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格ゲー無双! ~~RPG系異世界に格ゲー厨がやってきた!~~  作者: としょいいん


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第08話 招かれざるお客さん

 だって、あの時はロリ巨乳の先生が「がんばるように!」って言ったから、オレとしても渾身の一撃をお披露目しただけなのに、つい先ほどまで学園長室まで連れて行かれて、あれやこれや文句を言われたのは少し納得がいかない。

 

 オレもこっちの異世界へ来て初めて使う技だったので、ちょっとだけ威力が強かったかな~なんて思ったけど、まさか心の中でイメージしたコマンド入力と強パンチが、まさかあれほどの破壊力を発揮するなんて聞いてないから!


 なのでオレ的には全く瑕疵なんて無いはずなんだけど、これ以上文句があるなら塀の他にグランドの再整備とか魔力カウンターの再購入に掛かる費用を全て請求するぞと言われたら、まだ自立していないオレは口を噤むしかなかった。


 でも何故かロリ巨乳の魔女っ子先生も一緒になってオレの隣で学園長から絞られて、しょんぼりと下を向いていたから、彼女の深〜い谷間をマジマジと観察することが出来たので良しとするか。


 そして教室へ戻ってみると、ちょうど終業のホームルームが終わったみたいでクラスメイトたちがゾロゾロと教室から出て帰宅するようだったので、オレも教室の中に置いてあるカバンとかの荷物があったので、それを取りに戻ったらアリーシャお嬢様が待ってくれていた。


◇ ◆ ◇ ◆ ◇


「タツヤ、大丈夫だった? その様子だとけっこう絞られたみたいね?」


 絞るも何もオレは無実だ。確かに【焔覇道拳(ほむらはどうけん)】があれほどの高威力だと知らずに撃ったのはオレだけど、的が遠かったし異世界あるあるでは周囲に結界魔法が張ってあるのが普通だから、ちょっと爆発するくらいなら大丈夫だと思ったんだ。だからオレは悪くない。悪いのは安全性を確保出来なかったあのロリ巨乳と王都学園なのだから。


「それで、さっきの魔法のことなんだけど……」


 やっぱり気になるよね。ほんの一昨日まで気弱で魔力ゼロだと思っていた幼馴染みが、無手で剣術上位者を秒殺した翌日に、今度は苦手だったはずの魔法を、それも学園の生徒では考えられないレベルのモノをブッパしたんだからな。


 もしさっきの【焔覇道拳(ほむらはどうけん)】をタツヤ(2P)が在籍していた下位貴族クラスでブッパしていたら、それこそ周りを取り囲まれて事情徴収されていてもおかしくない状況だ。

 なので、これまでずっと目立っていなかったオレの事を知らないこのクラスの生徒たちならいざ知らず、3歳の頃から一緒に育ったアリーシャお嬢様の目を誤魔化すのはちょっとムリそうだった。


「ですがお嬢様、ここでは他人の耳目がありますので……」


 誤魔化すにしろ、正直に話すにしろ、こんな教室の中で話せる内容ではない。別に話しても構わないかも知れないけど、オレがこの世界へ格闘スキルを授かって転生して来たと言っても誰も信じてくれないだろうし、そもそも格闘スキルなのになんで炎系魔法が仕えるの? なんて聞かれても、オレもそう言う技だからとしか説明のしようがない。


 それにオレは格闘スキルが使用できても、それぞれの技の特性や使い方のエキスパートであって、そのスキルがこの異世界のシステムにどういった仕組みが作用して発現しているかなんて、技術的な話は全く解らないからな。


 でもどうすれば使えるのかとか、どこに打ち込めば効果的なのかとか、相手の防御を掻い潜ってヒットさせるにはどのような手順が必要なのかについては、自分と相手の状況を元に幾多の選択肢の中から、自分が取るべき最適な行動を瞬時に選び取る事ができる。


 そしてその行動は脳で思い描くと同時に、脊髄を通して身体全体を操作し四肢を完全に管理下に置く事が可能だった。

 これはオレが今まで長年に渡って格ゲーで修行した結果、脳と神経細胞の反応速度が人類進化のほぼ到達点にまで近づいたんじゃないかと思ってる。


 それと昨日の決闘で判った事がある。これはオレの推測だけど、この異世界は剣と魔法のRPGみたいな世界なんだけど、そのせいかこの世界の住人たちは一般人が30FPSで、戦闘の熟練者でも60FPSくらいの処理速度と言うか、彼らの脳が身体を動かす命令密度と反射速度がそれくらいにしか見えなかった。


