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2話 ひとつめの世界「パフェロニア」 後

さぁ、続きですね。どうぞお楽しみください。

▼▼▼ 4


僕はもしかしたらロードシェイドという組織を悪者扱いしすぎていたのかもしれない。先ほど話しかけてきた「香姫」と名乗った彼女はどこか気品があり、いうなれば「美学」のようなものがあった


城壁の外の平原。ここに来るまで「香姫」と僕たちは一緒に歩いていた。彼女は露店を見つけては人数分のお菓子や食べ物を買ってきて、一緒に食べて楽しそうにしていた


そのせいか、ここにきて僕たちの戦意はかなり低くなっていた。さらに彼女は僕たちが戦いに勝ったらこの件から手を引くとも言ってくれたし、案外話の通じる人なのかもしれない


「さて、ここなら広いですし周りに被害も及びづらいですし。そちらの準備ができ次第、いつでも始めてもらって構いませんよ」


「あらそう。私は行けるけど二人はどう?」


「あ、僕も大丈夫だよ。タストくんは?」


「え? 俺? あー、俺はそうだなぁ、うーん......なぁ、本当に戦う必要あんのかな?」


「はぁ? アンタ何言ってんのよ、さっきは戦う気満々だったくせに。芯の無い男はモテないわよ。まさかあの女に惚れたんじゃないでしょうね?」


「いや違ぇよ、たださっき一緒に歩いてて、なんか悪い奴な気がしなくてさ......」


たしかに、話に聞いていたような感じじゃなかった。接しやすいしこっちのことも気遣ってくれたし、タストくんの気持ちもわからなくは無いな


「っていうかシルシィさん、勝てる見込みはあるの? ロードシェイドの幹部って騎士団の聖騎士相当の力があるんでしょ? 今の僕は強いってわけじゃないし、シルシィさんだって......」


「うっさいわねアオイ、そんなことわかってるわよ。けど相手は十隻っていう幹部でも一番下、ワンチャンあるわ」


「そんなワンチャンに賭けるの!?」


いや、でもたしかに一番下なら......いや待てよ、そもそもロードシェイドの幹部の強さの差とか、ロードシェイドの誰を基準にして聖騎士クラスなのかわかって無くない?


「あの、シルシィさん、やっぱり僕も...」


そう言いかけた時、僕は口を閉じた


「勝たなきゃ......勝たなきゃ.......」


シルシィさんの顔が、まるで何かに追い詰められてるかのようにこわばっていた。


僕は......


「シルシィさん、大丈夫。僕が居るよ」


そう言い手を握る、シルシィさんの手は震えていて冷たかった。そして僕は思った「女性の手を唐突に触るのって良くないな」と


でも、シルシィさんは笑った


「っ、あっはははは! はぁ、記憶喪失のアンタに心配されるなんてね、でもありがと」


「べつに、僕はたいしたことしてないよ」


そう言いながらタストくんの方を見る。最初は目を逸らしていたが僕が見続けたからか、それとも決心したのか僕たちの方に小走りで来た


「あー、もういい! わかった、俺だってやってやる。このままじゃなんか俺がダサい奴みてーに思われるしな!」


「あら、でも最初に逃げようとしたじゃない。それはダサいでしょ」


「はー? それは......そうだわ、ごめん」


「あはははっ、はぁ、二人はほんとに仲良しだねぇ」


僕たちは数秒見つめ合った後、武器を抜いた


「あら、準備はよろしいですか?」


「えぇ、バッチリよ。待ってくれてありがと。さぁ、始めましょうか!」


シルシィさんがそう言った瞬間「香姫」の足元から円形に花が咲き僕たちの足元まで来る。次の瞬間、足にツタが絡まり動けなくなる。ツタはまるで意思があるかのように動く


タストくんとシルシィさんは花が咲いた瞬間にジャンプして攻撃を回避していた


「おやおや、お二方には逃げられてしまいましたわね、しかし」


そう言い「香姫」が構えた瞬間、彼女の背後に二本の巨大な木の根が生え、空中にいた二人を襲う


「タスト!」


「わかってる!」


二人は木の根を受け流しその上に乗った。僕は足元の木の根を切るのに手いっぱいで支援できない


二人は木の根の上を走り「香姫」に接近する。途中、二人の横からも木の根が生えていき、まるで鳥籠のような形が出来上がる。


そして二人が彼女に接近し武器を振り下ろそうとした時、彼女が懐から小瓶を取り出すところが見えた


「二人とも気を付けて! ソイツ何か持ってる!」


そう叫んだ時には遅く、小瓶が地面に落され黄色の鱗粉を放つ。そうすると二人の動きは止まり地面に落ちる


なんだあれ、粉? タストくん達はそれを吸った瞬間に崩れ落ち、膝をついて動けなくなっている


足元のツタは切れた。ただどうする、アイツは僕がツタを切ったことに気づいてるか? 動けばまたツタに捕まる可能性もある。それにあの小瓶をまだ隠し持ってるだろ、たぶん


彼女は倒れた二人を軽く見た後、僕の方に近寄ってきた


「おや、どうされました? ツタは切ったのでしょう? なぜ仕掛けてこないのですか?」


バレてるのか、でもまだ道はあるはず


両手を後ろに隠し討神でワイヤーの射出機を作る、そして花の下からワイヤーを伸ばし両側にある木の根に張る


「あのお二人はまだ起きるはずありませんし、ここでは分が悪い事も承知でしょう? 負けを、認めていただけますね?」


「まだ、負けてない。ていうか街に被害を出したくないとか言っておきながら、本当は自分に有利な場所に誘い込むのが目的だったなんて」


ズルい......


