76話 父と娘の料理屋
「……宿どうする?」
ここでいうどうする、というのは今日どこの宿に泊まるかという事にも言及はしているがそれ以上に俺が気にしているのは部屋割りである。
今のパーティーは三人。性別的には男一人、女性一人、そして男女どっちに区分けしたものか悩ましいのが一人。改めてみるとすっごい変なパーティーだな……。
で、今までであればなし崩し的に、それでもって同性であるしフィリアの感情的にも一部屋で二人で寝泊まり……という形をとっていたわけだが、今回はレンがいる。女性がいる。少なくとも3人一部屋はいろいろとまずい。しかも今までずっと旅してきたメンバーってわけじゃないので尚のこと。
「別に、どうなっても大丈夫」
事を察したのかレンがそういった。気を使っているという事ではなく本当に彼女としてはたぶんその辺無頓着だというのは何となくわかる。付き合いは短いけど今の彼女はたぶんそういう人間だ。
「流石に3人一緒はまずいですって! それなら二部屋か三部屋で」
レンに対してフィリアが言う。
「いや、うーんそうしなきゃダメなのは理解してるし、三人一部屋もダメなのはわかるけど……なんだろうな……」
フィリアの言う通り単純に部屋割りを二人と一人とかみんな個別の部屋にするとかで解決すれば……というのが単純な話ではあるけど、それでいいのか?という……何かよく分からないけど直感がそう告げている。多分それこそ彼女のパーティー入りを許可した理由とかそういうところで。
「じゃあ、どうするの?」
「うう……そ、そこはノープランだけど……」
わがままを言っておきながらもこんな有様なのはふがいないという他ない。
「うーん、それなら少し想定外ではありますが……」
フィリアの提案でもって、一旦の事なきを得る形になる。結果として、少しばかり高めの宿を選択した。モノとしては一室扱いではあるものの、寝室が2人ずつ二部屋と分かれているタイプ。つまり寝室二部屋にリビングのような一部屋が一つという感じ。そこでフィリアと俺で一部屋、レンで一部屋という形。結局寝食のうちの寝に関しては共にしない形になったけど……まぁこれが一番の妥協点だろうか。何となく彼女を一人にすることに忌避感があったから。
とりあえず宿泊に借り受けた部屋に3人で腰を落ち着ける。リーオの街にはたどり着いたという事で今後の行動の相談だ。元々の目的はこの街にいるという噂のある異世界人の捜索である……がその街の人間であるオージャは知らないというので正直ちょっと手詰まりみたいなところはあるな……。
それにレンも噂程度にしか知らなくて、フィリアはそもそも知らなくて。……となると地道に聞き込みするしかないのかな。
「とりあえず、夕ご飯から考えます?」
フィリアがいった。そういえば、昼過ぎにエストを出て、夕方になったんだったか。ちょっと早いかもしれないけれど結構な距離歩いたことを考えると良い時間なのかも。
「野営用に食糧はまだアイテムストレージにありますし、異論なければこれで簡単に済ませちゃいましょうか。あとに残しておいても良いですが、ストレージ自体に上限もありますから」
「いいよ」
「俺もそれで大丈夫」
流石に借りている宿でもって料理はできないので、外に出ることにした。
■
――同時刻ごろ。
「いらっしゃいま……あ、お父さん!」
オージャが入ったその建物には料理屋の看板が掲げられている。そして中にいた少女から迎えられたかと思えば、お父さんと呼ばれた。
ここはオージャたちの家でもあった。料理屋を営む娘とその為に食材をかき集めてくる父親による2人経営である。
「おっ、オージャさんじゃねーの」
「相変わらずでっけぇなぁ」
彼の巨体では自分の店であるにもかかわらず、正面入り口から入るには軽く身をかがまないといけない程だった。そんな目立つ図体もあってちょっとした人気者のような存在になっている。
「おう、今日も来てくれたか」
常連と会話をしつつ、娘のほうへ寄るとアイテムストレージから先ほど森で手に入れたモノを取り出す。
「今日はヒュージボアがメインだな。流石のデカだから、量もたんまりさ」
「わぁ……!これなら明日のメニューは……うん、早いところ片付けなくちゃね」
目を輝かせつつ彼女はいった。それからすぐさま厨房の方に戻ると作業を再開する。オージャも荷物を片付けて手伝いに入る。ここから夜が来て、忙しくなる頃合いだ。小さい店ながらも客足は途絶えることなくずうっと大忙し。
それこそ、営業時間を終えてようやく腰を落ち着けることができたほどだ。それでも二人とも疲れている様子を見せていない。なんならまだ動けるとでも言わんばかりだった。
その夜。店を閉めた後の店のフロアにて二人で腰を掛けながら、夕食を兼ねての雑談をしていた。
「そういや冒険者と森であったぞ」
「いつもの森でしょ? ならまぁ確率的にいるんじゃないの?」
冒険者同士が狩場で出会うというのはたいして珍しいことではない。が、オージャにとって今回の相手は少しばかり知るところのある存在だった。
「ま、そうだが……多分ありゃユウメイジンだな。なんつったかな……異世界人でエストの……」
「異世界人っていうと……昔本で読んだことあるけど……」
「そうそれだ。なんでも異世界人を探してリーオの街まで来たらしい」
「リーオの街に……異世界人……? そんな人……どうだったかなぁ」




