第十五話 スイーツの次に大事なもの
何処にでもいるはずの女性、桜名美姫は新たな姿であるシンデレーザー・ワイルドタイプへとその姿を変える。そんな美姫の元にある日、姉の唐科咲姫が現れて美姫に地元に帰るよう言う。それを疎ましく思う美姫だったが、咲姫にダークストーリーズの魔の手が伸び、咲姫は毒に侵されてしまう。解毒するには蛇の毒が必要であり、ホロテイルジュのメンバーである鈴木林檎はなんとか童話の三枚の蛇の葉の力を引き出して咲姫を解毒する。そして林檎は新たな姿、ポイズノーム・スネークタイプへとその姿を変える。戦いを終えた後、美姫は咲姫から指輪の秘密について重要な情報を得るのだった。
美姫の姉の咲姫が帰ってから数日、美姫は仕事の昼休み中にホロテイルジュのメンバーである林檎、そして水原夜衣魚と会っていた。
「あの、この前美姫さんのお姉さんが言っていた話なんですけど…。」
夜衣魚は美姫に、先日の咲姫の話を切り出す。咲姫は先日、美姫がしているダイヤモンドの指輪を嵌めることができなかったことを告げていた。それが美姫達ホロテイルジュのメンバーにとって気掛かりなことだった。
「実は、前に私がふざけて林檎の指輪を嵌めようとしたことがあったんですけど、その時も何故か嵌めることができなかったんです。」
「そうなの⁉」
夜衣魚の話に美姫は驚いてしまう。
「はい。この前のお姉さんの話と合わせると、やっぱり指輪は資格者を選んでいると思うんです。」
「そっか、じゃあ私がこの指輪を嵌めているのも当たり前のことじゃなかったんだ…。」
美姫は指輪の秘密に唖然としてしまう。そして美姫は自身がホロテイルジュに入ったことを、ただの偶然じゃないと感じていた。そして林檎は、ダイヤモンドの指輪についてもう一つ気になることがあった。
「そう言えば、この指輪って美姫さんの亡くなったお祖母さんの形見でしたよね?」
「うん。」
「だとしたらお祖母さんもダイヤモンドの指輪の資格者、ホロテイルジュのメンバーだったってことはないですか?」
「あ、それ!」
林檎の言葉に夜衣魚も思わず大きな声が出てしまう。しかしそれは、美姫にとって信じたくない話でもあった。
「やっぱり、お祖母ちゃんも戦ってたのかな…?優しかったあのお祖母ちゃんが…。」
「「あ…。」」
美姫の落ち込み方に、夜衣魚と林檎もまずいことを言った気持ちだった。美姫は祖母が大好きで、亡くなった時も誰よりも涙した。その祖母がホロテイルジュとしてダークストーリーズと戦っていたとは信じたくなかった。
「取り敢えず、今日のところはお開きにしましょう。また今度、洋館で調べましょう。」
「うん。」
林檎は少し曇った空気をなんとかしようと切り出す。こうして三人は解散し、各々の仕事に戻るのだった。
その日の昼頃、ホロテイルジュのメンバーの双見アラモードは大学を出て家へと帰る。すると、郵便受けに手紙が入っていた。
「はぁ…、来たか。」
アラモードはその手紙に溜め息を吐いてしまう。その手紙は母親からの物だった。アラモードの母親は定期的に手紙を出していた。勿論電話もメールもできるので逐一連絡を取ることはできる。しかしそれでも直筆の手紙を出すというのが拘りだった。
「もう…、何度も何度も…。」
アラモードは渋々手紙を手に取り読む。手紙の内容は相変わらず体の様子や大学生活を心配するという内容だった。
「気にしなくていいって言ってるのに…。」
そう言ってアラモードは手紙を引き出しに入れる。その引き出しには十何枚もの手紙が無造作に詰め込まれていた。アラモードは手紙を捨てることもできず、引き出しにしまうのが通例だった。そしてアラモードはまた家を出るのだった。
アラモードはまたスイーツショップに行ってパフェを頬張っていた。
「ん~、美味しい。」
