第5章 第10話「波紋の先へ」
夜明け前。
王都は——
まだ眠っていた。
だが——
ガルドは起きていた。
執務室。
机の上に——
地図が広がっている。
「——ここだな」
低く呟く。
指が——
地図の一点を示す。
北。
森の奥。
均衡が最も崩れている場所。
「隊長」
扉が開く。
部下が入ってくる。
「準備ができました」
「全員か」
「はい」
「ガビは」
「すでに——待機しています」
ガルドは地図を——
折りたたむ。
立ち上がる。
「行くぞ」
廊下を歩く。
足音が響く。
無駄がない。
迷いがない。
訓練場へ向かう。
そこには——
討伐隊が整列していた。
統一された装備。
鋭い目。
そして——
その前に。
ガビが立っていた。
真っ直ぐに。
揺れない目で。
「——準備はできています」
ガビが言う。
「遅い」
ガルドが返す。
「俺の方が先に来ていました」
「それは認める」
短いやり取り。
だが——
空気は重くない。
「今日から——動く」
ガルドが隊員たちを見渡す。
「目的は——均衡の崩れの根本を断つこと」
「魔族の排除」
「そして——魔王の討伐」
声が響く。
静かだが——
よく通る。
「各自——役割を理解しているな」
「はい」
全員が——
一斉に答える。
「ガビ」
「はい」
「お前は——前に出るな」
「え?」
「まだ早い」
「でも——」
「命令だ」
ガビは——
少しだけ不満そうな顔をする。
でも——
「……はい」
頷く。
素直に。
ガルドは——
それを見て。
(まだ従う)
確認する。
よし。
まだ——
使える。
「出発する」
踵を返す。
討伐隊が動く。
ガビも続く。
王都の門が——
開く。
朝の光が——
差し込む。
その光の中を——
一行が歩き出す。
ガビは——
前を見ている。
その目には——
揺れない光がある。
(やるべきことがある)
それだけを——
思っている。
誰も気づかない。
その光が——
どこから来るのかを。
「——出発した」
どこかで——
ナイの声が響く。
「駒が——動いた」
「計画通り」
「リオたちも——動いている」
「二つの駒が——」
「同じ方向へ」
少しだけ——
間があった。
「——面白い」
その言葉は。
感情のない声で——
告げられた。
でも——
その奥に。
本当に深い場所に。
何かが——
あった気がした。
風が吹く。
王都の旗が——
揺れる。
討伐隊の姿が——
小さくなっていく。
遠くで——
リオたちも。
同じ方向を——
向いている。
知らないまま。
気づかないまま。
二つの流れが——
やがて——
交わる。
その先に——
何があるのか。
まだ——
誰も知らない。
でも確実に。
世界は——
次の局面へ。
動き出していた。




