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光の存在

寂しそうなミツキちゃんの後姿を見送るがどうすることもできずにいた。

扉の音に反応。勢いよく背中を抱きしめる。別にこれがしたかったとかじゃない。

決断できずに勢いに任せた。今なら彼女を抱きしめられるんだ。


「どうしたの元気? 」

驚いてるはずの彼女はなぜか涙を流す。

嬉しい? 違うよな? 苦しいんだよな。

恐らく彼女もすべて分かっていて身を引こうとした。

それでも耐えきれずにサインを送り続けた。

もしこのまま何もフォローせずに帰せば彼女はショックを受けるだろう。

だがそのうち僕のことなどきれいさっぱり忘れて立ち直る。時間が解決するさ。

すべてはあの日…… 彼女が仕掛けたこと。一週間前におかしくなった。

大体僕たちは付き合ってるとかでは決してない。

決してないが許されるなら付き合いたいなと。それが正直な気持ち。

一週間前にしろ今日にしろ結局彼女は何がしたかったんだろう? 


「無理しないでくれ」

互いの感情を殺してどうなると言うのか?

こんなことを続ければ悲劇が生まれるだけなのにどうしても手放せずにいる。

支配欲と言うかただの性欲が勝っている。そのことに気づいてない。

「でもまだ中学生だよ? 」

おっとここに来て逃げようとするとは小賢しい。

「知ってるけど? それが何か関係あるの? 」

意地悪や嫌味で言ってない。ただ愛し合ってる男女に大した足かせにならない。

「元気の馬鹿! 」

これは怒ってる? でもきっと喜んでるんだろうな。


「好きなの! 」

うわ…… 激しい愛。これは逃れきれない。もちろん逃げるつもりはないが。

そこまで僕は無責任じゃない。きちんと受け入れるつもりだ。

でもそれには一つだけ問題が…… いや正確には二つある。

「そうか…… でも自分には分からないんだ」

正直な気持ちを伝える。


彼女を引き留めたのはそうして欲しいと言葉の端々から感じ取ったから。

それだけでなく仕草にも表れていた。すぐに帰ろうとしない粘り方もそう。

そんな彼女の気持ちに応えてあげたい。それが自然な感情。

またしても彼女の作戦勝ちかな。仮にそれでもいい。乗せられたっていい。


「元気…… 」

ようやく正面から抱きしめることができた。

「何でかな…… どうしても光の影がちらつくんだ」

苦悩を共有してもらおうと正直に言ってみる。

こんな時に現実に戻すように光について。デリカシーがないしムードぶち壊し。

それでもきちんと話し合っておきたい大切なことだから。

このまま後回しにしてズルズル行けば言えなくなってしまう。


やはり光の存在が二人にはある。影を落とすなんて言ったら悪いよな。

親が何と言おうと構わないし反対してもどうにでもなる。それは彼女の親もそう。

だが光はそうはいかない。思いっきり邪魔になる。障害になる。

光はいい奴だけどかわいい妹を渡すはずがないんだ。

それが僕には分かる。頑固に最後まで反対するに決まってる。

しかも今だからな。後二年も経てば様子も違って来るだろうが。

一個下なら問題ない。でも中学生。三年生でもなく二年生。まだ子供だ。

そう言う結論にたどり着く。それが当然。奴がどうとかでは決してない。

最悪二人の友情もここまで。それでもこの関係を続けるのか? 続けていいのか?


「お兄ちゃんが怖いんだ? 元気らしくない」

「そうじゃなくてさ…… 」

温くなったコーヒーを一気に飲み干す。うわ…… 口の中が臭いな。

これでキスなどできるはずがない。でもこのままだと勢いのままするかも。

おっと…… どれだけ僕はキスしようとしてるんだ?

もはや言葉に出さなくても頭はそのことでいっぱい。どうしようもないな。

それを悟られてるかと思うと恥ずかしい。


「元気は気づいてないんだよきっと…… 」

意味深なことを言い始める。どう言うことだ? 僕が何に気づいてないと?

僕は光についてはそれなりに理解してるつもり。

確かに一緒に暮らす彼女の方が良く分かってるだろうけど気づかないはずない。

「ははは! ミツキちゃんどうしたの? 気づいてないって何が? 」

光と僕を見てきたミツキちゃんの気づき。恐ろしくて聞きたくない。

でも聞かなくちゃ。後で後悔することになる。一体彼女は僕の何に反応した?


「教えてあげるね。元気はお兄ちゃんのことが好きなんだよ」

子供っぽい発言。それがどうした? 僕たちは毎日ふざけあう仲だ。

奴がどう思おうと僕たちは親友。妹の問題があるとしても関係ない。

「ああ好きだよ。いい奴じゃないか」

「違う! 元気はお兄ちゃんに好意を抱いてる」

「はあ? そうそう。いつも一緒だからそれなりに好意はあるさ」

「違うって! あなたは私と同じようにお兄ちゃんを愛してるの! 」

ズバッととんでもないことを言う。嘘だろう? そんなことあるものか……

「馬鹿な! ミツキちゃんだけさ」

もう意味が分からない。これを言わせたいだけでは?

兄をダシに使うとは非情な妹だな。だがそれだけ図々しいのも悪くないか。

「ありがとう。私もだよ元気! でもあなたの心にはやはり兄がいるの」

ダメだ。一度疑い出すと止まらない。問題を解決しなければどうにもならないぞ。

二人の関係にも影を落とすことになる。


問題はすべてミツキちゃんの勝手な憶測に過ぎない事。不確定要素があり過ぎる。

僕はきっと彼女の強烈な押しによっていつの間にか友情が愛情へと変わった。

それは自然なこと。自分でもフラフラしていて筋が通らない人間だと思う。

だけど初めてのことばかりだから手間取ってしまって……

できるならもうミツキちゃんだけを見ていたい。そんな風に思っていた。

それが理想なんだろうが難しいのかもしれないな。


そしてついに明らかになる僕たちに立ちはだかる二つの問題。

それは光。ミツキちゃんの兄問題。

僕はミツキちゃんがそうであるように光を愛してるらしいのだ。


                続く

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