エピローグ 五年後
<エピローグ>
あれから五年が経った。
まだあの時の夢を見る。
しかしどうしてあの時助かったのか? 未だに理解できない。
ピンポーン!
あの告白作戦から一週間が経った早朝。
玄関の扉を開けるとそこにはミツキちゃんの姿が。
律儀に借りてたものを返すとやって来た。
だからまったく警戒などしてなかった。
だが次の瞬間碓氷さんと買った夫婦ナイフ。
そんなものが存在するかは別として僕たちの大切な大切な思い出のスーベニア。
それを手にしたミツキちゃんは笑顔。そこに殺気など一切感じられない。
だからって振り下ろしたら同じこと。
「何を…… 」
答えない。ミツキちゃんはただ笑っている。恐ろしいほど冷静に。
まるで夢のように。
「ほら返すよ! 」
血が…… 玄関の前は自分の血で真っ赤に染まる。紅心中完成ってね。
「ミツキ…… 」
いくら叫んでも応えようとしない。それはそうだろう。これはいつもの夢だから。
碓氷さんに現を抜かしてミツキちゃんを蔑ろにしてしまった罰。
でもこれは二人で決めたこと。僕にとってミツキちゃんは二番目に好きな人。
一番目は碓氷さんだとずっと言ってきた。それでも心変わりすることもある。
想像ではなく現実になった時に人は変わる。それはまだ人間ができてないから。
恋愛において未熟だから。実際は最初からそのつもりはなかったのだろう。
だがその言葉を真に受けて碓氷さんと幸せになってしまった。
その罪を償うのは当たり前だ。
でもちょっと待って欲しい。
ミツキちゃんの一番好きな人は光のはずだ。
それが無理だと知ってるから僕を代わりにした。
それなのになぜそこまで感情的になるのだろう?
まだ兄の親友としていくらでも関係は改善できたはずなのに。
残念だ。しかし残念だが現実では決してない。ただの夢。
僕が消えない罪の意識から見せた幻だ。
実際はこうではなかった。
「ほら返すよ! 」
そう言ってナイフを振るが脅しだけ。寸前のところで止める。
ミツキちゃんからすれば多少深くなっても僕が痛いだけだから。恐ろしい感覚。
「うわああ! 」
「もう元気! 玄関前で騒がない! ご近所迷惑でしょう? 」
母さんは呑気だ。それはそうか。誰もこの修羅場に気づいてない。
「ふふふ…… 驚いた? 」
「ああ…… それは当然だろう」
「ほらこれ借りてたナイフ。返すよ」
そう言うとキスをする。
うわ…… 怖い。もう意味が分からない。
「じゃあまた。碓氷さんによろしく」
そう言って帰って行った。
確かに借り物を返しに来ただけだった。
それがあの日の真実。
そうしてミツキちゃんを捨て碓氷さんを選ぶ。
最低な第三の山田に相応しい鬼畜ぶり。
だがそれが本当の僕なのかもしれないな。
五年後の現在。
「行ってきます! 」
何だかんだあって僕たちは今も幸せに暮らしている。
先月結婚式を挙げたばかりの新婚だ。
「待ってあんた忘れ物! 」
そう言って玄関を飛び出して行く。
あーあまた恥ずかしがってあんたになってるよ。
昔から変わらないよなその癖。かわいいけど直してもらわなくちゃ。
では改めて。
「行ってきます! 」
「行ってらっしゃい! 」
こうして今日も何事もなく平和に過ぎて行った。
<完>
この物語はフィクションです。
後記(解説)
この物語は去年末に。何作か出だしを書いてそこから二つを選んだ。その一つ。
参考文献 『クズの本懐』(アニメ)
ここからは『クズの本懐』についても述べるので見てない人はネタバレ注意!
いやあいつかはクズの本懐みたいな作品を作りたいなと考えていた。
<嫉妬に狂って殺されたい! 嫉妬が愛に変わる時>
この二つがこの物語のテーマ。
実際最初の設定では殺されるかは別として第三の山田は碓氷さんに刺されていた。
そこまでの重い愛を描きたかったので。ストーカーを美化するつもりはないが。
設定の変化はよくあることだけど。序盤から変えざるを得なかった。
どうも教室でも盛り上がらないしサークルが活きない気がして予定変更。
学校以外の放課後や休日に焦点を当てようと。そこで親友の光。
本当は予定通りなら碓氷さんが見てるところでイチャイチャして嫉妬させる。
ただそれには学校では難しい。だからソフトストーカーとなった碓氷さん。
そこでもう一人。光の妹ミツキちゃん。
当初は光に絡む女がいると言うスポークスマンの役目だった。
でもあの積極性。放っておいたら勝手に危険な関係に。
と言うことでミツキちゃんも混ぜて……
しかし元気ではなく作者の思い入れで最後はこんな風な終わりを迎えた。
始めからエンディングは決まっていたが変更することに。
メインヒロインの碓氷さんからサブヒロインのミツキちゃんに。
ただこれにも仕方ない側面があった。
もしあのまま碓氷さんと結ばれていたらミツキちゃんに殺される。
それを回避する方法がない。どうしようとなった。(中盤辺りから)
そこでクズの本懐で使っていた設定を借用。
二人は掛け替えのある相手で二番目に大好きな人。
ちょっと違うけどそんな感じ。
だからこそ平行線で交じり合おうとした訳だ。
元気とミツキちゃんが結ばれたのは確か四度目ではなく五度目。
焦らしたと言うよりもちょっとずつお互いに変化があってのこと。
花火ちゃんの代わりをミツキちゃんができても麦の代わりを第三の山田だからな。
やっぱり無謀だったかな。
そうそう花火ちゃんの代わりに華ちゃんが。お兄ちゃんを光が。
音楽教師を奏子先生が。
「どうしたの華ちゃん…… 」
「お兄ちゃん! 」
そう言えば告白するシーンも似てたかも。
一応参考までに。
もしあなたが第三の山田のようにモテなくて存在感がない場合参考にできるかも。
とにかく格好いい男の子と友だちになるのが先決。
だけどただのいい人で止まったらせっかくの恋が終わってしまう。
危険を顧みずにアタックしても無理そうだったら嫉妬させるのがいい。
ただうまく行かないと刺されるかも。それが命懸けの恋と言えなくもない。
安全策なら格好いい男の子の妹を狙うのがいい。
ミツキちゃんみたいにはいかないけど優しくしてあげると恩返しがあるかも。
問題は兄妹だと似てそこを嫌がらないこと。
両方好きになってしまえばいい。これができるかが鍵。
最後に。
どうであれ第三の山田にはこの方法しかなかった。
最悪の方法で選択かもしれないがただのクラスメイトとして埋もれたくなかった。
それがこの物語の真実。その結果五年後にミツキちゃんと結ばれた。
予告。
五月二十六日より新作。
『見習い合成師カズ君のアトリエ探しは危険が一杯! 』ファンタジー。
六月後半にも新作が。青春冒険ミステリー。
八月にも『タピタピクライシス2』続きモノ。
注:すべて予定であり変更の場合あり。
グミさん。
五月二十六日現在。




