大浴場
初顔合わせが終わった後は、食事をとって風呂の時間だった。
風呂の時間までには、私たちは二つのグループに分かれていた。先に自己紹介した4人と後に自己紹介した4人だ。先に自己紹介した4人は、揃いも揃って元老院階級の令嬢で、人間だった。私たち、つまり、アリシア、レイ、ミネルヴァ、私は、そういった人とは色々と違っていた。ミネルヴァはあちらのグループにいても良さそうな気がしたし、向こうのグループもミネルヴァを誘いたそうだったが、ミネルヴァは私のそばを離れなかった。
食事の時間中、私たち4人はアリシアの入れ替わってからの人生と、それがいかに辛いかを聞いた。聴きながら、何で私はこんなに簡単に女に順応できたんだろうなーと不思議に思った。
「魂には、男の形と女の形の二種類があってね、もちろん中間とかまったく違うのとかそういうのもあるけど、基本的には、二種類のどちらかに大別されるんだ。それで僕たちサキュバスには、そこを見抜く力があってね、魂の性別、生まれた体の性別、今の体の性別、全部わかるんだ。ね、フェニカ。全部わかっちゃん生んだよねー」
とわざわざこっちを見て言った。いやらしい笑みに見えた。
「じゃあ、俺の言うことが正しいのも分かるだろ」本人にとっては必死なんだろうが、私にとっては助け舟だった。
「分かるよー。アリシアの魂は男の形をしてるからねー。こうなると辛いよね。もし、もう今の体のままでいようと思うならいい薬があるよ。ね、フェニカ」
また突っかかってきた。それって快楽薬のことかな。
「いや、俺は戻るから関係ない」アリシアは強い語気でそう言った。
風呂の時間は、本来は自由なのだが、初日はスケジュール的に入れる時間が一時間しかなかった。
もうひとつのグループがアリシアと風呂に入ることを嫌がったので(アリシア自身も一人で入りたがった)、風呂の時間を二つに分けることにした。レイと私はアリシアと入ることを嫌がらなかったので(むしろレイは積極的にアリシアと入りたそうだった)、結局4人ずつ別れることになった。ミネルヴァはこの時も私から離れなかった。
レイはやはりアリシアに狙いを定めているようで、裸のまま抱き着いたり、胸を押し当てたりしていた。私とミネルヴァはそんな二人を横目に見ながら体を洗っていた。




