表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追加ダメージ+9999の短剣拾った  作者: 赤戸まと


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
78/78

78.昇格試験再び


 手に取った依頼書の内容、それは『ティトララビットのしっぽ』の納品だ。


 ティトララビットとは、ディープルの森、第三区画(エリア)に生息する、うさぎ型の魔物。蹴りうさぎの上位の存在だよ。

 このうさぎのしっぽは、錬金術の素材としても知られていて、なんと幸運をもたらすお守りになるんだって!


 幸運なんて言葉は、錬金術師の人たちとはかけ離れているように感じるね。でもしっかり根拠はあるそうだよ。

 私も戦ってきたように、うさぎはキックが得意だね。その力強いキックを生み出すのが、しっぽに溜め込んだ魔力だっていわれてるんだ。


 しっぽはふわふわの毛で丸っぽく見えるけれど、実は毛を剃るとちょっと複雑な形状で、周囲の魔力を収集することに適しているそうだ。

 びっくりだね。ただカワイイだけじゃなかったんだ。


 その形状に目をつけた錬金術師たちは、独特な魔力の流れが生み出す不思議なオーラ? のようなものを、幸運を呼ぶお守りとして整えたんだって。

 よくわからないけれど、たぶんすごいものなんだろうね。


 でも本当にそんなことがあるならば、『+』付きのポーションを作るのに役立つはずだよ。

 錬金術師のお姉さんも、『追加ダメージ+99%』の付与に必要だと考えたんだろうね。


 しっぽをふたつ渡してお願いしたら、私の分も作ってくれるかなあ? ダメ元でお願いしてみよう!

 ということで、ティトララビットを二匹倒して、しっぽをふたつ手に入れたいんだけど……。


 ティトララビットは蹴りうさぎの上位存在なだけあって、強いよ。依頼も、アイアンランク以上推奨、となっているんだ。


 うーん。勝手に受けてまた別室送りになるのも嫌だし、お姉さんに相談してみようかな。

 依頼書を取って、なじみのお姉さんに持っていったよ。ストーンランクのいっこ上くらいなら、見逃してくれるかも?


 お姉さんはちょっと渋い顔をしたけれど、即却下されることはなさそうね。


「ユリシィちゃん。この際、アイアンランクの昇格試験、受けてみる?」


 えっ、また昇格試験? ストーンランクになってから、それほど経ってないと思うけど。


「ギガントもぐらの件から、そんな話は出てたのよね。何人かの冒険者からも、ユリシィちゃんにはそれくらいの実力はあるって、推薦もされてるのよ」


 確かに、ストーンランクがあのギガントもぐらを倒したって、あの場にいた冒険者には知られてたよね。

 それを聞いた他の冒険者も無茶をしはじめたらまずい。さっさと当事者のランクを上げちゃえ、ってことなのかもね。


 推薦してくれた冒険者って誰だろうね。ネコのお姉さんとかかな。そういえば結局あの人は何者だったのかな。

 あとはチヴェッテちゃんとか、巨漢の三人組あたり?


 ともかくこの依頼を受けられるなら、昇格試験にも挑戦してみようかな!

 ということで、お姉さんに試験の話を聞いてみたよ。


 アイアンランク昇格試験は、二段階に分けて行われるんだって。

 一段階目はこの依頼のティトララビット討伐を、無傷で成功させること。たとえ依頼を達成したとしても、怪我をしちゃうと試験は不合格だ。当分の間、次の昇格試験も受けられなくなるそうだよ。


 それは失敗できないね。何としても成功させないと。

 でも無傷って、ちょっとした軽いけがもダメなの?


「ユリシィちゃんは薬師なんだから、軽いけがならすぐ治せるでしょ。でも治せないようなけがを負いそうだったら、依頼は諦めて帰ってくること。それでも無茶をして依頼を続けるなら、分かってる、わよね?」


 ひええ……! お姉さんの意味深な笑顔! ……ブルブル。

 無茶はしません! けがもしません! ――深いところにある意識が、そんなことを叫んでるよ。


 なんとかこの依頼を無傷で達成できたら、後日、二段階目の試験が実施されるそうだよ。

 まずは一段階目の試験。この依頼を受けることができるみたいなので頑張ろう!


 ……確実に依頼を達成しないといけないね。もう一度ティトララビットについて、資料室で調べ直しておこうかな。


 冒険者ギルドの二階には、素材や魔物、ダンジョンなんかの情報をまとめた資料室があるよ。けっこう他の冒険者も利用してるみたい。


 実はこの街の領主様って、本好きで有名な人なんだって。だから街には本屋や図書館なんかも充実してて、街の人の識字率も、よその街より高いらしい。

 ここの冒険者ギルドの資料室も、種類が豊富で自慢らしいよ。


 さて、ティトララビットだ。森の魔物を集めた図鑑によると、やっぱり蹴りうさぎの系統らしく、キックが得意らしい。

 だけど戦闘スタイルは違うようだ。出会い頭に飛び蹴りしてくる蹴りうさぎとは対象的に、基本受け身の待ち姿勢なんだって。特技は後ろ回し蹴り!


