謁見タイム
「謁見の準備が整いましたので、どうぞこちらへ。」
クレバーが私をお姫様抱っこした状態で歩いて行く。
え?!謁見? なにも聞いてないんだけど!! どうしよ、作法なんか全くわかんない!!物語とかと同じなら声が掛かるまで頭を上げたら駄目で、許可なく喋ったら駄目とかだよね。カーテシーってどのタイミングでするの?!
「ク…クレバー、私マナーとか作法知らない!!」
「大丈夫、女性には必要ないでしょ?」
あぁ、この感じ……従者のオーディとしたやり取りを思い出す……。
遠い目になりながら、大人しく運ばれる。さすがにこのままで入るのは駄目な気がするから下ろしてもらおう。マナーは……もうなるようになれ!!!!
「おもてを上げよ」
わぁ!!王様がかなりのイケメン!!金髪碧眼のザ・王子様な感じ。フェクト殿下の父親なのかな?雰囲気が似てて大人にしたらこんな感じなのかなって想像すると少し照れてしまう。 隣に並んでる二人は誰だろう。王様に負けないぐらいのイケメンだけど色合いが違う。
「此度の協力感謝する。幼い其方らには酷だっただろうが、お陰で長年見せなかった尻尾を出したのだ。」
「いえ、この国の貴族として当然のことです。」
クレバーが緊張せず発言してる……。クルーエル父様が宰相って言ってたし、こういう場に慣れているのかな。
王様が片手を上げると、色んなところに待機していた人達が退出していく。この場には王様と隣に並んでいる二人と、私とクレバーだけになった。
「これより非公式の場とする。楽にせよ。」
いきなりどうしたんだろう。楽にせよって言われても楽に出来るわけないよ!!
「ほう、君がエリクの娘か。なかなか見せんから奴の妄想かと思っとったわ!」
王様めっちゃ砕けて喋ってくるーーー!! さっきとのギャップが凄い。とりあえず挨拶しないと。
「はい、アイリス・ソードと申します。」
お披露目パーティーで覚えたカーテシーを披露する。
「なるほどなるほど、こりゃエリクが隠したくなるのもわかる。」
「兄上、慣れていない者からするとそのギャップはなかなか脳内がおかしくなるというものだよ。」
隣に居たピンクの髪をした男性が話す。
兄上?!ってことは王様の弟!! もう一人の茶髪の男性も弟ってことかな……王弟が二人もなぜ……。
「あぁ、紹介していなかったな。私はヴァート。この二人は私の弟だ。桃色の髪をしているのがセカン。茶色の髪がディースだ。みんな、エリクの娘というのを見たくてな。」
「兄上がエリク殿と親友でね。よく話を聞いていた身としては気になったのさ。」
ピンクの髪のセカン王弟殿下がこっちにウインクしながら話す。 茶目っ気がある人だなぁ。 クスッと笑ってしまう。
「…………まぁ…そうだな……。」
茶色の髪のディース王弟殿下が腕を組んで下を向いたまま答える。 すごく無口な人?もしかして私の印象が悪かったのかな?
「ディースはアイリス嬢が思ったより可愛くて照れているだけだから気にしなくていいよ。」
セカン王弟殿下がディース王弟殿下の肩に腕を乗せながらニッコリ笑う。
よく見るとディース王弟殿下が耳を赤くしてそっぽ向いている。かなり年上のはずなのにちょっと可愛いと思ってしまった。あれはツンデレの素質あるな、と脳内でニヤニヤしておく。
「アイリス!!」
勢いよく扉が開き、無遠慮に入ってくる。
「お父様!!」
1ヶ月ぶりに会う父親に嬉しくて駆け寄って抱き着く。 あぁ、安心する。 もう離れたくないというように強くしがみ付く。
「ヴァート、娘の保護感謝する。では!」
スタスタと私を抱えたまま歩き出す。
突然のことに全員が呆気にとられた。