美味しそうにパフェを頬張るアラモード。するとそこに高校生のメンバー、三浦竹月が現れる。
「またパフェを食べていらっしゃいますね、アラモードさん。」
「竹月ちゃん、学校帰り?」
「はい。」
竹月はそう言うとアラモードの近くに座る。
「はぁ…。」
「何かあったのですか?」
溜め息を吐くアラモードを竹月は心配する。そしてアラモードはゆっくりと話し出す。
「さっきお母さんから手紙が来てね、また体とか生活を心配してて。」
「あら…。」
「まあ、昔から甘い物ばっかり食べているからごもっともなんだけどね。」
アラモードは母親から手紙が届いた話を聞いた竹月は、アラモードの母親に同情していた。
「アラモードさんは、ご家族の方から甘やかされて育ったからパフェばかりを食べるようになったと以前仰っていましたよね?」
竹月はふとアラモードに尋ねる。アラモードは以前パフェばかり食べる理由を皆から聞かれた際にそう答えていた。しかし改めてその答えを聞くと、アラモードは首を傾げてしまう。
「う~ん、甘やかされてだったかな?」
「違うのですか?」
竹月は首を傾げるアラモードに尋ねる。そしてアラモードはゆっくりと話し出す。
「うん、私って昔凄くやんちゃだったんだ。それで結構家族に迷惑を掛けてたんだけど、パフェを食べたら落ち着いちゃったんだ。それからことあるごとに私が興奮したりした時にはいつもパフェを食べるようになっちゃって。」
「甘やかすというよりは、無理矢理落ち着かせるためということですか?」
「うん。まあ悪く言えば黙らせるため、みたいな?」
アラモードは少し微笑みながら言うが、竹月には少し悲しく感じられた。
「もしかしてアラモードさん、ホロテイルジュにいる時も無理してます?」
「え?何急に。」
「いえ、ただ少しそう感じられたので。アラモードさんはいつもパフェを食べて剣二さん達を困らせているように伺えたのですが、もしかしたらあまり皆さんの邪魔をしないようにしていたのかなと。」
竹月はアラモードが実はホロテイルジュでも気を遣っているのではないかと感じていた。しかしアラモードは笑いながら否定する。
「ははは、そんなんじゃないよ。パフェを食べてる時は他のことを考えずに済むのは本当だけど、私はパフェへの欲に忠実なだけだから。」
「それなら良いのですが…。」
竹月はアラモードの言葉に、未だ無理をしているような感じがした。
一方その頃、ダークストーリーズではウィッチ・シスターズが皆からまたも睨まれていた。
「お姉様、私達はもう後がないようですね…。」
「どうやらそのようね…。」
ウィッチ・シスターズの二体は危機感を覚えていた。
「お前らわかってるじゃねぇか。」
パンドラスはウィッチ・シスターズに対してそう言う。そしてパンドラスは話を続ける。
「大体シンデレーザーの姉貴から無理矢理マリスを産み出して毒を注入したとかえげつない作戦を取ったかと思えば、ポイズノームが新しい力を引き出して解毒したとかいうじゃねぇか。何だよそのハイリスクノーリターンは。寧ろマイナスじゃねぇか。」
そしてバブルガスもウィッチ・シスターズを責める。
「あんた達作戦は良いんだけど、詰めが甘いよねぇ。」
「ちょっと、自分のことを棚に上げていませんか?」
「ここにいる幹部達は皆、作戦が成功した試しがないじゃないですか。」
ウィッチ・シスターズは苦し紛れに反論する。
「まぁいいや、とりあえずまたお前らが人間界に行ってこい。」
そしてパンドラスはウィッチ・シスターズを人間界に行かせようとする。
「わ、わかりました…。」
「行きましょう、お姉様…。」
そしてウィッチ・シスターズは渋々人間界へ赴くのだった。
それから明くる日、夜衣魚と林檎は洋館にある書庫へ訪れていた。
「やっぱりここで調べるしかないよね。」
