↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

22/46

他人の名前を覚えられないフェニカ

 その後は、8人で小部屋に集まってお互いに自己紹介をした。2人部屋が4つあるので、同室の2人ずつ自己紹介をすることにした。ミネルヴァとフェニカは角部屋なので最後だ。


 一人目は、マナカ。良家の子女だ。胸がでかい。

 二人目は、えーと名前聞き忘れた。良家の子女だ。

 三人目は、もう名前とかよくわからない。多分良家の子女だ。


 四人目の自己紹介を聞きながら、フェニカは思い出していた。この流れはクラス替え直後の流れ。現実世界の学校で一番苦痛な瞬間だった。

 現実世界にいたころクラス替えは苦痛だった。それまで微妙に仲良くなった友達?と離れ離れになり、また新しい友達を作らなければ何らないプレッシャー。覚えなきゃならない多すぎる情報。ここでミスると一年間ぼっちというプレッシャーがとにかく嫌だった。


 その日、フェニカは思い出した。コミュ力に支配されていた恐怖を……コミュ障に囚われていた屈辱を……。


 しかも、特待生の面々、プロフィールがあまりに似通っているのである。みんな人間で、いいとこの娘。プロフィールの内容も元老院階級らしく、家柄に関する情報ばかり。これじゃあ、わからなくてもしょうがないよね、と自分に言い聞かす。ミネルヴァとはいい関係を気付けそうだから、もうそれでいいや。などと思っていた矢先。


5人目「俺の名前はアリシア・ロミア」良家の子女には珍しい、俺という一人称に気を取られる。かなり可愛くて良い身体をした狐耳の獣人だった。「女神リベルタスの口づけによりこの身体になったが元は男だ」

 

 アリシアとは仲良くなれそうな気がした。っていうかリベルタスさま自由奔放すぎです。


 あたりはざわざわしている。そりゃそうだ。元男を名乗る奴が女子寮にいたらまずいだろう。特に最初の4人はなんか偏見に満ちた目を向けている気がする。


「幼い頃俺は幼馴染のアリシア、つまりこの身体の本来の持ち主と、地元のリベルタス神殿で遊んでいた」

 確か、リベルタス神官から聞いた話だと、リベルタス神官は自由奔放で、人が常にいるリベルタス神殿は、帝国中で帝都アウグスタにしかないらしい。だから、地方のリベルタス神殿は広くて人がいないから子どもの遊び場になりやすいそうだ。ただ、人間に絡むのが大好きで気まぐれなリベルタスさまの神殿に近づくのは人間にとっては危険なことなのだ。性格悪いからな、リベルタスさま。


「俺たち二人は、禁止されていたにもかかわらず、調子に乗ってリベルタス神殿の中を見た。そこにはとても美しい女神がいて、俺たち二人にキスをした。そして……、気がついたら……、身体が入れ替わっていたんだ」

 誰も聞いていないのにアリシアは熱く語り出した。涙滲ませてるよ。

 私にも男から女になってショックを受けていた時期があったなー。一月もたたずに終わったけど。


「アリシア……、大変だったね」ミネルヴァももらい泣きしていた。ミネルヴァもしかして涙もろいだけ? 「アリシアと入れ替わった相手はどうなったの?」ミネルヴァは聞いた。「俺の元の体の持ち主、元のアリシア、名前はアダムというんだが、そいつも一緒に入学した。すぐに会うことになるだろう」


 6人目は、明らかに人間ではなかった。小悪魔的コウモリ羽、どう見ても悪魔だ。私服の露出が多すぎるので、淫魔の類かもしれない。あ、いや、この世界に神と悪魔の概念はないんだったな。

「僕はサキュバスのレイ・リリス。性の力がないと生きていけないから、今まで入学が認められなかったけど、ついに念願叶って入学できることになったんだ。よろしくね」

 アリシアがエサなのか? そうなのか? 帝国士官学校の風紀これでいいのか? 俺っ娘の次は僕っ娘か。


 7人目にミネルヴァだ。「私はミネルヴァ・アルファ。エルフ王家本家の次女にして、お姉さま亡き今次期女王です」

 ミランダとミネルヴァそんな位高いの? 今日聞いた中で一番の驚きだった。サキュバスが入学していることよりも、アリシアが入れ替わっていたことよりも驚きだった。

「姉様がパラディオンで亡くなってから私はひたすら泣いて暮らしました。しかし、その悲しみに終止符を打ち、新しい人生を歩むために入学しました」


 そして、最後に私だ。

「私は、フェニカ・ジルバ。解放奴隷でパラディオンの生き残り、不死鳥とドラゴンを身に宿し、リベルタスさまの司教です。今はリベルタスさまの命で仇打ちやってます」

 普通に自分のプロフィール並べただけなのになんかすごそう。


「ジルバ? 解放奴隷がなんでジルバ様の姓を?」

「パラディオンの生き残り?」

「リベルタス?」

「仇打ち? 仇はもう捕まったんじゃ?」

 なんかみんなから様々な疑問が出た。


「え、えーと、じゃあ、一つ一つ質問答えます」

「なんで解放奴隷なんかが、ジルバ姓を名乗っているのですか? しかも、リベルタスの司教?」聞いてきたのは最初の方の名前覚えられなかった子だ。ドクター・ジルバはすごそうな人ではあったけど、そんなびっくりされるほどなのかなぁ?

「ドクター・アスクレス・ジルバの養子になったからです。ジルバ姓ってそんなにすごいのですか?」

「すごいのですかって……? 皇帝陛下の姓よ?」相手の顔は本気で戸惑っていた。

「こーていへいか?」


「えええええぇええぇぇえ?」私は、転生してから初めて本気で叫び声をあげた。


「えっと、私は解放奴隷で、パラディオンで生き残って、フェニックスとドラゴンの移植でドクター・ジルバに助けてもらって。そのまま養子に……」

「ドクター・アスクレス・ジルバは皇帝陛下とは家系図上は遠いけれど……。それでも、解放奴隷を養子にするなんて普通は考えられないことよ。あなた一体どう言った素性の方なの?」

「私はパラディオンの生き残りで、不死鳥(フェニックス)とドラゴンを身体に宿したものです……としか言えないのだけど」


「待ってくれ」と間に入ったのは、アリシアだった。「養子の話はどうでもいい。問題は、あなたがどうやってその若さリベルタス神官になって、どの程度リベルタスさまと親しいかということだ。俺が戻れるように口利きしてくれないか?」

「え、えーと。リベルタスさまに直接言われて司教に……。今度話す機会に聞いてみるね」

 また皆が驚いた。

「リベルタスさまから直接任命された?」とか「今度話す、ってそんな頻繁に話せるの?」とか、いろいろざわざわしている。


「お願いだ。俺もアリシアも戻りたいんだ」


「わ、わかった」私はタジタジだった。


ミネルヴァが口を開いた。

「ねえ、フェニカ、仇打ちってどういうこと? パラディオンの犯人はもう処刑されたでしょ? 下手人が他にいるの?」

「うーんと、詳しくは言えないのだけど……」詳しく話すと後が面倒くさそうだ。「リベルタスさまから言われて」全部リベルタスさまのせいにした。


 ざわざわっとした雰囲気のまま初顔合わせは進む。

キャラクターの名前を覚えられない作者

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。