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婚約破棄された伯爵令嬢ですが、追放先の辺境で聖獣に愛され過ぎて困っています  作者: 扇風機と思ったらサーキュレーター


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覚醒

ルナが突然大きくなり始めたため、リディアは山賊の拠点から動くことができなくなった。

そこで、ガロと一緒にヴァルハルゼンの謀略についてヴォルドや山賊の主立った者たちと話し合うことが多くなった。

そうは言っても、山賊にはなかなかピンと来ないようだ。


確かに今ハッキリしているのは北の国境の兵力削減、そして兵糧運搬兵が不相応な金を手にしたことだけ。

その他ヴァルハルゼン領内での兵糧の動きや兵の配置にも怪しい部分はありそうだが、それはまだユリウスが調査中だ。

リディア自身の追放にもヴァルハルゼンが絡んでいるとユリウスは見ているようだが、リディアには確信は持てない(理不尽だったとは思うが)。


しかし、リディアとガロは不穏な空気を感じ取っている。

だから、ここに味方を作っておきたかった。


ヴォルドはリディアを気に入っているので、味方になるのはやぶさかではない。

だが、なかなか真剣みを持ってくれないのだ。

ルナの成長によってリディアがここに留まってくれていることが嬉しい、という感情が一番大きいように思える。


その日の夜も、ヴァルハルゼンの謀略やその日の晩御飯の感想、王子の婚約者だった頃のヴァルハルゼン王グラウベルトの行いやリディアのかわいいところなどについて話し合っていると(要は少しお酒を飲んで与太話をしていただけだが)、見張りが鐘を鳴らしながら「何だあれは!」と大声で叫んだ。


ヴォルドとその手下が見張り台に上ると、松明の列が蛇のように山道を登ってくるのが見えた。


「あれはグリモー・ハルデン侯爵の旗印!」


ガロが叫ぶ。


「なぜグリモーが?」


ヴォルドが首をかしげる。

領主が山賊を討伐すること自体は理解できないことではない。

面倒なうえに山に慣れている山賊相手に後れを取ることも多いため、あまり手を出さない領主が多いだけだ。

だが、ここはグリモー・ハルデン侯爵の領地ではない。


応援を頼まれたという可能性もあるが、


「あの砦を見られたから、と考えるのが自然じゃねえか?」


ガロがヴォルドに声をかける。


「ということはやっぱりあの砦には裏があるってことか」


そう言うとヴォルドは即座に弓を手にして仲間に声をかけた。


「慌てるな! ここは俺たちの縄張りだ、迎え撃つぞ!」


山賊たちは、自分たちが討伐され得る存在だとわかっていたため、様々な仕掛けを作っていた。


岩が転がり、足元の土が崩れ、壁が倒れる。

敵はなかなか砦に近づくこともできなかった。


だが、この軍の指揮官は諦めなかった。

何よりあの砦の秘密を守るためなので、「1人も逃すな」と厳命されているのだ。

そして、そのための兵力も与えられている。


「怯むな!数はこちらの方が多いんだ!いずれ仕掛けも尽きる!」


そう叫ぶと、敵の勢いが盛り返した。


そして、その言葉は正しかった。

それなりの備えはしているが、相手の数が多い。

山賊討伐に駆り出す兵力ではない。


それを感じると、ヴォルドも


「あの砦はやっぱりヴァルハルゼンの……」


と思わざるを得なかった。



その頃。

拠点の奥、焚き火の陰でリディアはルナの横に膝をついていた。

眠り続ける聖獣の体は、さらに大きさを増している。


リディアも体を鍛えてはいるが、まだまだ足手まといでしかない。

女性の中では戦える方にはなったが、前線に出たらガロやヴォルドに心配をかけるだろう。

何よりも今は、ルナを守りたい。


「その程度の力は……まだないか」


自嘲気味にリディアがつぶやいたその時、叫び声が聞こえた。


それを油断というのは酷だろう。それでも、前からの敵に気を取られ過ぎた。

侯爵の兵は隠し砦のことを知っている人間を消し去ろうとしている。だから、一人も逃がすつもりはない。

つまり、包囲して山賊を全員殺すつもりなのだ。


ガロとヴォルドがその可能性に気づいても、人数の問題で後ろにまでそんなに兵を回すことはできない。


拠点の裏に回った兵が、続々と中に入ってくる。


リディアは、ルナを守るように立ちはだかった。

周りには、さっき叫び声をあげた男を含めて数人しかいない。


「1人として逃がすな!」


敵兵の一人がそう叫んだ後、敵は統率された動きで斬りかかってきた。

短剣を構えたリディアの前にも剣を振りかざした兵が迫る。


その瞬間――。

眩い光が拠点全体を包み込んだ。

轟くような咆哮が山を揺らし、兵も山賊も一瞬動きを止める。


「な、なんだ!?」

「何が起こった?」


その時、ルナが目を開いた。

その姿はすでに大きく人の背丈を超え、銀の毛並みが光を散らしている。

リディアを襲った敵兵は、その巨大な尾によって吹き飛んだ。


リディアは、自分の前に立つその獣を見上げた。


(ルナ……また私を)


恐怖の視線を向ける侯爵軍の兵。

搦手に人手を割く余裕のない山賊に比べると、明らかに兵力は多い。

だが、その行く手に立ちはだかる聖獣を前に立ちすくむしかなかった。


リディアは強くなろうと努力をしています。ですが、決して筋肉ムキムキにはなりません。

茅田砂胡さん作品じゃないんだから(あの方の作品もムキムキ女性は多くないか?面白いのでぜひ読んでください)。多分一般男性を数人倒せる程度に落ち着くかと思います。

誰こいつ?って思う登場人物がいたら感想に書いて下さい。説明させていただきます。ユリウスは1週間ほど前の37話で出たけど、忘れられても仕方ないとは思います。

お読みいただきありがとうございます。

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