文化祭四日前および現れる七不思議 #1
次の日、法明は珍しく早めに家を出た。
剣道部の朝練のある日以外は特に用事がない限り遅刻寸前に教室に顔を出す彼だが(それでもなぜか一度も遅刻していない)、今日は特に用事のある日だった。
(コウメイ・・・・・・今日はあったら一番に聞いてやるからな。まってろ)
早い話が考えるより先に体が動いてしまう系の彼が考えるのがめんどくさくなって、七不思議の件を直接コウメイに問いただそうと、早めに登校しているのだ。
法明のそんな珍しい行動のためか、朝は雨だった。正確にはこの方法を法明が思いついた昨日の夜から降っている。
しかし法明が家を出る頃には、天も飽きがきたのか雨はやみかけていた。
「全く・・・・・・そんなに珍しいことなのかよ。僕が早く登校するってことは」
珍しいことである。文化祭号の原稿をとってもそうだが、彼はあまり提出物などを早くに終わらせていることもないし、登校だって必要最小限の時刻に登校している。
つまり彼はよほどの理由がない限り早めに登校することはないのだ。
しかし彼にとって、この件はよほどのことなのだ。
歩みがだんだん早くなる。歩幅も自然と大きくなり、ついには学校へ向けて走り出していた。
学校の裏門が見えてきた。校舎にかかっている時計はまだ始業時間までは20分近くあることを告げていた。
法明は飛び込むように門をくぐると生徒玄関を目指す。
靴を履き替えるのももどかしく、上靴を片手に持ったまま階段に脚をかけた。そのまま2段飛ばしで駆け上がる。
「コウメイ!!」
自分の教室であり、またコウメイの教室でもある1年2組の戸を壊さんばかりの勢いで引きあけた。
果たして、コウメイの姿はそこにはなかった。
いつも法明が登校してくると、法明の後ろの席で本を読んでいるのだが、今日は本すら置かれていない。
まさか七不思議のことを問われるのがわかっていて休んだのか?
一瞬そんな考えが脳裏をかすめた。
しかしその次の瞬間、法明の目は公明の後ろ姿を捉えた。ベランダだった。
校庭が一望できるベランダで、コウメイは立ち尽くしていた。
「コウメイ!!聞こえてるんだろ?」
法明は語気を強めてコウメイの方に手をかけた。
しかしコウメイは特に反応せず、ただただつぶやいた。
「ノリ君、これを見たまえ」
法明は校庭を通らずに校舎に入れる裏門から入った。つまり、校庭を眺めるのはこれが初めてだ。
しかし、コウメイが
校庭を示した意味はすぐにわかった。
校庭に足跡が刻まれていた。
それも動物ではない。明らかに人間の靴のあとだ。
しかし、明らかに不可解な点がある。足跡は校庭の隅からではなくトラックに入ったあたりから始まり、校庭の真ん中でプツリと切れているのだ。
不可解だった。まるで足のない何かが気まぐれに足跡を残したようではないか。
「コウメイ・・・・・・これは・・・・・・」
「ふふ、なかなか手の込んだいたずらじゃないか」
コウメイはまだ呆然としているようだったがかろうじてそう答えた。