 ちなみにこの学園での剣術上位者だと言われていたクズのリアンでも、せいぜい35から40FPSくらいだろう。だからあの時のオレはその事実に驚いたんだ。


 それに対してオレの場合だと、今のレベルでざっと360FPSくらいの反応速度で行動を細かく制御して技を繰り出す事が出来るみたいで、この分だと少し修行すれば500FPSを超える事も現実的には可能だと思う。さすが異世界!


 これの何が凄いのか、格ゲーに興味が無い人に説明しても無駄だと思うけど、同じ1秒間でも行動可能な数と選択肢が増えると言う事なんだ。


 もっと詳しく言うなら、パンチやキックの動作に必要なフレーム数と言うのがあって、それらの動作には溜めから行動を起こして元の姿勢へと戻るまでに複数のフレームが存在するんだけど、その単位としてフレーム数ってのがある。簡単に言えばアニメーションのコマ数の事だ。


 そして技のモーション自体を早くするには、筋力や速さに関するステータスを伸ばして行けばいいんだけど、そのモーションをどれだけ細かく制御出来るかと言う部分にFPSが関わって来るとオレは考えている。


 例えば30FPSで何か必要な行動を発動させるには、最低でも30分の1フレームからしか制御出来ないが、120FPSなら120分の1フレーム毎に制御する事が可能で、その頻度でキャンセル技を発動させたり別の割り込み処理が可能になるから、もし同じ行動を30FPSで行ったとしても、120FPS側から見れば遅延(ラグ)してる様にしか見えないから、結果として120FPS側が30FPS側の行動途中に割り込んでフルボッコする事が理論上は可能になる。


 そう、オレはこの魔法世界へ転生して来た時点で、既に最強の格ゲープレイヤーだったのである。やっぱ転生部屋でハゲの中間管理職神を泣かせただけの意味はあったのだ。




「──ねぇ、私の話ちゃんと聞こえてる?」


 いかんいかん。オレは格ゲーの事になると、周りの雑音が一切聞こえなくなるスキルを持ってる漢だと忘れてはいけない。でも、ちゃんと聞いてるぞ。心の中(2P)のオレが。


「うん、ちゃんと聞こえてるから大丈夫だよ」


 いくらオレが野性味溢れる人見知り陰キャだとしても、これまでこっちの異世界でずっと暮らしてきたタツヤくん(2P)は正統派の陰キャだった。なのでその辺りの事情を考慮して言葉使いには気を使ってる。


 そしてアリーシャお嬢様に、今回の詳しい話はお屋敷へ戻ってからにしたいと伝えると、彼女もそれで良いと言ってくれたので、二人一緒に校門まで歩いて辺境伯爵家の馬車を待った。


「ねぇタツヤ、お屋敷へ戻る前に買い物へ行きたいのだけれど、いいかしら?」


 今日の予定としてはお屋敷の状況も含めて、これからオレが生活する場所の知見を深めておきたいし、オレを取り巻く人間関係なんかについても実際に話しをして相手の人となりを見ておきたかったと言うのもあるが、オレの切なる願いとしては手に入れた冒険者カードで街の外へ出て、近場の森の中で修行場所を確保しておきたかったのだが、お嬢様の「いいかしら?」は問いかけではなく命令文なのでオレに拒否権は無い。


「商店街なら歩いて行った方が、色々と商品を見られて楽しいかも知れませんね?」


「それ採用ね! お散歩しながら見て回るのもいいわ!」


 オレとアリーシャお嬢様は家から迎えに来た馬車の御者に、これから商店街へ行くから大通りにある噴水の前で待ってて欲しいと伝えてから、二人で正門前から賑やかな方向へ向かって歩き出す。

 オレたちの手荷物なら先ほど馬車のラゲッジスペースに積んでおいたから今は手ぶらだ。


 本来なら良家のご令嬢が頼りない同伴者を連れて街中へ繰り出すなんて絶対にダメな行為のはずなんだけど、この王都でも学園がある地域は特に治安が良いから、オレたち以外にも制服姿のまま出歩いてる生徒たちがそれなりに居る。


