30話 決着と友達
そんな訳で最後の対決はモンスター討伐。
各自約3分でそれだけモンスターを討伐できるか、というもの。それを平原とは言え迷子対策に交代で行う。まぁこうなると出現の運とか色々絡んでくるけれど運も実力の内というやつだ。まぁこの世界じゃ3分を正確に測ることも出来ないから多少ズレるけど、それがこの世界であるから気にする人間はというと俺くらいのものであろう。それでもこの世界じゃ正確無比な時間を求める意味は無いわけだけど。
「それじゃあとりあえずカコからでいい?」
「分かったわ」
そう言うと、カコは背中んい背負ってる鞘から剣も構える。とはいえ探している間に終わっては元も子もないため、先に標的を見つけてから。
「じゃあ行くよ。よーい、ドン!」
最初にいたのはフレアハインド。俺も戦った、小さな赤毛の鹿である。俺でも苦戦しなかったモンスターという事もあって、秒単位で仕留めて見せた。さてここからは時間内にどれだけモンスターを見つけられるか、というところになってくる。
彼女はその足のまま足早に別の獲物を探しに走っていく。それを俺とフィリアは後ろから追いかけていく。離されないように。
「次ッ!!」
これが人間の出来る動きだというのか。只管に平原をかけて、得物を見つけるなりすぐさま地面を蹴って懐へと飛び込んでいく。その動きに全く躊躇が伺えない。そりゃあフィリアの魔力障壁も貼っているだろうけれど、それにしたって、そもそも攻撃を受けるはずがないとでもいうような動きである。
「は……はや……」
フィリアと一緒に汲んで戦っていた時や、俺に指導してくれていた時とも違うその機敏な動き。これが彼女の本領というやつなのか。
「私と組んでた時もそうですが、やっぱり相手を動かすための動きに終始していた感じはありましたからね……」
「平原だから大乗うだと思うけど、森とかだったすぐ見失いそうだね……」
彼女の後を追いかけつつ、片手で1秒ずつ数えて出来る限り3分を忘れないようにする。マルチタスクに長けている訳ではないからこの3分という数え方もあまり自信はないけれど。
(あと……ええと30秒とかか次見つけた1体で終わりくらいか?)
兎にも角にも折り曲げる指を止めずに追いかける。
「はっ!!」
そうして暫定最後となろうモンスターも鮮やかに、且つ軽やかに倒して見せる。あれは見る限りロックタランドスに見えるんだけれど、それをものの数秒で倒している。彼女をどうにか呼び出した時といい、俺に指導していた時に言っていた、ロックタランドスくらいなら3秒で倒せるというのは見栄でも何でもないらしいただただ事実の言葉のようである。マジかよ。
恐らくあと10秒ちょっと。何というかその秒数だけで不思議な予感がする。というか既に――。
「次よ次!!」
ロックタランドスを一撃でしとめたその足で、すぐさま駆け出した。普通に考えたら走っているだけで10秒なんて使い果たすはずなんだが、それを、ありえないを当たり前にこなして見せる。普通の人間なら百メートルほどを走るのに終始してそれで終わるが、ざっと3倍はあろうか、という距離にも関らず彼女は遠くにいたモンスターへと一気に近づいて剣でもって斬りつけた。
そこでカウントは終わる。
「おっ……終わり、終わり!!!」
3分ぽっちで一体どれだけの数のモンスターを倒したんだろう。回収がてらに再度確認してみる。
「あれほんとに俺3分測ったんだよな……?」
「いやアンタにその辺任せてたんだからアタシは知らないわよ」
それはそう。というか確かに約3分を数えきったはずなのだが、彼女の記録を見て自信がなくなってくるのである。
「記録的には10体……」
単純計算で18秒につき1体くらいな訳である。倒す時間と見つけ出して近づく時間とを考えるととんでもない。シンプルに見つけ出す事一点だけで見ると、もしかしてもしかするのではないか――。
……という考えはあまりにも浅慮であり早計だった。フィリアという冒険者はカコの圧倒的なスピードと発見するという能力、嗅覚、それらを簡単に上回る。
「ローラティオ」
周囲に俺たち以外の冒険者がいないという事をいいことに魔法一つで一帯を覆う攻撃を放った。
「ええ……」
時間を数えるまでもなく、周囲一帯広域にいたモンスター全てが殲滅されている。
「えっと……勝負的には……フィリアの勝ち……だよね? これ……」
「そう……ね……」
カコも現実を見て唖然としながらも納得する他無いといった表情である。まぁこんなもの見てしまったら仕方ないというところでもあるか。明らかに自分とは競る事すら叶わない次元から違うと思わせられる光景であった。
「結局アタシじゃかないっこない勝負だったってことね。あー……もう……」
「カコさん」
振り返り、フィリアがカコに呼びかける。
「確かに私は勝ちましたけど……でもカコさんだって素敵な人ですよ」
「な、何よ、勝者なりの慰めのつもり?」
「そ、そうじゃなくて……ええと……」
たどたどしくもカコに近づいて、手を差し伸べる。
「友達になってください!」
「は、はぁ!?!?」
驚きの声を上げている……けれども、しかし彼女の手は確かにフィリアの手を握り返していた。
「……友達……ね」
少しばかり照れくさそうにして、握った手を放す。
画して二人の戦いとやらはフィリアの勝利でもって幕を閉じた。これでトランキーロとも離れることになるだろうか。
これであとは食材の買い足しやらなんやらを済ませたらこの街を立つことになるだろう。
「……」
これでカコとの旅も終わりであるのか……。ああ、いや……。
「あのさ……カコも良かったら俺たちの旅に同行しない? 別にフィリアと二人だけ……って必要があるわけじゃないし」
そうして提案してみたが、
「……んアンタ正気? 実質人のこと振っておいてパーティーには誘うとか調子よすぎよ!」
という具合に断られた。
いやそもそも答えてもいないけれど、こっちの感覚としては振ってもいないんだが。勝手に暴走して勝手にフィリアと勝負をして、敗北してそれからフラれた風になっているだけであって。
「それに、当面はこの街でやってくつもりよ。だからどっちにしろ、お断り」
とは言え、カコがそう言うのであれば、こちらも無理に誘い続ける義理もない。
彼女は素直になれない性格であったけれど、多分その言葉自体は本心だろう。
「とりあえず戻るわよ」




