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この世界にはどうやら魔王が最強でほかにも獣人族エルフ族小人族がいるようです  作者: 1010
第2章 「討伐隊ガルドは気づく」

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第10話「魔王の影」

戦いの余熱は、まだ残っていた。


焦げた匂い。


血の気配。


そして——沈黙。


広場には、立っている者と、倒れた者。


その境界が、はっきりと刻まれている。


「……行ったか」


グラムが周囲を見渡す。


討伐隊の姿は、すでにない。


撤退は早かった。


「判断が速ぇな、人間」


「無駄に強いからね」


リオが答える。


「厄介だよ」


軽く言うが、その評価は正確だった。


セリアは、まだ動けずにいた。


視線は地面に落ちたまま。


「……」


何も言わない。


言えない。


その横で。


ざ、と音がする。


振り向くと——


一人の魔族が、ゆっくりと近づいてきた。


傷だらけの身体。


それでも、まっすぐにリオを見ている。


そして。


「……」


何も言わず。


膝をついた。


完全な、跪き。


セリアが息を呑む。


「ちょ……」


止めようとするが、声が出ない。


さらに。


「……っ」


別の魔族が。


また一人。


そして、もう一人。


次々に。


完全ではない。


迷いもある。


だがそれでも——


膝をつく。


「おいおい……」


グラムが笑う。


「分かりやすいな」


止める者はいない。


否定する者も、今はいない。


ゼルヴァはいない。


だからこそ。


“選ばれた結果”だけが残る。


一人の魔族が口を開く。


「……あなたは」


震える声。


恐れと、確信とが混ざる。


「我らの——」


言葉が詰まる。


その名を口にすることへの、躊躇。


だが。


「……王」


小さく、しかしはっきりと。


その言葉が、落ちた。


空気が変わる。


重く。


確定的に。


セリアの心臓が大きく鳴る。


(言った……)


ついに。


呼ばれてしまった。


リオは、少しだけ目を細めた。


(……やっぱりか)


何度もあった。


この瞬間。


拒絶したこともある。


受け入れたこともある。


壊したこともある。


その結果は——


どれも同じだった。


「……やめとけ」


リオが言う。


静かに。


「勝手に決めるな」


魔族たちが顔を上げる。


戸惑い。


「俺は命令しない」


続ける。


「従いたいなら勝手にすればいい」


「でも」


少しだけ間。


「“王”とか、そういうのはいい」


ざわめきが起きる。


予想外の言葉。


「な……」


誰かが戸惑う。


「ですが——」


「必要ない」


リオは言い切る。


「そういうの、もうやったから」


その言葉に、わずかな重み。


過去を知る者はいない。


だが、何かを感じる。


グラムがニヤリと笑う。


「いいじゃねぇか」


「王様らしくなくてよ」


「うるさい」


軽く返す。


だが——


その空気は、拒絶ではない。


距離の取り方だった。


一人の魔族が、ゆっくりと言う。


「……なら」


顔を上げる。


「我らは、どうすればいい」


問い。


初めての問い。


命令ではなく——選択を求める声。


リオは少し考えてから、


「好きにすれば」


と答えた。


「生きたいように生きればいい」


単純な言葉。


だが。


それは、この場の誰もが持っていなかったものだった。


「……自由、か」


誰かが呟く。


その言葉は、まだ馴染まない。


だが——


確かに、そこに置かれた。


セリアは、リオを見ていた。


(この人……)


王にならない。


でも、中心にいる。


矛盾しているのに、成立している。


「……変なの」


小さく呟く。


リオがちらりと見る。


「今さら?」


「うん、今さら」


少しだけ笑う。


その笑みは、まだ完全ではない。


それでも——


さっきより、前を向いている。


風が吹く。


焼け跡を越えて。


遠くへ。


その先で——


見えない場所で。


「——観測更新」


声が、あった。


誰にも聞こえない。


「前回との差異を確認」


わずかな“揺らぎ”。


「変動要因:個体セリア・エルフィン」


「影響度——上昇」


静かに、記録される。


「……逸脱、拡大中」


そして。


ほんのわずかに。


本当にわずかにだけ。


“想定外”が、混じった。

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