「うん。」
夜衣魚と林檎はホロテイルジュの秘密について何か情報がないか書庫で調べることにしたのだ。二人が書庫の中を歩くと、中に小学生のメンバーの赤園風布花がいることに気が付く。
「あれ?風布花ちゃん。」
「夜衣魚さん、林檎さん。」
風布花は書庫にある本を読み漁っていた。
「もしかして、調べもの?」
林檎が風布花に尋ねる。
「はい、私も美姫さんのために新しい力について何か情報がないかなと思いまして。」
「私達と一緒だね。」
夜衣魚は風布花の目的が自分達だと同じだと感じる。
「お二人も、ですか?」
風布花は夜衣魚と林檎も調べものをしようとしていることに驚く。そして三人で調べものをすることになった。
「ところでさ風布花ちゃん。」
「はい。」
夜衣魚はふと風布花に尋ねる。
「美姫さんのこと好きなの?」
「へ⁉」
風布花は突然の夜衣魚の言葉に驚いて変な声が出てしまい、思わず持っていた本を落とす。
「しまった、落としちゃった。」
風布花は慌てて本を拾う。
「ちょっと夜衣魚、ストレートだよ。」
林檎は夜衣魚を咎める。
「だって気になるじゃん。この前美姫さんと二人きりで遊園地に行ったんだよ。」
夜衣魚はずっと、風布花が先日美姫と二人きりで遊園地に行ったことが気になっていた。
「いや、気持ちはわかるけどさ…。」
林檎は夜衣魚の気持ちを汲み取りつつもやはり直接尋ねるのはどうかと感じていた。すると俯いていた風布花が口を開く。
「…はい。」
「「はい?」」
夜衣魚と林檎は風布花が小さな声で言った言葉に耳を傾けてしまう。
「だから、美姫さんのことが好きなんです!」
風布花はやけになったように叫ぶ。
「あ~、夜衣魚のせいでカミングアウトしちゃったじゃん。」
「いや、でもやっぱりそうだったじゃん。」
林檎は夜衣魚を責めるが、夜衣魚は特に悪びれない。そして夜衣魚は更に風布花に尋ねる。
「じゃあ、この前の遊園地も風布花ちゃんから誘ったんだ。」
「はい、観覧車に乗って一番上まで行ったらキスをしようと思っていたんですけど、美姫さんに気付いてもらえなくてできなかったです。」
「うん風布花ちゃん、余計なことまで言わなくていいからね。」
風布花は聞かれてもいないのに美姫とキスをしようとしたことまで話してしまう。林檎は風布花を落ち着かせる。
「ねえ林檎聞いた?キスしようとしたんだって、可愛くない?」
「あんたは興奮しない!」
夜衣魚は恋愛の話が好きなため風布花の話に興奮するが林檎はそれを強く咎める。そして林檎はしゃがんで風布花と目線を合わせて優しい口調で言う。
「あのね風布花ちゃん、恋愛は自由だけど風布花ちゃんはまだ小学生だから下手なことをすると美姫さんが犯罪者になっちゃうの。だから美姫さんをデートに誘ったりキスしたりするのは控えた方がいいかな。」
「え、そんな…。」
風布花は林檎の言葉にショックを受けてしまう。
「ちょっと林檎、酷くない?風布花ちゃんは純粋な恋愛をしているだけなんだよ。」
夜衣魚は風布花を庇うように林檎に反論する。
「いいの、風布花ちゃんがこうなったのも私のせいなんだし。」
「…え?」
林檎は風布花のことに対して責任を感じていた。風布花はその言葉を不思議に感じる。
「多分、前に風布花ちゃんが暴走した時に私が眠り毒の入った毒リンゴを食べさせたのが原因でしょ?」
「ああ、確か目覚めさせるにはキスをするって奴?…ってそっか、それで美姫さんがキスしたからか。」
林檎は自身が召喚した毒リンゴのせいで美姫が風布花にキスをせざるを得ない状況になったことで責任を感じていたのだ。
「…え?美姫さんが私にキスしてくれたのって、毒リンゴのせいなんですか?」
風布花は更に林檎の言葉にショックを受けてしまう。
「うん。だから仕方ないことだったっていうか、私がもうちょっと上手くやってれば良かったっていうか…。」