 オレは何故かこっちの世界のタツヤくん(2P)がこれまでしていたように、無意識に彼女のやや斜め後ろを歩いてしまう。まるで付き人のように。


「昨日は私のために頑張ってくれたから、何かプレゼントしたいんだけど何がいいかしら?」


 振り向いたお嬢様がオレの手を取って強引に引き寄せるから、彼女と肩が並んでしまった。以前のオレ(2P)であれば、今の状況ならきっと恥ずかしくて下を向いていただろうな。もったいない。


 でも今のオレなら大丈夫だ。何故かって? 今でこそ格ゲー厨のオレだが、ここに至るまではほぼ全てのジャンルに手を出していたから、その中には当然のように美女や美少女だらけのRPGとかSLGなんかもあった訳で、こっちの世界の初心なタツヤくん(2P)より美女や美少女に対する耐性が高いのだ。(当社比による)


 もちろんVR(仮想現実)空間の中での話だけど、最近のAI技術は本当に賢いからリアルな美女がまるで本当に生きていて、知り合ってからこれまでの会話とか一緒に行動した結果も人間関係に反映されるから、鑑定で調べないと相手が生身かどうか判らないレベルまで技術が進歩していた。


 そんな電脳世界で人生のほぼ全てを過ごして来たオレにとって、美男美女揃いのこっちの異世界は、もう何の違和感も無く溶け込んでいける感じしかしない。もうオレしか勝たん。


 いつも行動と言動が以前のオレ(2P)に引っ張られ勝ちなオレではあるが、アリーシャお嬢様という『どストライク』な美少女から握られた手を、痛くない程度に加減してギュッと握り返すくらいは朝飯前なんだ。ザコ(2P)とは違うのだよ、ザコ(2P)とは。


 以前なら恥ずかしそうに離すはずの手を、逆に握り返されたのを見たお嬢様が少しだけ驚いた表情を見せる。

 でも彼女はその手を離さずに嬉しそうな笑顔を見せてくれたから、なぜかオレも嬉しい気持ちになる。ちょっと恥ずかしいけど相手に悟られたら負けだな。


 そんなしょーもない事を考えながら歩いていると、学園は遥か遠くにあり見えない所まで来てしまったみたいで徐々にだが辺りの様子に変化が訪れる。それは学園から離れるほど商店が増えてきて、それと同時に人通りも多くなってきたのでこの辺りから商業区になったのだと判る。街の景気は悪くなさそうだな。


「あ、そうだ。まだ早い時間だから、今日は教会へ寄ってもいいかしら?」


 辺境伯爵家も王国貴族の一員と言う事で『ノブレス・オブリージュ』を家訓の一つとしているから、ここ王都でも教会への寄付を毎年行っている。彼女のお父上もお嬢様が小さな子供の頃から教会が運営している孤児院も良く訪問をされていたので、大きくなったアリーシャお嬢様も時間に余裕がある時は時々顔を見せに行ってる。オレを引き連れて。


 オレは『持たざる者』の側なので遠慮したかったんだけど、かと言って良家のご令嬢をたった一人で行かせる訳にも行かず、元のオレ(2P)も自分が護衛になれるとは考えていないが、それでもイザと言う時は自分を盾にしてでも、お嬢様を逃がす時間だけは稼ぐ覚悟だったみたいだ。


 なるほど、あいつが持っていた【根性スキル】は文字通り、努力と根性で手に入れたんだな。


 でも教会と言えば街中の一等地に広大な敷地を構えて、無駄に階高の高い白亜の建物をイメージしがちだが、孤児院が併設されているような貧乏な教会は街外れに建ってる事が多い。

 そんな教会へ向かって歩き出せば、今度は先ほどまでの周りの喧騒がウソのように引いて行き辺りは次第に建物が古くて侘しくなって来る。


 オレは辺りに漂って来るテンプレの臭いを嗅ぎつけ、トラブルの種がどこから降って湧いて来るのかと、辺りを注意深く警戒しながら進んでいた。今までお嬢様の手を握っていた右手を失礼させて頂いて、今度は彼女をエスコートするようにオレが一歩前を歩く。


