「おい元気いたか? 」
突然呼び止められるとドキッとする。
まさか手を繋いでるところを目撃された? いや大丈夫だ。問題ないさ。
「ほらミツキちゃんだろう? ここに…… 」
「はあどこだよ? 」
「おかしいな。いたんだけど…… 」
そうこうしてると急いで着替えたであろうミツキちゃんが姿を見せる。
さすがに人前では下着付けずに雪女スタイルは恥ずかしいか。
それはよかった。さすがに誰にもあの姿を見せられないよな。
たとえ兄だとしても…… ちょっと複雑。
「なあミツキちゃんって寝る時どんな感じ? 」
つい隙を見せてしまう。ただこれにより親密な関係にないと言い張れる。
演技力は一級品さ。二人の関係を決して知られてはならない。
「お前馬鹿か? 言えるはずないだろう! 」
大事な妹の秘密を暴露する兄はいない。
それはミツキちゃんにとってうれしいこと?
「ちょっと興味があってさ。いやミツキちゃんって言うか女の子全般だけどさ。
ほら夜になるとセクシーになったりするだろう? 」
まずい。どんどん自分がおかしくなっていく。
どうやらまだ昨夜のことがあって本調子ではないらしい。
これだと思春期丸出しのただのガキ。
僕は自分では立派な第三の山田だと思っていたがどうやら違ったらしい。
実際の点数と自己採点が乖離してる感じ。よくあること。
結局は自分に甘い。プラス思考と言うかポジティブなんだろうな。
「俺が知るか! 知ってても言えるか! 」
本気で怒ってると言うよりミツキちゃんが見つかって一安心。
喜びのせいで感情がおかしくなってるだけ。
うーん。奴でもそうなのか。すると僕が浮かれたのは何らおかしいことではない。
恥ずかしくも情けなくもない。
「お前まさか狙ってるのか? 」
おっとついに来ました禁断の質問。これはどう答える?
「ははは! だってかわいいじゃないか」
こうしてふざけて言えば奴だって僕の本当の気持ちに気づきはしないさ。
ミツキちゃんだって嬉しいはずだ。
本当の気持ち? 嬉しい?
あれ…… 自分ではまったく分からなくなってる。
それは確かにミツキちゃんはかわいいし僕の良き理解者で何と言っても積極的だ。
でも自分ではもうミツキちゃんをどう思ってるのか分からない。
一緒に居過ぎてしまった。もしこのままミツキちゃんと……
でもそれはできない。僕には碓氷さんがいるミツキちゃんによれば光だって。
もはや自分でも自分が分からないおかしな状況。
「うるさい! それよりありがとうな」
どうやら探してくれたことに対する感謝の言葉らしい。
「気にするなよ。一時保護しただけだよ」
事実をありのままに述べる。しかし今さっきではない。昨夜から保護していた。
「よし飯にしようぜ! 」
こうしてどうにか乗り切った。
光が迷惑を掛けたことを謝って回る。
探し回った大田原さんも旅館の方も一安心。
「まったく人騒がせなんだから」
呆れる大田原さんにも笑顔が見られる。
「悪いな元気。お前にも迷惑を掛けた」
らしくない対応に調子が狂う。
「いいって。それよりスキー行こうぜ! 」
罪悪感がある。隠していたのは結果的には僕だからな。
悪いと思いながらもこれ以上は避ける。
今日はすっきり晴れていて着込んだスキーウエアでは暑いぐらいだ。
これならホッカイロはもう必要ないな。
「ほら早く元気! 」
光は朝のことを忘れて一人はしゃぐ。これで元通りさ。
「待ってくれよ! 」
「もう鈍いな! 置いて行くぞ! 」
置いて行くも何も昨日から置いて行きっぱなしじゃないか。
大田原さんも僕のことなんか眼中にないよう。
酷いな。これでは昨日と同じように奴らが二回滑ってる間に一回しか滑れない。
別にそれくらい構わないけど。もったいない気もする。
一人でリフトに乗るのは絶対に嫌だからな。
リフトの前でゆっくり待つか…… 情けない第三の山田でした。
「ほら行こう! 」
ミツキちゃんが助けてくれる。
こうして二人でリフトに。
うん? 怖さで余計なことを考えてなかったが二人っきりのリフト。
そう簡単には降りられないある意味密室。到着まで数分はこのまま。
どうしたんだろう? ずっと無口だ。らしくなミツキちゃん。
こっちに引っ付こうともせずただ横に座っている。
まるで人が変わったように沈黙する。ただ雪が落ちる音と機械音のみ。
「どうしたのミツキちゃん? まさか怒ってる? それとも反省した? 」
心当たりはあるようでない。光を嵌めたようなものだからな。
それはミツキちゃんも理解してるはずだ。ただいい気はしないだろうな。
そのことに怒ってもどうにもならない。
「これ以上はダメ! 」
意外な言葉が返って来る。そうか反省したらしい。
「うん。一旦離れた方がいいみたいだな僕たち」
「はあ? 何を言ってるの元気? 突き落すよ! 」
そんな風にリフトでふざけてはいけない。怒らせてもいけない。
「違うの? 」
「ほらお兄ちゃんに見られてる。楽しくしてたら気づかれる」
何と光が監視してると。いやそれはあり得ない。ただスキーを楽しんでるだけさ。
気にし過ぎだって。そう言ってもまったく聞く耳を持たない。
「光は単純に心配してるだけだろう? 」
「そうでもない。何で二人で乗ってるのか疑ってるみたい」
「だったら仕方ないな。残念だけど諦めて大人しくしてよう」
「うん。手を繋ぐだけでいい」
おっと大胆発言。見られてるんだろう? どう言う神経してるんだ?
「いや…… まずいって」
「これくらい大丈夫。元気だって誰かに見られるかもって思うの好きでしょう?」
好き嫌いではないがそのプレッシャーの中でいちゃつくのも悪くない。
二人で仲良く手を繋ぐ。
それから奴がいない時はミツキちゃんとリフトに。
ちょっとしたスリルを味わうことで満足。
リフトでは余計なことはしない。それが常識。
こうしてトラブルはあったものの無事に帰路へ。
続く




