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天上人  作者: 鬼木 有葉
第二章 昇格試験
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プロローグ

グロリオは机の上に広げた紙を(にら)んで腕を組み、アキレアがその横から(のぞ)()んだ。

新入生の昇格試験(しょうかくしけん)が近づいている。

この試験に合格できれば、正式にスラウとラナンが正式な隊員として活動することが認められるのだ。

彼らが無事に試験に合格できるよう、(はか)らわなくてはいけない。


勿論(もちろん)、絶対に面倒を見なくてはいけないというわけではないのだが、新入生が試験を通過できなかった場合、気の遠くなるような1年を待って再受験しなくてはならない。

人数が少ないままでは任務遂行(にんむすいこう)にも支障(ししょう)をきたすということで、多くの隊では自分の隊の新人が合格できるよう特訓してやるのだ。

その為に、隊長には長たちから資料や助言を送られてくる。


「能力は平均程度。歴史学、気象学、薬草学は平均点を上回っているわね……」


アキレアが紙を読み上げた。


「実技はどうなの?」


向かい側のアイリスが(たず)ねるとライオネルがグロリオの座っているソファの後ろから首を伸ばした。


「結界術はかなり良い成績だ。武術は平均程度。強いて言えば能力がもう少し欲しいな」


「武術も能力も特訓次第でしょうね」


ティーカップを手に談話室へ来たランジアが言った。


「何か問題でもあるの?」


アキレアが(ひたい)に深い(しわ)を刻んだままのグロリオに(たず)ねると、彼は我に返って顔を上げた。


「ん? ああ……今、お前らの見ている成績表はラナンのだろ? ランジアの言った通り、特訓次第で伸びる。俺たちの中で手の空いているヤツが相手すれば、特に心配することはねぇよ」


グロリオは(こぶし)でもう1枚の紙を(たた)いた。


「問題はこれだ」


名前が書かれている(らん)の下に正七角形の図がある。

中心から(はし)に向かって線が伸びており、それぞれの分野に対する評価が示されている。


「スラウは……体術、光の能力、剣術は満点に近い評価ね。この段階でこの点数はなかなか出せないんじゃないかしら」


アイリスが感嘆(かんたん)する(となり)でアキレアが(しぶ)い顔をした。


「だけれど結界術、歴史学、気象学はぎりぎり平均越えという感じ……油断はできないわね」


「いや、それより……これはまずいだろう……」


グロリオの指差した先には、薬草学とドラゴンとの飛行技術があった。

どちらも限りなくゼロに近い。


「え?! 薬草学がこの成績?!」


グロリオの横に腰を下ろしかけていたライオネルが思わず声を上げた。

自他共(じたとも)に認める薬草学の知識と技術を()(そな)えた彼には想像し(がた)いものなのだろう。


「これ……特訓をしなきゃいけなかったグロリオよりも(ひど)いじゃないか!」


「うおっ! さりげなく古傷に触れるの、やめてくれ」


「……座学(ざがく)はからっきしだった」


階段に座っていたハイドがぼそりと(つぶや)いた。


「……っるせーな! 俺は実践派なんだよ!」


「頭が(ともな)わなければ意味は無い」


「ぐぅっ……」


「はいはい、2人ともそこまでにして」


アキレアが割って入った。


「それにしても、調合(ちょうごう)ってそんなに大変かしら? この段階だと消毒薬とか基本的なものだけよね?」


「あぁ。何て言うのかな……」


グロリオが頭を()いた。


「ほら……例えば剣術に優れた才能を持っている人って、素質(そしつ)もあるし上達も早いだろ? つまり、その……逆もあるわけで……」


極端(きょくたん)な話、薬草学を習得(しゅうとく)するだけの能力がないってことね」


「ちょっとランジアも言い過ぎのような気はするが……まぁ、そういうことだ」


「俺が教えるよ。グロリオに教えた経験もあるしね」


ライオネルが手を挙げたのでアキレアは(うなず)くと、もうひとつの(きわ)めて指数(しすう)の低い項目を指差した。


「じゃあ、任せるわ。こっちはどうするの?」


「これは……」


言いかけたグロリオは口を(つぐ)んだ。

ドラゴンについては本人とドラゴンが築く信頼関係に()るところが大きい。


「これは……後日また考えよう」


この言葉で会議はお開きになった。

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