第11話 エピローグ
町の片隅、井戸端で、二人の女が洗濯物を絞りながら、何気ない世間話をしていた。
「そういえば、聞いた?」
「何を?」
「隣町の宿屋の若旦那、なんかやったらしいわよ」
「えっ、何それ、詳しく」
「よく知らないんだけど……なんか、すごいことをやったんですって」
「気になるわね……今度、聞いてみましょうか」
洗濯物を絞る手は止まらないまま、二人は、ごく自然に、次の話題へと移っていった。
風が、町の通りを吹き抜けていく。誰の目にも、もう糸は視えなかった。
だが、井戸端の会話から伸びた、ごく細い、名もなき糸が一本。
静かに、隣町の方角へ――いや、この世界の「外」へと、ゆらゆらと揺れながら伸びていった。
風を越え、空を抜け、文字を越えて。
糸の行き着く先には、暗がりの中で小さく灯る、青白い四角い光があった。
もっと面白い展開を。
もっとスカッとするような最後を。
もっとじれったい、次の物語を。
指先が、静かに画面をスクロールしていく。
あの広場の上空で、空腹に揺れていた「飢え」の気配と、よく似た何かが、そこにも静かに漂っていた。
糸は、その青白い光を通じて、そっと結ばれる。
風が止む。
耳元で、あるいは画面の向こう側で、微かな囁きが聞こえた気がした。
「アイツガ…ナニカ…ヤッタラシイ………」
指先は、止まらないまま、次のページへと滑っていった。
最終話までお付き合いいただき、ありがとうございます。
近況報告も併せてお読みいただければ幸いです。