「そう…ですか…。」
風布花は林檎の言葉に更にショックを受け、持っていた本をしまう。
「あの、私もう帰ります。」
風布花は黄昏れた様子で洋館を後にする。憂いを秘めた風布花の背中に、夜衣魚と林檎はいたたまれない気持ちだった。
「ちょっと林檎、やっぱり言い過ぎだったんじゃない?」
「でも、これから脇目も振らずに美姫さんを誘ってたら大変なことになっちゃうし…。」
林檎も風布花には申し訳ない気持ちだった。しかしこのまま風布花が恋愛を続けても美姫と結ばれないことは目に見えていた。それだけでなく美姫が小学生に淫行しているという疑惑を持たれてしまう状況はどうしても避けたかった。
「夜衣魚、あとの風布花ちゃんのことは私がなんとかするから取り敢えず今はホロテイルジュについて調べよう?」
「…わかった。」
林檎は気持ちを切り替えて調べものを続けようとする。しかし二人には風布花のことが気掛かりで仕方がなかった。
一方その頃、アラモードは母親に電話をしていた。気が付けばアラモードは自分から連絡をしていなかったからだ。
「あ、お母さん?」
「あら、久し振りアラモード。」
アラモードの母親は久し振りの娘からの電話に声が少し弾んでいた。それはアラモードも少しだけ嬉しかった。しかし母親はすぐにアラモードを心配するようなことを次々に尋ねる。
「あんたちゃんと学校行ってるの?パフェ以外もちゃんと食べてる?大学でお友達できた?」
アラモードは母親からの質問責めにまたも飽き飽きしてしまう。アラモードは少し苛立つように答える。
「大学ならちゃんと行ってるから!朝と夜ならちゃんとご飯も食べてるし、あと…。」
「お友達は?」
「…絶対に大学で友達を作らなきゃいけないのかな?」
アラモードは言葉を詰まらせながら話す。
「え?」
アラモードの母親はアラモードの言葉に耳を疑ってしまう。
「そりゃそうでしょ、大学でお友達ができないと楽しくないじゃない。」
母親は大学では友達を作るものだと答える。しかしアラモードは少し思い詰めてしまう。
「そう、じゃあまた今度ね。」
「どうしたのアラモード?もしもーし!」
母親は電話越しからでも察せられるアラモードの思い詰めた声に心配してしまうが、アラモードは無理矢理電話を切ってしまう。
「はぁ…。」
アラモードは溜め息を吐いて、洋館に向かうのだった。
「おい、アラモード。」
ホロテイルジュのメンバー、桃井剣二は洋館で無心にパフェを頬張るアラモードに声を掛ける。
「お前、何かあったか?」
「何がですか?」
「いや、いつになく食べ方が荒いからな。」
剣二は普段と違うアラモードの食べ方に違和感を覚えていた。
「別に何もありませんよ。」
アラモードは少しムスッとした表情で答えるが剣二はそれでも気になっていた。そしてアラモードは剣二にふと尋ねる。
「あの剣二さん。」
「…何だ?」
「友達って必要なんですかね?」
「知るか、自分で考えろ。」
アラモードは母親から言われたことが未だに引っ掛かっていた。しかし剣二は冷たく突き放す。そんな時、剣二は美姫から連絡を受け取る。
「桃井?ウィッチ・シスターズが現れた。今から来てくれる?」
「わかった。」
剣二はすぐに洋館を出ようとする。
「アラモード。」
「剣二さん、しばらく考えてていいですか?」
剣二はアラモードも連れて行こうとするが、アラモードはまたも行こうとしない。
「いい加減にしろ。」
「考えろって言ったのは剣二さんですけど?」
「…勝手にしろ。」
剣二はアラモードに呆れてしまい、アラモードを置いて洋館を出るのだった。
街中では美姫が姿を変えたシンデレーザーがウィッチ・シスターズと戦っていた。
「もう、いつもいつも!」
「あなた達を倒すまで。」
