欲求不満のミツキちゃんとお片付け
遠くから手を振る女の子。
憧れの碓氷さんかと思いきや光の妹のミツキちゃんだった。
いや別にそこまで残念だとは思ってない。だって光に似て色白でかわいいから。
それに僕にだけは心を開いて積極的。淡い期待もなくもない。
「その碓氷さんって女性? 」
「うん。ミニスカートの…… 」
まずい。お怒りモードのミツキちゃん。こんな子だったっけ?
適当にでっちあげた近所の碓氷さんではやっぱりまずかったか?
嘘を吐くのは苦手だからすぐバレてしまう。
「ミニスカートの? 」
「へへへ…… おじさんかな」
「嘘つかない元気! そんな人と私をどうやって間違えるのよ? 」
エキサイトするミツキちゃん。まだまだ子供だな。
適当に作った人物だから細かいことは気にしなくていいのに。
「実は若くてきれいな近所でも評判のお姉さん。スタイルだって抜群だぜ」
開き直って自慢してみると怒りに震えるミツキちゃん。
激しい人だ。それにしてもこんなとこをほっつき歩いてどうしたんだろう?
道にでも迷ったか? ははは…… まだガキだな。
それとも…… 待てよ…… 何か重大なことを忘れている気がする。
「ははは…… ミツキちゃんが遅いから迷ったんじゃないかと心配したよ」
留守番はミツキちゃんが来るからか? だったら先に教えてよね。
すっかり忘れていたじゃないか。まあ仕方ないか。いろいろあったしな。
碓氷さんのことで悩んでいた。だからミツキちゃんが来てくれて気が紛れる。
今の今まで忘れていたミツキちゃんの訪問。
あれだけ楽しみにしていたのに。時の流れは残酷だ。もう記憶の彼方だからな。
もちろん少しは反省してるさ。でもこれもある程度仕方ないこと。
「初めからそう言いなさいよ元気の馬鹿! 」
そんな挨拶を交わしミツキちゃんを我が家に招待する。
誰に自慢するでもないごく一般的な一軒家。
光はよく来るがミツキちゃんは今日が初めて。緊張するな。
でもすっかり忘れていたので片付けなどしてない。
「ねえミツキちゃん。今買物で後一時間は帰って来ないんじゃないかな」
それとなく今の現状を伝えて選んでもらう。姑息だけど面倒臭いのもある。
「元気…… それなら私…… 」
いくら仲がよくてもただの親友の妹では気を使う。
彼女だってきっと僕なんかと二人っきりは嫌だろう。
残念だけどこれが現実さ。どうぞお帰り下さい。また次の機会に。
「うんうんそれがいい。悪いことは言わない」
送って行けないがここで見送ることはできる。最低限のことはしてやりたい。
それがせめてもの罪滅ぼし。せっかくの休みを無駄にしてしまったからな。
「お邪魔します! 」
なぜか強行しようとするミツキちゃん。イカレてるぜ。
「上がるの? でも今帰ろうとしてたような…… 無理しなくていいよ」
「ううん。無理なんかしてない! それに元気が嵌めようとしてる気がする」
そう言って遠慮することなく上がる。もうコントロールできやしない。
「はあ? 嵌めようと? それなら逆じゃないか? 普通は帰さないぞ」
「そうかもしれないけど元気は面倒臭がってるだけでしょう? 」
なぜそのことに気づく? 早く返して碓氷さんを探しに行こうと思ったのに。
ことごとく読まれている気がする。すると今思い浮かんだこともきっと……
先を読まれて撃沈することになるんだろうな。
「ははは…… そんなことある訳が…… 」
「ある! 私を除け者にしようとしても分かる! 」
ダメだ。話にならない。でも自分で選んだ道だし後悔したって遅い。
「分かった。だったらゆっくり寛いでくれ」
お茶を淹れて駄菓子でも用意すればいいさ。
「まさかここに? 堅苦しいでしょう? 元気の部屋に招待しなさいよ! 」
うわ…… 面倒臭いな。どうしたんだミツキちゃん? 欲求不満か?
客間に招待したのはもてなすため。面倒だからこれでいいと思ったとかではない。
最高級のおもてなしもどうやら不発に終わったらしい。残念だよ。
「でも部屋は汚くて見せられない。勘弁してよ。ねえミツキちゃん」
逃げの一手を打つが相手は強者。怯むはずもない。
「もう! だったら一緒に片づけてあげるからそれでいいでしょう? 」
ダメだ。そう言われたら招くしかない。実際汚いだけで特に問題はないから。
ただもし彼女が自分と同じように振る舞おうとしたら?
あり得ないが嫌な予感がする。
仕方なく二階の奥の部屋にご招待。
あるのはテレビと机と本棚ぐらいなものか。
そこには大量のマンガと雑誌に参考書に本もちょっとだけ。それとコレクション。
と言っても創刊号が安いあのDVDコレクションだ。
一時期嵌っていて何種類か集めそのまま。飽きやすく後に回すことが多い。
そしてそのままやる気をなくし次へ。それが続き今はもう諦めている。
僕にはまだ早過ぎた。難し過ぎたんだろうな。
「意外にも整理整頓できてるじゃない。とりあえず掃除をしましょう」
コートをハンガーにかけてバックを投げると準備万端らしい。
バックには何が入ってるのかな? ちょっとだけ興味がある。まさか凶器とか?
ミツキちゃんに言われるまま掃除機をかけホコリを取り丁寧に整理整頓をする。
家もお掃除ロボットのルンルンがいればいいんだが……
最後に水拭きと乾拭きをして終了。
これで僕の部屋も多少マシになった。
やっぱり清潔感が大事だよな。
いつもこうだと健康的なんだろうが普段はやる気ないからな。
それはミツキちゃんも同じのはず。
「ありがとう。まさかここまでとは意外で…… 」
「気にしないで。私ホコリだらけの部屋にずっといたくないだけ」
おいおいそれなら客間でいいじゃないか。朝に掃除してたぞ。たぶん……
「さあ寛ぎましょう」
そう言うと躊躇なく僕のお気に入りのベットにダイブ。
嘘だろう? 冗談はやめろ! ここは不可侵の場所。決して誰も近づかせない。
でもミツキちゃんはそんなことお構いなし。もう我が物顔でいる。図々しいな。
かわいい顔していい度胸だ。これが光の妹じゃなかったら追い出してるところだ。
そんな風に余裕こいて格好つけてるとどんどんミツキちゃんのペースに。
どんどん追い込まれていく。そしてついには……
続く