 オレの視界にはいつもAR(拡張現実)で周りの人のHPヒットポイントゲージがグリーンで表示されており、そのゲージの直ぐ上には名前も表示されているから、追加表示のボタンをタップすれば種族や年齢、それにLVレベルなんかも判るようになっている。


 オレの場合だとHPゲージの下にはSPスキルポイントゲージがHPより細いバーでイエロー表示されているけど、オレ以外の人はみんなブルーのMPマジックポイント表示になってるから、こっちの異世界の住人さんたちは皆が多かれ少なかれ魔法を使える事が判る。ま、うらやましくなんて無いけどな。本当だぞ。


 それとつい先ほど気が付いたんだけど、いつの間にか視界の左上の端っこにの所に360度のMAPが表示されるようになっているのは、オレがお嬢様と歩きながら色々とパネルをタップしまくっていたのが原因だろう。

 今となっては設定画面のどこを触ったのか覚えていないし、これはこれで便利な機能がアクティブになったんだから無理に戻さなくても良いと結論付けた。


 別にMAPの表示設定パネルを探すのが面倒だとかでは無くて、こっちの方がお嬢様を護衛するのには便利だと思ったからだ。格ゲー画面にMAP表示なんてありえないとか言うんじゃないぞ? オレだってシンプルな方が好みなんだけど、今はもうそんな事に拘ってる場合では無いんだ。何故かって?


 ほら、見てみろ。MAPの端に赤色のマーカー表示が3つも現れてやがる。大抵の場合だと赤色で表示されるのが敵だというのはRPGでは常識なんだ。

 オレは格ゲーのシンプルな画面をこよなく愛してはいるが、便利な機能は進んで実装したいと考えるリベラル派でもある。


 赤いマーカーは前から2つで後ろに1つ。まだ学生のオレとお嬢様の二人だけなら、たった3人の賊でも十分だと思ったのだろうが、それが大間違いだったとこれから教えてやろう。


 何しろ近距離格闘に限ればオレの戦闘力は軽く53万を突破しているはずだし、先ほどお嬢様のMPゲージを見た時は鳥肌が立ったね。

 何しろ熟練冒険者の魔法職でもMPが100程度あれば多い方で、その数値の3倍もあれば宮廷魔術師の域に達していると言われる。これは先ほどから王都の通りを行き交う人々を見ながら思った感想なので、それほど大きくズレていると言う事は無いはずだ。


 そんな中で際立ったのがアリーシャお嬢様のMPの多さは何と9999。この歳で既にカンストしてるとか、さすが魔法職最上位に数えられる【聖女】様だと思ったよ。もし彼女が本気で魔法を使えばオレより強力なユニットである事は間違いない。


 神聖系統の魔法には結界や治癒の他にも、種類は限定されるけど攻撃魔法もあったはずだから、お嬢様が将来的に訓練を積んで熟練の魔術師へと成長したなら、オレの拳が届く範囲まで近づける気がしない。


 でもお嬢様は辺境伯爵家で大切に育てられてきたから圧倒的に『実線経験』が不足してると思うから、彼女のポテンシャルを100パーセント発揮させる為には、それ相応の長い修行期間(経験値稼ぎ)が必要だと思うんだけど、良家のお嬢様が汗臭いオッサンどもが屯するダンジョンに通ったりする事は無いので、これまで身体を鍛えるチャンスに恵まれなかったんじゃないかと思っている。


 でもそれにしては、こっちの異世界のタツヤ(2P)の記憶にある彼女はお転婆で、とても深窓の令嬢といったイメージでは無く、どちらかと言えば引っ込み思案なタツヤ(2P)を守ってくれる、ガキ大将みたいなシーンばかりが思い出されるのは何故なんだろう?


 オレが知ってるRPGでは良く『隠し職業』なんてのがあったんだけど、もしかしてアリーシャお嬢様の本当の職業は【聖女】ではなく別の何かの可能性は大いにある。でもさすがに他人の隠しステータスまでは見えないから、これ以上は推測の域を出ない。


 そんな事を考えていると誰も居なくなった通りの向こうから、招かれざるお客さんどもがやって来たのが見えた。

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