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この世界にはどうやら魔王が最強でほかにも獣人族エルフ族小人族がいるようです  作者: 1010
第3章

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第9話「修正」

森を抜けた先。


そこには——


崩れた均衡があった。


煙。


倒れた木々。


そして、散らばる影。


「……ひどい」


セリアが言葉を失う。


人間と獣人。


両方が倒れている。


どちらが勝ったかじゃない。


ただ、ぶつかって、壊れた。


「想定より早いな」


リオが呟く。


(ここまで一気に来るか)


段階がない。


調整もない。


ただ——崩れている。


「これ……どうするの?」


セリアが震える声で言う。


「止める?」


その問いに。


リオは答えない。


代わりに——


空を見た。


(……来る)


その瞬間。


——止まる。


世界が。


風が止まる。


煙が止まる。


倒れかけた身体も、そのまま固定される。


「……っ」


セリアの動きが止まる。


目を見開いたまま。


完全に静止。


「——観測更新」


声が“降りる”。


空間そのものから。


「逸脱、臨界点到達」


「誤差、許容範囲外」


リオは、ゆっくりと振り返る。


「……早いな」


「進行速度、予測を上回る」


「原因は分かってるだろ」


一拍。


「変動要因:個体 セリア・エルフィン」


「影響度:臨界」


「排除を推奨」


その言葉に、空気が変わる。


今までと違う。


明確な“意志”。


「……へぇ」


リオが少しだけ笑う。


「ついにそこまで来たか」


「修正プロセスを開始」


淡々と告げられる。


「対象:逸脱領域 全体」


「優先対象:魔王個体」


「次点:エルフ個体」


セリアの名が、そこに含まれる。


「……そう来るか」


リオの目が細くなる。


「排除か」


「正常化のための必要処理」


「毎回それだな」


「最適解」


即答。


だが——


リオは一歩、踏み出す。


「今回は違う」


「確認済み」


「逸脱傾向、増大」


「修正必要性、高」


「だから?」


問い返す。


ほんの一瞬。


“間”が生まれる。


「……」


完全な即答ではない。


「……処理を継続」


わずかな遅れ。


リオはそれを見逃さない。


「……揺れてるな」


「問題なし」


「そう?」


リオは、少しだけ笑った。


「前回より、迷ってる」


沈黙。


ほんの一瞬。


だが確実に——


“ズレ”があった。


「……記録」


黒幕が言う。


「予測外反応」


「要因:不明」


「ふーん」


リオは肩をすくめる。


「そっちも完璧じゃないんだ」


その言葉に、わずかに空気が歪む。


怒りではない。


だが——


“反応”。


「……修正を優先」


声が戻る。


だが完全ではない。


「次回介入、強化」


「排除確率、上昇」


「準備段階へ移行」


それだけ告げて——


「——終了」


風が戻る。


音が戻る。


世界が、動き出す。


「——リオ!?」


セリアの声。


時間が再開する。


「今の……!」


「うん」


リオは軽く答える。


「来たね」


「来たねって……!」


セリアの顔が青い。


「これ、やばいよね!?」


「まあね」


「まあねじゃない!」


必死に言う。


「なんか、すごくまずい感じした!」


「正解」


リオは空を見上げる。


(……本格的に来るな)


今までは観測。


でもこれからは——


「修正」


その言葉の意味は、分かっている。


「ねぇ」


セリアが言う。


「どうするの?」


その問いに。


リオは少しだけ考えて——


「……さあ」


と答えた。


「でも」


少しだけ、笑う。


「面白くなってきた」


セリアは呆れる。


「そういう問題じゃないでしょ……」


でも。


その言葉の裏にあるものを、感じていた。


恐れていない。


むしろ——


向き合っている。


風が吹く。


崩れた均衡の中で。


世界は、確実に動き出していた。


そしてそれはもう——


誰にも、止められない。

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