再び謁見タイム
「な?エリクは必ず来るって言っただろ?」
そう言ったあと、ヴァート陛下は片手を上げ前回と同様にみんなが退出した。非公式の合図なのだろうか。
謁見の間に呼ばれたお父様は不機嫌な顔と態度を隠そうともせず、隣に立っている。手を繋いだまま……。
「あんな手紙送っといてよく言うよ。それで?」
「テリブル伯爵は予想通り隣国に人身売買を行っていた。足が付かないような者ばかり狙っていたようだな。だが、売られた者は皆壊れてしまっている。悔しいけど証拠が不十分すぎて隣国へは何もお咎めなしさ。テリブル伯爵に対しては証拠が充分すぎるほど揃っていたから執行は近々かな。娘に関しては人口増加に貢献してもらうことにした。まだ数年先だけどな。」
エリクがため息をつく。
「本題は?」
ヴァート陛下はやれやれ、といった感じで話し出す。
「せっかちだねぇ。関わったから気になるかと思って報告してあげてるのに。」
「ゴミ共の末路など興味がない。」
うわぁ、辛辣。家でいつもニコニコしているお父様しか知らなかったから、なんか新鮮。
「まぁいいや。それで本題だけど……。君の愛娘に闇魔法をかけた男が見付からないんだ。アグリー嬢の婚約者でも、伯爵家の使用人でもなかった。アグリー嬢本人に聞いても知らないみたいだった。火の魔法を使った奴は……森で亡くなっていた。まぁどっちにしろ女性に危害を加えようとした男に未来なんて訪れないけどな。」
それを聞いたお父様がなにやら考え込んでいる。
「……魔導国。」
「あぁ、私もその線じゃないかなと思っている。」
何だろ、そのすごそうな名前の国は。すっごい気になる……。お父様に聞いてもいいのか、チラッと見ると目が合ってしまう。
「メリト国と言ってな、魔法至上主義な国なんだ。」
「そうそう、魔力と使える魔法が強ければ強いほど権力を持てる国だな。低魔力者に対して差別も酷いと有名でな、そんな国だから『魔導国』と呼ばれている。」
簡潔に教えてくれたお父様の言葉に理解出来てなさそうな私を見て、ヴァート陛下はわかりやすく教えてくれる。
「なぜアイリスを狙う。」
あ、それ私も思った。ほとんど外にも出ないのにね。
「それがわからないんだ。なんせあそこは閉鎖的な国で情報があまりない。諜報員からもこれといった情報が入っていない。」
知らない間に狙われてるとか、なんか怖い。でも、女性が少ない世界なら当たり前のことなのかな。
全員で黙り込んでいると、ヴァート陛下が私を見てニッコリと笑う。 大人のロイヤルスマイルはフェクト殿下と比べてさらに色気が増しているせいで、もじもじと照れてしまう。
「何その反応!!くぅ…こんなに可愛い子が義理の娘になるなんて。」
「なにを寝ぼけたことを。たかが婚約者、まだ他人だ!!」
そう、今回の手紙と一緒にフェクト殿下が婚約者に加わることを記した正式な書面が一緒に同封されていたらしい。
「というわけで、ヴァート父様って呼んでくれ。私もアイリスと呼ばせてもらう。」
「は…はい、ヴァート父様。」
国王陛下なのにいいのかな? チラチラと見てくるお父様をとりあえず無視して要望に応える。
「――ッイイ!!実にイイ!!」
ヴァート父様が片手で顔を覆い、天に仰いだままなにやら呟いている。
「アイリス、こいつの息子が嫌になったらすぐに言うんだぞ。すぐに解消させてやるからな。」
「こらこら、すぐに解消させようとするんじゃない。息子にはそうならないように頑張らせるさ。」
クルーエル父様とまた違った仲の良さが伝わって、思わず微笑んでしまう。
「お父様、ヴァート父様は国王陛下ですよ?あまり言うと不敬になりますよ?」
そう、冗談っぽく言ってみる。
「なるわけないだろう。」
「エリクに対してはならないな。」
と、二人してキョトンとした顔で言ってくる。あれ?どういうこと?
「エリク、アイリスに何も教えていないのか?」
呆れたように聞く。
「いや、まぁ。それは……学ぶことは本人の自由にさせたくて……。」
今までの勢いがなくなったように、お父様は語尾が小さくなる。
それを見てヴァートはため息をつき、アイリスに目を合わす。
「エリクは爵位は辺境伯なんだが、通常の辺境伯と違って王族と同等の権限を持つ。」
え?辺境伯なのに? びっくりしてお父様を見上げる。
「そもそも私は通常の権限でいいと言ったんだが……。」
「そんなわけにはいかないだろう。エリクはこの国に不可欠な存在だからな。」
よくわかっていない私にお父様は頭を撫でだす。
「たくさんのゴミ掃除をしたらこうなってしまっただけだよ。」
今までのゴミという扱いが、ニコニコしながら話す内容ではないような気がする……。
「一人で国を潰しておいてよく言うよ……。」
「若気の至りだ。」
えぇーーー?!なにがあったの?!
届いた手紙には要約すると
『来ないと半年帰れなくなるような仕事をさせるぞ』
という内容が書いてありました。
更新遅くて申し訳ございません ;つД`) 気長に待っていただけると助かります。




