王族の食べるご飯は美味しい
初めて人の姿に戻ってから1週間が経った。 もう人に戻っている時間の方が長くなってきてる。フェクト殿下の私室に籠っているけど、側近の人が出入りするだけでほとんど一人で寝て過ごしている。いいのかな、こんなダラけて過ごしても。
「失礼致します。夕食をお持ちしました。」
ノックと共に側近の人が私の食事を運んでくれる。 王族が居てるだけあってご飯がめちゃくちゃ美味しいの!! 毎日の食事が楽しみになってる。
「いつもありがとうございます。」
ニッコリと笑顔でお礼を言う。私がここから出られないから、いつも彼がここに運んでくれたり世話をしてくれているもんね。
「ぐふっ!!幸せすぎる……殿下の側近でよかった。」
仕事中に話しかけたら不味かったのかな。胸を押さえて壁に手を当てたまま動かなくなってしまった。それよりも、ご飯早く食べてしまおっと。 食べ終わるまで待機してくれるから申し訳ないんだよね。
「美味しい……!!」
思わず笑顔になってしまう。 豚の時は手が使えないからフェクト殿下や側近の人に食べさせてもらっていたけど、やっぱり自分で食べないと食べた気にならなかったんだよね。豚だけど、恥ずかしいし……。
「はぁ……尊い……。」
本当は待機しなくても構わないのに、アイリスが美味しそうに食べる姿を見る為だけに待機しているのであった。
◇◇◇◇
「なるほど。そういうことでしたか。見付からないのも道理です。」
宰相のクルーエルは納得したように頷いた。
「大切なものを奪われたと報告が上がっていたが、大切なものとはなんだ?」
「息子の婚約者ですよ。フェクト殿下が先程おっしゃった闇魔法で姿を変えられた彼女のことです。テリブル伯爵家のお茶会に呼ばれてから、雑なアリバイと共に消息不明になっていたのですよ。」
「――っ本当か?!」
「どうしたのですか?そんなに慌てて。でも、これで息子には良い知らせが出来そうです。いなくなってから相手を殺す勢いで動いてましたから。少しは冷静になりそうです。」
クソ!!まさかこの宰相の息子の婚約者だとは……。あの天使のような彼女に婚約者がいないはずないのに一緒に過ごすことが嬉しすぎて考えが及ばなかった。
「あぁ、フェクト殿下、もしかして彼女が欲しくなりました?運良く私の息子が彼女の筆頭婚約者なのですよ。」
わかっていてあえて聞いてくるところが憎らしい。
「そうだ。彼女が欲しい。クレバーと話が出来る機会を作ってくれないか。」
「承知しました。ですが、あくまで話をする機会を与えるだけであって内容までは強要できませんよ。」
「わかっている。私欲に権力を振りかざすほど馬鹿じゃない。」
「さすがは殿下。あの方とは違いますね。そんな殿下に情報を。エリクが今回の件で動いています。」
「なんだと?!すまない!父上に会いに行く。情報に感謝する。」
「いえいえ、では私もこれで。」
◇◇◇◇
部屋でボーっとしていたら、ノックの音が聞こえる。でも、この部屋は私の部屋じゃないから何も反応出来ないんだよね。
「失礼致します。お客様がお見えです。特別にこちらに来て頂いていますので、何か御座いましたら扉の前で声をお掛けください。」
側近さんは淡々と伝えると、部屋から出ていく。すると入れ替わりで誰かが部屋に入ってくる。
「やぁ、アイリス。大丈夫だったかい?」
入ってきた人物は、緑の髪に紫の瞳。長い髪をひとつに纏めて眼鏡をかけている。 この知的イケメンはクルーエル父様だ!!
「クルーエル父様!!」
知ってる人がいて嬉しくて、思わず駆け寄って抱き着く。
「おやおや、可愛いことをしてくれる。怖い思いをしたね。もう大丈夫だよ。あの腐りきったゴミ共は私がしっかりと、生まれてきたことを後悔するぐらい、徹底的に潰してあげるから。」
私の頭を優しく撫でながら笑顔で怖いことを言っている。クルーエル父様は怒らせたら駄目な人だ。宰相だし、どんな手でも使ってきそう……。
「さぁ、アイリス。あまり時間がないんだ。念のためにこれまでの事を教えてくれるかい?」
「わかりました!えっと――。」
側近さんはポーカーフェイスでアイリスを愛でています(笑)
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