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めぐりめぐって学園編スタート

 そのあとは、あっという間に手続きが進んだ。身体検査はすでに何度も受けていたため、私がやることといえば、事故にあっても構わないという同意書を書くだけだった。あとの手続きは全てドクター・ジルバがやってくれた。


 そういえば、慣れでドクター・ジルバと呼んでいるが、養子になったことで私の今の名前もジルバになった。私の名前はフェニカ・ジルバ、親の名前は、アスクレス・ジルバ。たまには、アスクレスという本名で呼んであげないと、寂しがるかもしれない。

 

 帝国士官学校は、帝都アウグスタの郊外にある。帝国医術大学校、帝国総合大学と並ぶ帝国最高峰の学校だ。卒業者には帝国士官としてのキャリアが約束されており、そのために、帝国中から寄付が集まり、金回りが良い。


 現実世界の学校とは違い、入学は一年に4回、三ヶ月毎に機会がある。また、似たような世帯の同じ世代が学ぶ場というわけではなく、出自はバラバラ、年齢も、若者という条件はつくもののいろいろで、15歳くらいは幅があった。私と同じく年齢不詳という人もいっぱいいるらしい。



 帝国暦1414年4月、私は士官学校に入学した。



 学のない私には意味のわからない校長の難解な演説や、ひとしきりの説明を受けたのち、私たちは寮に案内された。ここは、帝国士官学校特待生女子寮、別名不死鳥寮。帝国各地から両家の才媛が集う女戦士の園だった。


 私と同期の女子学生は武術科と魔術科を合わせて8人いる。まず最初に言葉を交わしたのは、同室のミネルヴァ。昔の仲間であるミランダと同じくエルフの出で、透き通るような白い肌の金髪、ミランダと同じブルーの瞳、何もかもがミランダとそっくりだった。

 同室で顔を合わせた時に、その顔をついまじまじと見つめてしまった。部屋の中には豪華なベッドが二つ。窓からは帝都が顔をのぞかせていた。

 あまりに顔を見すぎたのか「あなた、私の顔に何か付いていますか?」と問われてしまった。何だか上品な佇まいで、そこがまたミランダに似ていた。

「いえ、すみません。昔の仲間にそっくりだったもので。私は、フェニカです。宜しくお願いします」

「昔の仲間……、もしかしてフェニカさん、間違っていたら申し訳ないのですが……、あなた、噂のパラディオンの生き残りの方ですか?」私のことは噂になっているらしい。

「はい」

「ということはもしかして、昔の仲間というのは私の姉、ミランダ・アルファのことですか?」

「あなた……、ミランダの妹?」

 私は驚いて、固まった。二人の間に沈黙が訪れる。

「姉様」といってミネルヴァは泣き出してしまった。えーと、どうしようこれ。

「姉様はどのように生きて、どのように戦い、どのような最期を迎えたのでしょうか?」泣き名がらミネルヴァが尋ねた。

「ミランダは私たちパーティ『自由の翼』の大切なリーダーだった。いつもいつも私たちを呪文でサポートしてくれて……」私も涙が出てきた。

「最期は、私たちが所属していた宿ごとドラゴンの炎に焼かれたわ」

 ミネルヴァは一瞬息を飲んで泣き止んで固まり、ほんの一瞬の沈黙ののちにさらに深く泣き出した。

「姉様。姉様」ミネルヴァはミランダが大好きだったらしい。

「どうして私を置いて出て行ってしまったのですか。私もついて行きましたのに」


 しばらく泣いているのを見ながら困っていた。「あの……、ミネルヴァ?」

「すみません、フェニカさん。私としたことが。あなたもお辛いでしょうに」

「私はミランダを守れなかった。その事実はもはや覆せない。だから、私は強くなるためにこの学校に来たの。もう誰も死なせないために。私がみんなを守るから。もちろんあなたもよ。ミネルヴァ。今は泣いている場合じゃない。もう誰も死なせないために、私たちは強くならないといけないの」


「フェニカさん……」


 その後二人でミランダの思い出話をした。ミネルヴァはことあるごとにうるうるしていたが、もはや泣き出すことはなかった。

妹の登場はちょっとありきたりでしょうか?

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