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束の間の人間

 「す…すまない!!女性とは思わず配慮に欠けていた。」

 あの後、すぐにシーツに包まると正常に戻ったフェクト殿下が跪いて頭を下げた状態だ。


 「頭を上げて下さい!!私もまさか裸とは思わず騒いでしまいましたし……。」


 王族を跪かせるのは不味いんじゃないかな。 そもそも、フェクト殿下は男だと思っていたってことだよね。 同性なのにあんな冗談するんだ……。 腐の人が喜びそうな展開だったなぁ。


 「――わっ!私が君の責任をとろう!!私では不服に思うかもしれないが……。」


 「いえいえ!!気にしなくても大丈夫です。事故みたいなものですし。」


 こんなことで王族を婚約者にするのはだめでしょ。それに王族は女性から選べないって聞いたし、責任で選んでもらうのはちょっと違う気がする。自分が好きになった人と婚約してほしいよね。 それに王妃とか大変そうだから私にはちょっとね。


 「私の事が気に入らないのだろうか。」


 シュンっと効果音がしそうな明らかに落ち込んだ空気を醸している。 この2週間ぐらい一緒に過ごしていたからわかる。最初は威圧感があったり冷たい人かなって思ったけど、相手を気遣える思いやりがある人だ。


 「いえ、嫌いではないのですが……先程のことは忘れて頂ければ充分ですので責任をとらなくても大丈夫ですよ。」


 「わかった。今はとりあえず引こう。だが、明日からは君を口説くので覚悟していてほしい。」


 「――ッあ……あの、でも……その……。」

 なんて言っていいかわかんないよーー!! アイリスは顔を真っ赤にして口ごもってしまう。




 「ぐっ!!この様な女性が存在していたとは……。」




 どうしよう。フェクト殿下がなぜか急に胸を押さえて蹲りだした。もしかして持病かなにかあったのかな。

 心配していると、落ち着いたのかフェクト殿下がゆっくりと立ち上がり姿勢を正す。


 「すまない、見苦しいものをお見せした。病気ではないから安心してほしい。私はこの国の第一王子フェクトという。よければ君の名前を教えてもらえないだろうか。」

 そういえば、私は豚のときの情報で一方的に知っていたけど自己紹介がまだだったよね。




 「はい、わかりました。私は――。」


 『アイリス・ソードと申します。』「ブヒヒブヒ!」

 あれ?もう戻っちゃった。初めは短時間って言っていたし、仕方ないか。


 「時間切れのようだ。」

 フェクト殿下は丁寧にベッドを整えると、私を寝かせてくれる。


 「すまない。女性をここで寝かすべきではないのかもしれないが、こちらの都合上その闇魔法が解除されるまでこの部屋に居てほしい。その間、出来るだけ希望は叶えよう。だからしばらくの間、辛抱してもらえるか?」


 アイリスは言葉が通じない代わりに思いっきり首を縦に振って了承の合図をする。


 「ありがとう。」

 目の前でロイヤルスマイルがアイリスに直撃する。


 ぐああああああ!!笑顔まで高級感がすごい、さすが王族。


 「すまないが、少しやることが出来た。先に寝ていてくれ。」

 フェクト殿下は私にシーツをかけると部屋から出て行った。 お言葉に甘えて先に寝ようっと。おやすみなさい。









 ◇◇◇◇








 フェクトは別室で机に突っ伏していた。


 「……可愛すぎる…………欲しい。どうしても彼女が欲しい。」


 口説く宣言をしたときの顔を真っ赤にして照れる姿を思い出し、一人で悶える。


 つい責任をとると言ってしまった。性格もまだわからない状態で、王族として軽はずみな発言だった。 群がってくる女性達だったら、ここぞとばかりに責任をとってもらおうとするだろう。

 責め立てないどころか、王族が手に入るかもしれないチャンスすらも断ってきた。あんな謙虚な女性がいてるとは。


 人間に戻った姿も、ほっそりとして儚げでこの世のものと思えないような美しさだった。その肌はきめ細かく吸い付くようだった。


 色々と思い出され、再び顔を真っ赤にして一人で悶えた。





 「はぁ、寝れそうにないな……。」

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