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天上人  作者: 鬼木 有葉
第四章 人形の館
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一.プロローグ

(あか)い月の下、砂の道を少女がひとり歩いていた。

頭に黄色いドットのナイトキャップを(かぶ)り、薄緑色の寝間着(ねまき)を着ている。

足取りはどこかおぼつかなく、ヒタヒタと小さな裸足(はだし)が砂の道に足跡(あしあと)を残していた。

ぼんやりと開かれた黒い瞳は1点を見つめている。

彼女の前には、ぎこちない動きで足を踏み出すブリキのサルの人形がいた。

やや(かたむ)きながら片足を引きずるようにして歩くサルは、時折手にしたタンバリンを(たた)いている。


「キーちゃん、どこ行くの?」


少女の(うつ)ろな声が響く。

ギッコン……ギッコン……

サルは答えることなく前を進んでいたが、不意に糸が切れたように地面に(くず)れた。


「キーちゃん……?」


彼女はサルの人形を恐る恐る抱き上げた。

塗装(とそう)の剥がれかけたサルの顔を(あか)い光が照らす。

顔を上げた少女は思わず息を()んだ。


「ここ、どこ……?」


小さな声は(やみ)に吸い込まれていった。

目の前には(あか)い月を背に、古びた煉瓦作(れんがづく)りの洋館が建っていた。

不意に目の前にそびえる黒く大きな門がゆっくりと開いた。

白い石の()()められた道が洋館に続いている。

踏み出した裸足(はだし)に石の冷たさが伝わってくる。


ガシャン――

背後の大きな音に驚いて少女は振り返った。

いつの間にか門が固く閉ざされている。


(あわ)てて門に()()り、格子(こうし)(つか)んで引っ張ってみるがびくともしない。

その時、玄関の木造りの(とびら)(きし)みながらひとりでに開いた。

中から温かい橙色(だいだいいろ)の光が(こぼ)れてきている。

鼻をくすぐる甘く香ばしい香りに少女は吸い寄せられるように中へ足を踏み入れた。

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