「あら? 被害を出したくないのは本心でしてよ、それに、これは試合ではありませんし、公平性なんてもの最初からありませんわよ」


それは......たしかにそうだ。

何も言い返せない、ヘビに睨まれているような感覚がする。怖い......


「それに最初に仕掛けてきたのはそちらでしょう? こちらの肩書だけを見て。たしかに貴方たちの他人を助けたいという信念は立派ですが。この程度の力と覚悟で、何が成せますの?」


「それは......でも、タストくんやシルシィさんは」


そう言いかけた時、香姫はトランクを槍に変形させ僕の首筋に突きつける


「己の不甲斐なさを他人に押し付けるのは辞めたらどうです? それとも貴方は自分の決断を他人のせいにするのですか?」


「いや、僕は......」


僕は、本当に自分で決めていたか? ここまでずっと流されるように生きてこなかったか? いや、流されるまま生きてきた。だって記憶喪失だし、仕方ないじゃないか


その時、彼女はとある提案をしてきた


「チャンスをあげましょう。もし次に出会った時、私に敗北を認めさせる事ができたらこの件から手を引きますわ」


「な、何言って......」


「私だって虐殺をしたいわけじゃないんですよ? それに今回の任務はいつもと違くかなりルールが厳しくて......おっと、喋りすぎましたわね。ではこれ以上情報を漏らさぬよう私は行きますわね」


そう言い彼女はお辞儀をした後、背を向けて歩いて行った。いまなら、やれる。ワイヤーで彼女の背後に急接近しナイフを構える


「本当に、愚かな人」


次の瞬間、僕は飛ばされ後ろの木の根に背中を打ち付けた。


何をされた? なんの動きも取らずに攻撃してきた? いや、見えなかった、速すぎて見えなかった。

そこには、香姫の後ろには、彼女を守るように灰色の毛並みと青色の瞳を持った狼の獣人がいた。


痛みで視界がぼやける。何も考えられない。そのまま僕は意識を手放した


▼▼▼ 5


頭が痛い、あと背中も痛い。目を開けるとそこは綺麗な部屋で、体を起こしあたりを見回すと、窓の外には星空が見えた。


ここは、泊まる予定だったあのホテルかな。なら、誰かが運んでくれたのか......


「僕はあの後......っていうかタストくんとシルシィさん! あの二人はどこに......」


そう考えていると部屋の扉が開きユウさんが入ってきた


「おー起きたか少年。誰が最初に起きるか選手権最下位だ、これをやろう」


そう言いユウさんはリンゴを渡してきた。スルメじゃないのか......って僕はなにを残念がっているんだ?


「タストとシルちゃんから話は聞いたよぉ? ロードシェイドの幹部と戦って手も足も出ず負けたんだってねぇ。あっはっはっ! いやー、無謀な事をするのも青春だねぇ」


「笑いに、来たんですか?」


「えー違うよぉ、ただ少し様子が気になってね。戦った感想とか、なんで負けたのかとか。考えてみた?」


そう言いユウさんはベッドの端に座ってきた


戦った感想は。ただ、辛かった。あんなに意気込んで勝つ気で本気でやった、なのに最初に足を引っ張って、連携すらまともに取れなくて、自分の弱さを思い知った。


「僕は、実力も経験も無くて、でもそれは仕方ないじゃないですか。僕は記憶喪失で本当は強くて、でも今は力が無いんだし負けても仕方なくて......」


「でも、戦うことを選んだのは君だろう? まさか流されるまま戦ったわけじゃないよね。それとも、キミは自分や他人が死んだ時、そうやって言い訳するのかい? なら、戦わない方が良い」


ユウさんの言ってることは、たしかにそうなのかもしれない。けど、相手は格上で僕が記憶喪失なのも事実で、だから負けるのは仕方なくて......


「お姉さんからのアドバイスだ。自分で決めた戦いに負けた挙句言い訳をするくらいなら、最初から戦わない方が良い、キミ自身の命を守るためにもね」


そう言ってユウさんはドアから出ていった


その後、一人残された部屋で僕は考え続けた。でも、やっぱり言い訳が頭の中に浮かんできて、負けた理由を考え続けていた。それじゃダメだって、教えてもらえたのに


次の日、僕たち三人はランバ船長に怒られた。勝手に戦いを仕掛けたこともそうだけど、なによりも周りの人が心配になるような事をしたのが良くないと言っていた


僕は、自分がこの先どうしたら良いかわからなくなっていった


外は激しい雨が降り、その日は部屋にこもり出かけることは無かった。


第二話 終


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