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29話 両手に話を聞かない奴ら

 宿屋にて。俺たちが今、泊っているところ。宿のシステムとしてたとえ一部屋を共有して使う、としても人数が増えた場合はそれに応じての金額が必要とのことで、カコが自らの分を払うに至った。

 そうして3人で部屋に入り、両腕を彼女ら自身で拘束という形のままベッドへと放り投げられる。一応審査員らしいのでもう少し丁寧に扱ってほしいものだが、、今二人にいったとて意味がないだろう。


「……添い寝はもうこの際いいけど、思いっきりまだ昼前なんだけれど」


 さっきまでぐっすり寝た上でカコに会ってるわけだから、勝負になる未来が全く見えない。二人がなにをしようとも、結局寝られず引き分けがオチだろう。

 そもそも添い寝とは言ったけれど具体的にどうするつもりなのやら。

 当然俺の言った言葉は彼女らの耳には入ってない。たとえ入っていたとしても意味を成していない。


 ベッドの上に大の字で倒れこんでいたところに二人が近づいてきてそれぞれ左右のポジションをとって一緒に寝転んでくる。サンドイッチ状態。


 心的にはとても喜びたいところなんだけれど、今から一体何が始まるのやらと思うと、気が気でない。本来なら美女及び美少女もどきに挟まれて添い寝というライトノベル宜しくの展開なんだけれど、カオス化していることといざ我が身に降りかかると……という緊張めいたものの二つがあわさって楽天的にはいられない。本当に一歩間違えれば彼女らの勝手な暴走の果てに添い寝どころか永遠の眠りにつくことだってありえない話じゃない気がするし。

 それとこんな状況に当然ながら慣れていないためシンプルな緊張もある。


 緊張と不安。それら二つだけでこの状況を喜べない、その程度の感覚。


 さてそんな俺を横目に二人は早速開始した。ゴングなんてものは当たり前に存在せず二人の体内時計を軸に

 進行していく。

 お互いに耳元でささやいて見せたり、腹部辺りをゆったりとしたリズムでさすってみたり。あの手この手を尽くしてくる。けれどもしかし、俺には効かない。というか寧ろ目が冴えてくる感覚さえあった。


 これらは落ち着きこそ与えられるかもしれないけれども俺からすると只管緊張を高める行動以外の何物でもないのだ。

 それでもって、シンプルに眠くないのだからそれこそその場で寝てしまう魔法でもない限り眠りにつくことはないだろう。ずっと起きたまま、目も開いたまま悪戯に時間が経過する。


「寝れないんだけど」

「そんなっ……」

 ショック気味な二人をどけて、起き上がる。

「そもそも俺静かな方が睡眠出来るから……」

 そうして二人の反応を見る。


「添い寝は互角のようね」

「ええ……次に持ち越しですか」

 二人ともダメそうだ。多分このあともトンチキ対決が続くだろうという事が簡単に予想出来てしまう。


「どっちもどっちってだけだから、凄みのある雰囲気出すのはやめて」

 彼女らがどれだけやり切った感を出そうとも、どれだけ凄みのある雰囲気を醸し出そうとも、目くそ鼻くそ程度には大差ない。さてそんな風にツッコミを入れても二人は聞いちゃくれない。


「そ、それなら次は……ええと」

 添い寝がダメならすぐ次へ、という流れではあるものの、カコは特に内容を決めていないようである。なんでだよ。昨日、夜とは言え申し出てから時間があったじゃないかそれでなんで1つしか決めて無いんだよ。

「それなら、寝食というんですから次は食で決めては如何ですか?」

 悩むカコに対してフィリアが得意気な顔をして提案した。それは明らかにフィリアの得意分野。彼女のジャンルの勝負である。明らかに有利であるけれど、しかしカコがノープランであるという事と、最初にカコ本人が寝食なんて口にしたのだから自業自得だろう。

 フィリアの提案を聞いて、少し明かり不安気というか青ざめた表情のカコ。確か共に行動していた時料理はしないとか何とかいっていたっけか。しかしながらその提案を却下しづらい状況でもある。代替案もないうえに却下する理由が自分の不得意なジャンルであるから。ここで不公平などと叫ぶ事こそ不公平そのもの。


 そんな訳で宿を出る。キッチンを借りるという事は簡単に出来ない物なので、仕方なしに外でキャンプ的な形で行うことになった。

 この為だけにわざわざ外へと赴き平原へ。そこで一品誂える……ということにはなったんだけれど、その為だけにわざわざ移動するのがあまりにも馬鹿らしくて仕方がない。

 さらに言えばこちらも勝負を始める前から結果が目に見えてしまっているので猶更。

 結果が分かっていて、そこからワンチャンスが生まれるかのような展開の一つでもあれば別だけれど、その限りでもなく。

 そうした出来レースの果てに二人からお出しされたものを口にして、俺が判定を下したわけだが、どう頑張ってもフィリアの勝ちとせざるを得なかった。

 カコが出した物がちゃんと食べられるもの、という事だけは評価できるところだろうか。


 しかしまぁ2回を終えて添い寝は引き分け、食事はフィリアの勝ち。あとはどう転んでも基本的にフィリアが負けることはない。それが良い事か悪いことか、分かりはしないけれど兎にも角にも最低限丸く収まってくれそうであれば何よりである。


 というかフィリアに負けがなくなったのであれば、もうこの戦いも意味がないのではなかろうか。

「もうフィリアが負けることないし、やる意味あるの?」

「まっ……あ、アタシはまだ負けてないわ! こっから一回勝てばあいこだもの! そもそもアンタはただの審査なんだから口だし無用よ!!」

「そうですよ、ミヤトさん!」

 食い下がるカコとそれに同調するように声を僅かに荒げるフィリア。なんでお前もカコ側についているんだ。このまま俺の言葉に乗っかっておけばリスクを負うこともなく全て終わるというのに。


「……じゃあ最後は何にするのさ……」

 どの道最後の一つである。ならばさっさと終わってもらう方が楽だろう。

「そうですね。さっきので寝食は決めてしまいましたし……あとは……」

「それなら、最後は冒険者としての腕比べにするわ」

「えっ……いや流石にガチで戦うのは……」

 そもそも傷つけあう様を見るのはごめん被る。しかも二人が戦うとなると、時間がかかって仕方ないだろう。であれば流石に止めに入ろうと思ったが、どうやら違うらしい。

「最初に言ったでしょ? 別にバトるつもりはないわ。競うだけなら丁度外だし、誂えむきのものがあるでしょ?」

「??」


 そう言うと、カコは手を広げ遠方を指す。

「ここは外。モンスターが無限に湧くのよ。だったらそれの討伐数なり時間なり方法は無限にあるわ」

「それで、冒険者……という事ですね」

「まぁ……それならすぐ終わりそうだし良いか……」

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