「諦める訳には行きません!」
シンデレーザーはしつこく襲い掛かって来るウィッチ・シスターズに苛立つ。しかしウィッチ・シスターズも焦っていた。そしてシンデレーザーの元に浦賀輝弓、金山依斧、そして竹月が駆け付ける。
「みずがめ座!サファイア!浦島太郎!」
「おうし座!シトリン!金太郎!」
「おひつじ座!ガーネット!かぐや姫!」
三人はそれぞれサファイアロード、アックシトリナー、フルムーンハイヤーへとその姿を変える。
「はぁ!」
フルムーンハイヤーは無数の月を召喚して空間に散りばめ、四方八方に飛び回る。
「参ります!」
そしてそう言いながらウィッチ・シスターズに突進するが、ウィッチ・シスターズはいとも簡単に弾き返してしまう。
「「はぁ!」」
「きゃぁ!」
フルムーンハイヤーは弾き飛ばされてしまう。
「こっの~!」
怒りを覚えたサファイアロードはアックシトリナーと共に武器を持って構える。
「「は!」」
サファイアロードは弓矢を放ち、アックシトリナーは斧を振るう。しかしウィッチ・レフターは矢を掴んで、ウィッチ・ライターは斧を簡単に受け止めてしまう。
「マジ?」
「やはり幹部と言ったところか…。」
二人もウィッチ・シスターズの強さに成す術がなかった。
「私に任せて!」
シンデレーザーはそう言うと立ち上がり本を開く。
「やまねこ座!ダイヤモンド!マレーン姫!」
シンデレーザーはワイルドタイプに変わり、野性的な構えを取る。
「行くよ!」
シンデレーザーはウィッチ・シスターズに飛び掛かる。
「あら、あなたまだ戦う力が残っていたのですね。」
「当たり前でしょ!」
ウィッチ・レフターの嘲笑にも屈することなくシンデレーザーは攻撃を続ける。そして漸く剣二、夜衣魚、林檎の三人も駆けつける。
「しし座!ルビー!桃太郎!」
「うお座!アクアマリン!人魚姫!」
「さそり座!アメジスト!白雪姫!」
三人はそれぞれキルビーレオン、マーメイデスト、ポイズノームに姿を変えると一気に武器を振るう。
「はぁ、もうみんな戦ってる頃かな…。」
アラモードは洋館でそう言って思いを馳せながらパフェを食べていた。
「私、何がしたいんだろう…。」
アラモードは抽象的な悩みに頭がいっぱいだった。アラモードは友達を作ることが当たり前のことのように言われ、それに納得が行かなかったのだが、だからと言って何をするのが正解なのかわからずにいた。
「なんか、パフェ食べてもすっきりしないのは初めてだな…。」
アラモードはそう言いながらホロテイルジュに加入した時のことを思い出す。アラモードがホロテイルジュに加入したのは大学の入試に訪れていた時のことだった。入試会場に向かう途中でダークストーリーズに遭ってしまい、助けてくれたキルビーレオンが落としたオパールの指輪と本を拾ったことが切っ掛けだった。結局アラモードは指輪と本を持ったまま入試会場に向かってしまい、試験が終わった後で追いかけて来た剣二と会ってから加入を言い渡された。その時のアラモードは大学で特にしたいこともないからやってみようという心情だった。
「そう言えば…。」
アラモードはホロテイルジュに入りたての時のメンバーの皆が優しかったことを思い出す。初めての対面となったホロテイルジュのメンバーの前でもアラモードは変わらずパフェを食べていた。しかし皆は決して距離を置くようなことをしなかった。
「パフェ食べてるの?可愛い~。」
特に夜衣魚はところ構わずパフェを食べるアラモードに対して積極的に接していた。それはアラモードにとって初めてのことだった。その時アラモードは微かながらホロテイルジュに自分の居場所を感じていた。
「…やっぱりこれが、私の答えになるのかな。」
アラモードはそう言うと食べ終えたパフェのグラスを置き、皆の元へ向かうのだった。
