表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/8

2-1 クリス、この世界の竜について知る

私の小説『ひきこもりのおうじさま』の後日譚のようなお話です。


・『ひきこもりのおうじさま』を未読でも読めるようにはなっています。


「クリス」とイェシュアが聞く、「竜について何か知っているか?」

「あたしの世界には、多分いなかったと思うよ?」

 イェシュアは少し驚きながらも、この世界の地図をあたしとイェシュアの前に広げた。北をイェシュアに向くように。



「この世界には、いくつか竜がいる。まずは、ここ」と、イェシュアは極東の島国を示した、「この漆の島国には、エーメテレーゼという銀色の竜とネーゲヘーイェという黒竜が争っている」

「……そこの人々、大丈夫なの?」

「あまり大丈夫ではないな。だが、それは今のところ『世界の話』とは関わりが薄い」


 少しかわいそうな言いかたをするなあ、とあたしは思った。


「そして、ここ」とイェシュアは極東の大陸国を示す、「磁器の国には『黄竜』という竜が住んでいる。地元の人々が『黄竜ホワン・ロン』とだけ呼んでいる。あまり表には出ず、自ら名乗ったこともない。なるべく人間に関わろうとはしないが、怒ると非常に暴れるそうだ。……もっとも、この世界の竜は、だいたいそのように振舞っていて、『自ら名乗る』竜は、『厄介な竜』ということになる」

「じゃ、漆の島国の二匹の竜は、『かなり厄介な竜』になるんだね」

「そうとも言える……。そして、石油の国のホルムズ海峡」とイェシュアは中東を示し、次にガロンヌを示した、「そしてガロンヌのアヴィニョンにも竜がいるが、これらの竜は非常におとなしい。というのも、眠ってばかりいる。竜の住処に人が踏み込まない限り、はな」

「……踏み込んだら?」イェシュアによれば、竜はカラスみたいに、輝くものを好み、金銀財宝をよくため込んでいる。……一攫千金を狙う悪人もいる、だろう。

「即座に食われる」


 あ、そりゃ、そうか。「……で、それだけ?」


「いや、(アバ)によれば、あと2か所に竜がいる」そして、あたしの世界で言う南アフリカを示した、「砂漠の国よりも南には、複数のねぐらを移り行く『メンデーレ』と名乗る竜がいる」

「……ということは、『厄介な竜』なんだね?」

「うむ。この竜は活動的で、砂漠の国を攻撃するよう人々を脅している。『財宝と生贄を持ってこなければお前らを食う』とな。だが」とイェシュアはロスマンを示した。


「一番厄介なのが、ここ、ロスマンの『帰らずの城』に住む邪竜ダーラヤヴァウシュ」

「……ここ、つまりはフォンタノ城の比較的近いところの城なのね。かなり厄介そうだけれども『帰らずの城』って?」


「邪竜ダーラヤヴァウシュは、ロスマン王国の委託を受けて、この国の貨幣を鋳造している」


 ……どんなドラゴンかよ、と、あたしは頭を抱えた。


「そして貨幣鋳造の労働力として、ロスマンの人々を使役している」

 あたしは、さらに頭を抱えた。


「ドヌエル1世の頃の邪竜は、まだ『邪竜』と呼ばれていなかった。食らう人間も【ダーラヤヴァウシュの定めた法律どおり】『贈収賄』『貨幣偽造』など悪質な犯罪にかかわった犯罪者のみに限られていた。だが、近年では住処をでて近隣住民を殺戮し、無実の人間をも食らうようになりだした」


 あたしは、うなだれすぎて、もう頭を地面に突っ込みそうになっている。


「……というのも、ダーラヤヴァウシュは、ドヌエル1世の時代でも、すでに高齢だった。近年、ダーラヤヴァウシュは」ここでイェシュアは念話に切り替えた、「認知症になった、らしい」


 ……おなかいっぱい。だが、イェシュアはロスマン語で続けた。


「自ら決めた定めを忘れる、昨日言ったことも忘れる。さらには、貨幣鋳造・鉱石発掘中の人間も食らう……ああ、『帰らずの城』のある山では、いろいろな鉱石が豊富に取れる。ゆえに、鉱石発掘のための要員も、『帰らずの城』で働いている。人々は、徐々に、ダーラヤヴァウシュを『邪竜』と呼ぶようになった」


「……で、『帰らずの城』って?」


「自発的な労働であろうと懲役のための労働であろうと、『その城に入ったら二度と生きて帰ることができない』という意味だ」


 あたしは頭をあげて、イェシュアを見る、「でも、あたし、関係ないよね?」


「この世界には魔素マナというものがある」


「ああ、魔法の素となるものだっけ? あたしの世界の御伽噺にも、そういうお話は、よくあったよ?」


 ここで、イェシュアは念話に切り替えた「実は、マナは、竜のSAN値維持に不可欠だ。マナが枯渇していくと、竜のSAN値が崩れ去ってしまう。世界のマナが枯渇すると世界中の竜がダーラヤヴァウシュのように認知症になってしまう」


 うおぅ……。ん? あたしと同じ表情をケファがしている? イェシュアは念話で続ける。


「実は君の世界とわれわれの世界ではコンプライアンスが異なる。ということは」


 あたしはロスマン語で遮る、「ああ、差別用語とかの基準が、あたしの元の世界とこちらでは異なる、のね? だからあたしの元の世界の差別用語が出る場合は念話に切り替えざるを得ない、ということね?」


「そうだ」とイェシュアはロスマン語に戻った。


「ですが、師よ」と、ようやくケファが口をはさんだ、「今までの話とクリサンテーミとの間に関係はないですよね?」


 クリサンテーミって何って言いかけたけど、そっか、それ、あたしのことだ、ケファえらい。


「実は」とイェシュアは言いにくそうに言葉を続ける、「そなたに作ってみせた鏡も」そして、あたしが小脇に抱える魔道具を示した、「モニターやキーボードも、私が為すアバの御業も、マナが必要だ。私が御業を使えば使うほど、また、そなたがそなたの仕事をすればするほど、世界のマナが費消される」


「じゃ、あたしが仕事を辞めて、あんたもアバの御業を辞めりゃ、これ以上マナが減ることは……」


「そうすると、そなたと私も含めた、ロスマンにいる全員が、最終的に邪竜に食われてしまう」


 あたしが首をうなだれるのは、この世界に来て何回目だろう? 「じゃ、どうすりゃいいのさ?」


「私とそなたがロスマンの兵士たちを支援し、なるべく早く、しかも効率的に、邪竜ダーラヤヴァウシュを討ち果たさねばならない」

「あたし、いやだよ、やりたくないよ……」


「もしも、やらなければ、最終的に、世界中の人が竜に食らい尽くされるだろう」


 なんて話だよ、まったく!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