77話 異世界人好きの噂
2年ぶりです。筆が重かったのでこうなりました。
この後更新が続く保証はないですが、もう少しちゃんと書こうとは思いました
「異世界人ですか? うーん、ギルドにそういった情報は届いてませんね」
「アレだろ、エストにいるっつー噂の……」
「さぁてな、てんで聞いたことがない」
「イセカイジン……なんだいソレは」
宿は3人一部屋。とはいえ俺は出来る限り二人から距離を離して最低限の言い訳が経つ形にしてはある……がまぁそもそもフィリアと違って本当に女子が一緒にいる場というのは緊張しなかった。おかげで少しばかり寝不足である。
そんな就寝からの翌日、宿を出たあと朝食を取り……その後に情報収集を開始した。幾人かに聞いてみたが収穫らしい収穫はなかった。本当にみんな知らない様子である。唯一出てきた情報はおそらく目の前にいる女性、レンを対象とした噂程度で下手したら異世界人という言葉すら馴染みがない人もいた。
「本当に……リーオの街にいるのか……?」
「さぁ?」
確かにレンに聞いたはずなのに、そのレンからあまりにもそっけない返事をされた。……さぁ、って元々レンが聞きつけた噂だろうが、と言いたくなってしまう。
「そもそもレンさんってその異世界人の噂……というのはどうやって手に入れたんです?」
確かにそこは気になるところ。東西にリーオの街が分かれているにしてもここまで誰も知らないもんなのか、と少しばかり疑問を抱いてしまう。
「えーっと冒険者同士の……会話で?」
何ともいまいちな情報源だった。それすら記憶半分の様子であるし。こうなってくるとリーオにいるという情報そのものを疑って問題なさそうだ。
「……眉唾だとしても、その冒険者の会話からきいた……ってことならギルド内の誰かは知っててもおかしくなさそうだけどな。なんかそういう情報に詳しい人とかさ」
「もしくは異世界人そのものに詳しそうな人を知らないか、聞いてあたる……とかですかね」
「自分でいっておいてなんだけど、そんな人いるの?」
「稀有ではありますけど、私みたいな人間もいるんですから、普通に探せばいるんじゃないですかね?」
「……」
「……な、なるほど」
彼女の一言に二人して納得せざるを得なくなる。一応本に出てくる存在らしいし、そう考えると文学オタクとかそういう類の一種としてあり得るの……かな。多分……。
そんなわけで目的をわずかに変更。もう一度ギルドやらなんやらを巡って今度は詳しそうな人について当たってみる。
「はぁ……異世界人に詳しいヤツぅ? アレかねオージャさんとこの娘さんかね」
そんな中で手に入れた情報はというと凄く聞き馴染みのある名前。その人から更に詳しく話を聞きつつ、彼の店に向かう事にした。彼本人から聞き逃した店の場所についてもここで回収した……って感じで落ち着いた形になってる。
「む、娘さん……」
店に向かう足取りの中俺の後ろで微妙にフィリアがもやもやした表情を浮かべていたけど。
■
「いらっしゃいませ!」
元気な声に迎え入れられる。店自体はそこまで大きくないものの、客で賑わってるという印象。
小さい店だから座れるかななんて甘い考えでいたのは失策だったかもしれない。
「思ったより混んでるなコレ」
「ん、どうする?」
なんて会話をしていたところに。
「すぐに席作りますから! すこーし待っててください!」
と、ウェイターらしき女の子がずずいっと駆け寄ってきてはそういった。めちゃめちゃ顔が近い。
「……ミヤトさん?」
背後からフィリアによる圧のようなものも受けつつ。その子は俺たちに一声かけた後、本当にてきぱきと行動に移す。まるで瞬きする間に、とでも言うかのごとく速さでテーブルが片付いて席が空く。
いや、まぁあくまで比喩であってそういう特殊技能ってわけじゃないけど。
「水ですっ! あ、メニューあそこの壁に書かれてるので決まったら声かけてください〜!」
水が出るのはあっという間。しかしまぁ人で賑わっている店だ。ソレ故に本来なら結構煩そうではあるんだけど、けれども彼女の声は不思議とよく通る。もちろん声量自体もあるだろうけど声質的に元々高めだからなんだろう。
それでもって今のところオージャさんとは似ても似つかない顔には見えるけれどさっきギルドで聞いた話も含めて照らし合わせると今応対してくれた彼女こそがオージャさんの娘であり異世界人が好きだというミロという人であってる……んだよな?
まぁ俺やレンがいて異世界人であることに気づいてないのは恐らく、そもそもとして異世界人といってもこっちの世界の人と顔つきが大差ないからって事だろうけど……。それこそ日本人的な黒髪も黒目も見かけるしそもそも異世界人という言葉は出回っていてもその存在自体は希少だろうから居ても分からないんだろうなとは思う。……アレ、でも俺はともかくレンってそこそこ有名人だった記憶。少なくともエストの街では異世界人といえば、で通っていた人物でありこの街のギルドに来た際も全員とは言わずとも何人かはその存在に気づいていたと思われる。まぁ向こうから気づいてもらわないとダメという話ではないからタイミングを見て話しかけるかな。
「……ミヤトさん、さっきからあの女性のことばかり目で追ってませんか?」
「浮気か?」
「い……いやいやいやっだ、だってあの人が推定異世界人好きのミロさんって事だから……それで気にしてるだけだって!」
フィリアはともかくレンまでこのノリに乗っかってくるのかよという感想になる。
「と、とりあえず昼食がてら何か食べようよ! どの道異世界人について聞いてみるにしても、今の状況じゃ店が忙しそうだし……」
「何やらナンパの算段にも思えますが……まぁ良いでしょう」
ナンパじゃないっての……。
……とはいえ本当に繁盛しているなぁとか忙しそうだなぁ……という感想が絶えないくらい人であふれかえっている。フィリア曰く時間的には一応ピークになりそうな時間帯……いわゆる昼時より少し遅めの時間帯なので空き始める、と教えてもらったし、実際少しずつ減ってはいるもののそれでもって感じ。
「料理がちゃんと美味しいので……癪ですがそういう理由なんでしょう……」
そんなフィリア本人も若干不服そうにこの店の料理を味わっていた。なんかさっきからあのミロという人に敵対心抱いてないか……?向こうも自分もまだノーアクションだというのに何をそんな恐れているのやら。