「うわぁぁぁ!」
皆はウィッチ・シスターズの攻撃で一斉に吹き飛ばされていた。
「こうなったら…。」
「そうだね…。」
マーメイデストとポイズノームはそう言って立ち上がる。そしてマーメイデストは左手を挙げ、ポイズノームは本を開く。
「いるか座!」
「三枚の蛇の葉!」
二人はそれぞれマーメイデスト・フロートタイプとポイズノーム・スネークタイプに変わる。
「はぁぁ!」
マーメイデストは地面を海のように泳ぎ回り、イルカの尻尾でウィッチ・シスターズを攻撃する。しかウィッチ・シスターズはまたも受け止めてしまう。
「行きなさい!」
ポイズノームは本から二匹の蛇を召喚しウィッチ・シスターズを攻撃するが、ウィッチ・シスターズは弾き落としてしまう。
「そんな…。」
ポイズノームは落胆してしまう。
「今度こそ、ホロテイルジュの最後ですね。」
「一気に片付けましょう、お姉様。」
ウィッチ・シスターズはホロテイルジュの戦士七人に対して優勢になっていることに手応えを感じ、止めを刺そうとする。
「「させるか!」」
シンデレーザーとキルビーレオンはそう叫んで飛び掛かる。
「貴様らの好きにはさせない!」
「ここで諦めるのが私達だと思ってる訳?」
「しつこいですね。」
「まだ立ち向かう気ですか?」
ウィッチ・シスターズは二人をしつこく感じる。しかし二人は引き下がらなかった。すると、後ろから叫び声が聞こえる。
「シャラップ!ウィッチ・シスターズ。」
皆が後ろを振り向くと、そこにはアラモードが立っていた。
「双見アラモード、参上。」
「あなた、確かパフェで怒り狂った戦士…。」
「一体何をしに来たのですか?」
ウィッチ・シスターズの二体はアラモードの姿に苛立つ。
「私の友達にはこれ以上、指一本触れさせない!」
「アラモード…。」
キルビーレオンはアラモードの不敵な佇まいに頼もしさを感じていた。そしてアラモードは本を開く。
「ふたご座!オパール!ヘンゼルとグレーテル!」
アラモードがそう叫ぶと空が暗くなってふたご座が現れ、声が聞こえる。
「Miracle Force!」
「カモン!」
アラモードがそう叫ぶとふたご座の最輝星が光を放ち、オパールの指輪に届く。そして本から文字が飛び出し、アラモードの体を包む。やがてアラモードの体が光りを放ち、その姿を変える。
「ツインスウィーテス!」
ツインスウィーテスは名乗り、ウィッチ・シスターズに立ち向かう。
「「はぁぁ!」」
ツインスウィーテスはふたご座の力でピンクとライトブルーの二人に分身する。そして分身した二人はツインデスナイフを構えてウィッチ・シスターズを斬り付ける。
「何?」
「何なのこの力?」
ウィッチ・シスターズは突然のツインスウィーテスの攻撃に戸惑ってしまうが、分身したツインスウィーテスの二人は考える暇を与えることなく攻撃する。
「私は世界を守ることに興味はない、でも守りたいものがあるなら迷わず戦う。今の私は友達を守りたい、私の自由を認めてくれたホロテイルジュのみんなを!」
ツインスウィーテスは一人の状態に戻り、自分の決心を叫ぶ。すると本が光り輝く。
「私に新しい力が…?」
本を開くと新しい童話が刻み込まれていた。それを見たツインスウィーテスは勝機を感じ、ウィッチ・シスターズを睨み付ける。
「七羽のカラス!」
ツインスウィーテスが叫ぶと本から文字が飛び出し体を包む。そして光を放ち、ツインスウィーテスは新たな姿に変わる。
その戦士は白と黒のツートンカラーのドレスに身を包み、カラスのような翼が生えていた。
「ツインスウィーテス・クロウタイプ。」
「まさかアラモードに新しい力が…。」
「信じられない…。」
皆はツインスウィーテスの新たな姿に目を見張る。そんな視線を浴びながら、ツインスウィーテスは本を開く。
