日曜日の幻影
山田何しやがる! って僕も山田か。本当に面倒臭いな。
山田…… そう第二の山田が裏切った。山田同盟を裏切り好き勝手しやがった。
もちろんそんな同盟結んでない。でも三人の山田は地味で目立たない存在。
だからこそ違いが分かりにくく彼女が僕を認識できない。
彼女の頭が悪いのもあるがそれが混乱の原因の一つなのは間違いない。
第二の山田はスポーツができる。体育では球技はもちろん走りだって。
だからスポーツの時は目立つ。それでも教室では目立たない日陰者。
ちなみに第一の山田は頭がいい。ただ皆から慕われたり人気がある訳ではない。
おっと…… 今は第二の山田だ。なぜここで第二の山田が登場するのか?
僕たちの前に立ちはだかる山田と言う名の赤の他人。
クラスで忘れがちな存在である山田の中で一番可能性があるのは彼だろう。
しかしだからと言ってまさか彼女の目に留まるなどあり得ない。
地味な存在として情けを掛けていたのに平気で裏切る。それが奴と言う男さ。
でも彼にだって幸せになる権利はもちろんある。だから糾弾できない。
せっかく認識され誤解も解け二人の仲が進展したのになぜ第二の山田を誘う?
これは嫉妬の罠か? そうだとすれば急いで応えないとまた嫌われる。
ああでもダメだ。さすがに今はあの中に入って行く勇気はない。
第三の山田はそんなキャラじゃない。すべては彼女のお許しがあってこそ。
そこで僕は生き生きできるのだ。クラスで輝く彼女に光らせてもらう。
それでも勇気を持って……
「碓氷さん…… 」
ダメだ。ただ情けなく追いすがるが振り向いてさえくれない。
存在感が激薄な僕では無視されるだけ。この深い愛が届くことはない。
もういいのかな…… 諦めが心を支配する。
いやいやここで諦めてどうする? 昨日のことがなければそれも仕方ないさ。
だがもう嫌われてない。本人の口から直接聞いた。
そう今日はついてないだけ。毎日接していればちょっとすれ違うぐらいあるさ。
日曜日。
暇なのでその辺をブラブラしようとすると母さんに止められる。
「あんたは留守番してなさい! 」
なぜか有無を言わせない半強制。僕忙しいんだけどな。
「でも散歩が…… 」
「いいからあんたは大人しく留守番する! 」
なぜか損な役割。やっぱり最近ついてないのかな?
「はいはい。行ってらっしゃい」
どうもよく分からない。なぜか留守番を仰せつかる。
五分もしないで飽きる。今日に限ってロクなのがない。光も反応がないし。
彼女のことがどんどん薄れていく。これでいいのかもしれないな。
もう諦めるか…… それが僕たちにとって幸せに違いない。
彼女に振り回されるのは疲れたよ。
でも…… 彼女だって僕に会いに来てるかもしれない。
すべて解決し認識され元通りのはずなのになぜか後退した気がする。
彼女いないかな……
念のために外の様子を見て来るか。玄関を出て道路を見回す。
今日は天気も良く風も穏やか。旅行日和。
彼女と泊まりがけで二泊三日ぐらいの旅行ができたら最高だな……
えへへへ…… ああダメだ。妄想で彼女が笑い出した。
このままでは好きだと告白されてしまう。もうそうなったら自分は止まらない。
そうなる前に妄想を終えないと自分を見失ってしまう。
辺りを見回すがやはり彼女はいない。当然そんな都合のいい話があるはずがない。
かわいくて素敵で活発的な彼女。どうせ今はクラスの子たちと楽しくやってるさ。
僕も暇つぶしにブラブラ歩き回りたい。でも留守番があるからな。
ちょっと前までは歩いて三十分のところに本屋があった。
中学の頃はほぼ毎日通っていた。雨の日も気にせずに。
もちろん本はそんなに読まない。コミックばかり。後は参考書ぐらいか。
観察も好きでおかしな雑誌を読んでるおっさんのそそくさとした動きを目で追う。
大体二日に一度来てる二十代のお姉さんがいつも座り読みして隣になることが。
その人の横顔が凄くきれいなんだよね。あっちは気づいてるのか豪快に笑ってる。
おかしな人だった。でもきれいな人だった。
当然そこから恋が始まることもなくいつの間にか閉店。
大型書店だったのに突然だから驚いた。張り紙はあったらしいが。
今振り返ればいい思い出。
おっとまずいまずい。思い出に浸ってどうする?
急いで戻らないといくら家の前でも不安。庭から侵入されたらお終い。大問題に。
留守番もできないのかと責められる。
さあ戻ろう。どうせ彼女が来ることもないのだから。
うん? 碓氷さん? 眩しくてよく分からないが女の子が手を振っている。
いやいやもう僕たちって付き合ってるんだったけ?
手を振るってそう言うことだよね?
「碓氷さん…… 」
だがなぜか反応が薄い。違った? それとも恥ずかしいのか?
僕だって日曜の昼間から恋人ごっこはちょっとね。でも彼女の望みなら仕方ない。
加速したぞ。そうかそうか。待ち切れなくて走って来た?
「元気! 」
そう言うと飛び掛かってきた。これは間違いなく彼女だ。それ以外あり得ない。
他にもいなくはないがこんな風に呼ぶのは光の妹の…… 妹?
「君はもしかして? 」
顔を見れば現実に戻される。碓氷さんではないと確定してしまう。
それは嫌だ。それは僕には耐えがたい現実なんだ。
「元気何を言ってるの? 私に決まってるでしょう? 」
そうだ。何を心配している? 元気などとフランクなのは彼女以外あり得ない。
毎朝ハイタッチするぐらい明るい彼女を置いて誰がいると言うんだ?
僕がそこまで明るくないから…… いや暗い方。存在感がないからな……
「碓氷さん…… 」
「違う! ミツキでしょう? 碓氷さんって誰よそれ? 」
怒ってる。他の女の名前を出せれて気分のいいものじゃない。
それは僕だって立場が逆転すればそう思う。いつだってそうだ。
「碓氷…… いやよくおっかない犬を散歩させてる碓氷さん。
この時間によく見かけるからてっきり」
適当に話を作る。碓氷さんの正体がクラスメイトだと思われるのはまずい。
光に伝わると厄介だからな。面白そうだと余計なことしそう。
それが奴なりの友情の証らしいがお節介なだけ。
続く