 わわ! 蹴りうさぎには通用した、上から奇襲攻撃は使えそうにないよ。上や背後からの攻撃にも対応してくるんだって。

 戦い方を、考え直さなきゃね。


 ある程度調べ終わって受付ホールに戻ってきて、もう一度なじみのお姉さんのところに寄ったよ。

 ミミレちゃんからの指名依頼が来てるはずだからね。


 ミミレちゃん、今回からイシイオ草の採取の報酬を1万ペネに上げてくれたんだ。お店も繁盛しだして、イシイオ草の消費が多くなったみたい。よかったね。私も嬉しいよ。できるだけたっぷり持って帰ってあげようね。


 ふたつの依頼と、昇格試験を目的に、ディープルの森へ再び赴こう!


 ***


 まずは第二区画だ。森はホームグラウンドだから迷わずに進めるよ。第二区画はまだ木漏れ日があって、場所によってはキラキラと明るいところもある。

 こんなところでお弁当を食べたら楽しそう……だめだ、ヤツが寄ってくるね。手癖の悪いヤツが! 目的の場所まで早く行こうっと。


 前回もりもりディアーと戦ったあたりまでやってきたよ。

 あっ、アイツがへし折った樹木を見つけたよ。太い幹がえぐれて真っ二つだ。

 ひえっ、やっぱりすごいパワーだ。第四区画には近寄らないようにしようね!


 蹴りうさぎも見かけたけれど、今回はスルーしよう。ティトララビットと戦うまで体力を温存しておくんだ。


 イシイオ草が生えていたのは、このあたりのはずだったね。だけど……。


 見当たらないな? 他の誰かに採り尽くされた? いや、冒険者ギルドでは買取していない、ってお姉さん言ってたし、他の冒険者がわざわざ採りにくることはないだろう。

 だったら料理人が? うーん、ここは第二区画といっても魔物は出るから、冒険者でもなければ来るとは思えないね。


 やっぱりもりもりディアーみたいに、魔物か野生の獣が目をつけたんだろうな。


 他の場所を探すしかないかな。さすがにレアハーブだからね。かんたんには見つからないだろうけれど、ミミレちゃんの喜ぶ顔を思い浮かべたら、なんてことないよ。


 第三区画に行ってみよう。ここより可能性は高いはずだ。

 ティトララビットを探しつつ、同時にイシイオ草も探していけば一石二鳥だね。


 今いる場所はもりもりディアーが現れた場所だ。ということは、第三区画、それに第四区画からもそう遠くない、ということだ。

 以前に入ったときとは、別の場所から第三区画に入る。


 やはり第三区画に入ると、空気が変わる。

 奥に行くほど貴重なハーブが増えるから、イシイオ草もおそらくあるはずだ。ちょっと怖いけれど、奥に進もう。


 周囲は薄暗く、ろくな道もなくて地面はでこぼこだ。とても歩きづらいね。おっと!

 木の根っこに躓いて転びそうになったけれど、木の枝が伸びてきて、助けてくれたよ。


 前とは違う場所だけど、周りにいるトレントは私のことを知ってるみたい。トレント同士で情報が繋がっているのかな? 

 トレントが敵対していないだけでもありがたいよ。


 魔物を探知しながら、慎重に森を歩いていく。


 周囲のトレントがだんだん少なくなってきた。群集地を抜けたようだ。木の密度が低くなって見通しが良くなった。それはつまり、魔物からも私を見つけやすくなったということだよ。警戒を強めよう。


 そうだ、森の中だから木の枝はいくらでも落ちている。これを使えば――。


「クリエイトゴーレム!」


 拾った枝にホワイトゴーレムの核を添えて、樹木ゴーレムを呼び出したよ。

 私の身長よりちょっとだけ大きくなった樹木ゴーレムと、一緒に歩く。これで少しはカモフラージュできるかな。


 前方に強い魔物の気配だ! 樹木ゴーレムの後ろに隠れて、こそっと覗く。

 慎重に少しずつ近づいていくと、白いカタマリが見えてきた。おそらくあれが、ティトララビットだ!


 さあて、どうやって攻めようかな。


 ……んん? 今アイツ、こっちを見てニヤリといやらしい笑みを浮かべたような?

 私の存在に気づいてるみたいなのに、気にもとめずに草をむしゃむしゃしてる。


 ああっ! アイツが今むしゃってるのって、もしかして――イシイオ草じゃないか!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