「出て来なさい!」
ツインスウィーテスがそう言うと本から七羽のカラスが召喚される。そしてカラスは皆ウィッチ・シスターズを攻撃する。
「何なのこのカラス⁉」
「憎たらしい…。」
ウィッチ・シスターズの二体は四方八方からつついて来るカラスにたじろぐ。そしてツインスウィーテスも勢いよく跳び上がり、両足でウィッチ・シスターズを蹴り付ける。
「「うわぁぁ!」」
二体は勢いよく吹き飛んでしまう。そして再びツインスウィーテスは二体を睨み付ける。
「止め行くよ!」
ツインスウィーテスがそう言うと、七羽のカラスは突然巨大化する。
「みんな、乗って!」
「え、あ、うん!」
ツインスウィーテスは後ろにいたメンバーに乗るように言う。そしてシンデレーザー達七人は巨大化したカラスにそれぞれ乗る。するとカラスはそれぞれ違う色に光る。
「うわ、光った。」
皆は突然光るカラスに驚く。
「必殺、レインボークロウズ!」
ツインスウィーテスがそう言うと、カラスは一気にウィッチ・シスターズに突撃する。
「え、嘘⁉」
皆はカラスの飛ぶスピードに驚くが、なんとかカラスの動きに合わせてそれぞれ必殺技を決める。
「レーザーストライク!」
「秘剣・桃の舞!」
「秘弓・水の一射!」
「必殺、アルデバラッシュ!」
「トライデントクロス!」
「ポイズンストラングル!」
「満月スパーキング!」
皆の必殺技が、突撃するカラスに乗って炸裂する。そしてツインスウィーテスは二本のツインデスナイフを持って切り掛かる。
「フィニッシュ!」
ウィッチ・シスターズはX字型の斬撃を受けてしまう。
「そんな…。」
「私達が…。」
その捨て台詞と共にウィッチ・シスターズは塵となって消滅する。ウィッチ・シスターズが消滅したことを確認すると皆は元の姿に戻る。
洋館に戻るホロテイルジュの一同。洋館には風布花以外の全員が揃っている。アラモードは再びパフェを食べ始める。
「お前も新しい力を引き出したか、アラモード。」
「本当、意外だよねぇ。」
剣二と輝弓はアラモードが新たな力を引き出したことに驚いていた。
「それにしても、アラモードがパフェ以外で本気出すなんて驚きだよ。」
夜衣魚はアラモードがホロテイルジュの皆のことを考えて本気を出したことが意外だった。
「まあ、私なりに色々考えたんだけど、私にとって友達はホロテイルジュのみんなだけかなって思って。」
「アラモード、一応仲間意識はあったんだ…。」
林檎はそう言って軽く驚く。
「うん、みんなのことは甘い物の次に大事だから。」
アラモードの言葉に皆は軽く転びそうになる。しかし竹月だけは満面の笑みでアラモードに寄り添う。
「良かったですアラモードさん、やはり自分に正直な方なのですね。」
竹月はアラモードがホロテイルジュで無理をしているのではないかと気掛かりだったが、アラモードが自分の気持ちに正直になっている様子を見て安堵の気持ちだった。
「まあね。」
アラモードはそう言って竹月の頭にポンと手を置く。
「まあ、これでまた新しい力を引き出したってことだね。」
「そうだな。」
美姫はまた一人、新たな力を引き出したことを喜び、剣二もそれには同意していた。
「じゃ、今日のところはもう帰ろうか。」
美姫のその一言で、ホロテイルジュの皆は解散するのだった。
その夜、美姫は祖母との思い出を夢に見ていた。それは美姫が初めて祖母の琴姫がしているダイヤモンドに興味を持った時のことだった。
「お祖母ちゃんの指輪、きれ~い。」
幼い美姫は指輪に目を輝かせていた。それを見た琴姫は嬉しそうに言う。
「そうかい、それじゃあいつか美姫にも指輪をあげよう。美姫は八月生まれだから、ペリドットの指輪が良いかねぇ。」
その言葉を聞いた美姫は、思わず夢から覚めてしまう。
「ペリドット…?」




