70話 買い物デート
結局結論は出ていない。
彼女の言う通り、やはりどこまでいっても他人事でしかないからか、それとも一向にそれらしい結論を思い浮かぶ事が出来ないからだろうか。段々と何も考え自体が浮かばなくなってくる。
何にせよただ無意味に時間が流れていた。
「根詰めすぎてもどうにもならないですよ」
「いやまあ……うん」
そもそも無気力に時間を浪費しているだけで何か思案しているのかというと違うけれど。しかし確かにこのまま宿に留まっていてもどうしようもならないのは受け入れるべき事実でしかないか。
寧ろどうにかなっていた今までが幸運すぎたくらいだ。何か自分のステータスでそういう項目があった記憶は確かにあるけど、それにしたって上手く事が運びすぎである。
ふと気になって、フィリアに尋ねる。あまりにも希望的観測それどころか以下の話だけれど。
「こっちの世界ってこう……願いをかなえる不思議な力とかない?」
あればウルトラC級の解決策である。それこそレンの絶対防御以上のチートである。
「何ですかそれ」
「例えば集めると願いを叶える怪物が出てくる球とかランプとか猫のロボットとか……」
「ろぼ……っと? そもそもどれも聞いた事すらありませんが……。ミヤトさんの世界にはそんな便利なものがあるのですか?」
「あ……いや流石に物語だね」
……まぁこれらは俺が見てきた創作物での話でしかない。こちらの世界であれば或いは……という淡い期待だけをこめて聞いただけだから、ないという事に対してのダメージは無い。
■
やはりずっと宿に籠っていても何にもならないという事で、一度外へ出ることにした。ひとまず今日のところは街の様子を見て回ろうという事に。発展した都市街だけあって一つ一つの建物が大きい。まぁ元の世界の都心に比べたら見劣りはするけれどそもそも建築技術とか色々違うからそこは仕方がないな。
しかしそれでも活気というところでいくと全然劣ってないと思う。
「本っ当に大きいなこの街」
「一番大きな都市街ですからね」
なるほど、そりゃあこれくらいのサイズ感スケール感はあって然るべきか。食料品は勿論のこと、衣類に道具屋武器屋といったアイテム系。どころか所謂サービスを提供するタイプの店も多そうだ。
(マッサージ屋とかあるんだな……こっちの世界だと何するんだろう)
昔やったこの手の世界に似たRPGだといかがわしい店もあったっけ……。
多分メインの通りに存在してるってことはないだろうけど、俺達の年齢を考えるならその辺も気をつけないとな。
こちらの世界での成人の扱いとかは心得ていないけれど下手に近づかないのが身のためというやつだ。
しかしまぁ余りにも建物が多すぎてどうしたものかと勝手に気後れしてしまう部分もある。目的なく出掛けただけだから、わざわざ入らずに外から見て回るだけれでも割と楽しめはするが。
「どこか入りますか?」
「そうだな……っても買いたいもの無いし……というかフィリアこそ何か欲しいものないの?」
そういうと、彼女は何故だか少しばかり合わせたような声を出す。
「えっ……わ、私です……か?」
「フィリア以外に誰がいるのさ」
不思議と恐れ多いとでも言うようなトーンで返された。俺は今フィリアとしか話をしていないのだけれども。レンの一件のせいだろうか、心なしか彼女の様子が控えめに見える。
こういう時、彼女の機嫌を取るために何でも買ってあげるヤツとかになれたらよかったのだろうけれど、稼ぎはパーティーである以上折半だしそもそも彼女の方が所持金を持っているためいい格好は出来ない。
「普通に昨日ずっとほったらかしにしちゃったし、好きなお店行けばいいよ。今日一日くらいは付き合うからさ」
「つきあっ……良いんですか!?」
元々はレンの所為ではあるけど。
「まぁ荷物持ちくらいしかできないと思うけど、それで良ければ」
なんて最低限でも格好つけたけれどアイテムストレージがあるのだからそれすら叶わないか。
「じゃ……じゃあ!」
けれども彼女は満足そうに目を輝かせどこへ行こうかと頭を悩ませていた。ほどなくして、目的地が決まったのかそそくさと行動を開始する。それこそ食料品とか最低限の旅道具しか見てこなかったからこうして彼女の行動範囲に付き合うというのは些か新鮮かもしれない。
取り敢えずという事で最初にご飯を。そういえばもう昼下がりであったか。
やはり都市街だからだろうか、それともプラシーボでそう感じているだけだろうか並んでいる料理にしても今までと少し違って何というか高級感を覚える。
会計をして思ったが、単純に値段相応なだけかもしれない。




