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疑惑

二人にとって光の存在が大きい。

ミツキちゃんに言われ動揺が隠せない。

あまりにも突拍子もないことなので訳が分からず冷静さを失っている。

僕が光を愛してる? ははは! あり得ない。あり得るはずがないだろう?

それは親友として好意を持っているさ。でもそれとこれとは違う。別物。

一体何を言ってるんだろう? そもそもそんな感情はない。

同じサークルで毎日のように顔を合わせる親友の存在が二人の関係を壊す。

せっかく二人を繋いでくれたのに壊すなんてそんなのないよ。


ミツキちゃんと仲良くなったのは光の家に遊びに行くようになってから。

それから無理なく自然に話をするようになった。話しやすい相手だったし。

いつも笑ってふざけてそれでいて大雑把で生意気。そこが気に入ってた。

もう少し裏表があってもいいと思えるほど。

それなのに二人っきりになればまた別のやり方で魅了。もう堪らない。

ミツキちゃんに夢中なのは自分でも理解してるつもり。


そんな彼女に光への愛が邪魔になってると言われるのはショックだった。

考えもしなったことで混乱するばかり。

どうしたら僕が光に惚れているなどと戯言を吐けるのか?

もちろん何度も言うように尊敬するところも見習いたいところもある。

奴には僕には到底真似できない積極性がある。

絵のモデルに女の子に声をかけまくるなど普通じゃない。

僕なんか碓氷さんに声をかけてもらおうと健気に周りを動き回ってる。

ハイタッチもするがそれだって緊張の連続だ。

嫌われないかとかテンションが低いかなとか常に考えている。

だが奴はお構いなしに声を掛ける。もはや親友とは思えない異常ぶり。

そんな風に言うのはさすがに悪い気がするが。


一度奴のようにやってみたが当然のことながら無視された。

でもそれでよかったと思ってる。もし反応されたらモゴモゴ言うだけ。

人には得意不得意がある。光のそれも今日や昨日で習得した訳ではないだろう。

その折れない強靭な心を手に入れられたらな。図々しいほど軽いそのマインドも。

ほとんどがないものねだり。僕には似合わないものばかり。

何と言っても僕は第三の山田だから。自覚したくなくてもせざるを得ない。


本当に光は凄いや。あれ? これって憧れなのか? 憧れの光。

まさか今まで眠っていた光への想いが解放されてついに僕たちは……

いやいやそんなはずない。

どうもミツキちゃんに指摘されるとそうでもないことまで認めたくなる。

どうやら僕はミツキちゃんにコントロールされ始めている。

僕って騙されやすいタイプってことか? もしそうだとすると今後が心配になる。

まったくミツキちゃんは何てことを言ってくれるんだよ。本気にしたらどうする?

どんなことがあっても光は光。おかしな感情が湧くはずがない。

どうしてミツキちゃんはそんなおかしな考えに至ったのだろう。


「あり得ない! 僕が光にそんな感情があるはずない! 」

「元気は気づいてないだけ」

どうやら彼女はつまらないことが気になるらしい。

このまま否定し続けてもただ対立するだけ。ここは大人の対応をすべきだろう。

「うん。光が好きだ。だからどうしても光が頭から離れない。ははは…… 」

「元気の馬鹿! 」

「どうしたんだよ? ミツキちゃんが言ったんだろう? 」

認めるぐらいはしてもいい。それよりもなぜこのような結論に至ったのか?


「変だよミツキちゃん。なぜこんな混乱させるような真似を? 」

「それは…… 」

言いたくないそう。おいおいそれはないよ。

まあいい。この際はっきりさせておこう。

僕は光に一度もそのような気持ちになったことはない。

当然だけど友情が愛情になりようがないのだ。

ここまでするのは普通じゃない。考えられるのは一つだけ。人のせいにしている。

さっきミツキちゃんは彼女と同じように光を愛してると言っていた。

どうもその一言が引っ掛かっている。

もしかして僕に本当のことを伝えたかったのでは? それが言えずに人のせいに。

そう考えるのが自然。僕を巻き込むなど意味不明だがそれなら納得もできる。


「まさかミツキちゃんがそうだからだとか? 」

からかってみるがなぜか返事がなく黙ってしまう。

おいおい本気かよ? まったく信じられない。

どうして光は僕たちの前に立ち塞がろうとするんだ。大人しくしてて欲しい。


「それとお兄ちゃん最近付けられてるみたいなんだ」

都合が悪くなったのか話を変えた。今はそんなことはどうでもいいだろう?

こんな中途半端な状態では彼女への想いを伝えられない。次の機会にしよう。

「面白そうだな。光の奴に新たな女の影。悪くない」

「違う! 一方的に付きまとってるの。最低な女」

「へえ詳しいね。それはただの勘違いじゃないの? 」 

「見たから! コソコソしてる姿を見てるの」

ただの嘘でないならストーカ―のような存在がいることになる。

笑いごとではないよな? 見たことも聞いたこともない人から向けられる好意。

想像はつかないが怖くて恐ろしいものに違いない。

僕が碓氷さんにしてることも実は危険な行為。これは反省しないと。


「なあもう光のことはいいからさ楽しもうよ」

もう我慢できない。僕は今彼女以外見えてない。それくらい分かってるくせに。

意地悪しないでもっと楽しませてくれよ。今更焦らさなくたっていいだろう?

立場が変わりつつある。ちょっと前まではミツキちゃんの一方的なものだった。

しかし感化されたのか彼女へ興味を抱きついには我慢しきれずに抱きしめる。

両想いに。今ではもう僕の一方的な行為となってないか?


「光は関係ない! 僕たちはただの仲のいい友だち。

それくらいミツキちゃんも充分理解してるくせに」

もうこの話はいい。光に関する事はここは一旦置いておこう。

今の気持ちを聞きたい。

「どうして僕とではダメなんだ? 」

今更光に逃げなくてもいいじゃないか。僕のことをどう思ってるか答えて欲しい。

「もういい! 私そろそろ帰るね」

お見舞いに来たんじゃないのか? どうしてこう思い通りに動かない?

悲しい。悲し過ぎるよ。


こうしてミツキちゃんといい雰囲気なっていたところを台無しにされてしまう。

週末は寝てばかりでロクなことはなかったけれど切り替えよう。

月曜日には絶対にいいことがある。そう信じてる。


                続く

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