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追加ダメージ+9999の短剣拾った  作者: 赤戸まと


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65.赤いリボン


 ミミレちゃんちの定食屋は、そこそこ繁盛している状況が続いているようだ。うんうん。

 料理の味も、まだまだ先代に届かないまでも、周辺の店と比較しても十分魅力的だ。


 お店が忙しくなってきてから、新しく近所のオバちゃんをアルバイトを雇ったんだって。

 愛想と威勢のいいオバちゃんで、接客を担当してくれてるよ。おかげでミミレちゃんのお母さんが調理補助や食器洗いに回れて、ずいぶん助かってるみたい。


 というわけで、新しい作業場も見つかったことだし、調理場をお借りするのも今日で最後になったんだ。

 これまで本当に助かったよ。調合道具も置かせてもらって、普段の活動も楽になったしね。


 お昼時の忙しい時間帯が過ぎて落ち着いてきたころ、この調理場で最後の初級ポーション製作に取り掛かった。


 最後だしお店も落ち着いているので、お店の三人が見物に来てるよ。

 アルバイトのオバちゃんなんかは、薬師の作業を初めて見るから興味津々だ。


 魔力水をつくって、これからルオナ草をすりつぶすんだけど、じゃーん。ここで登場、石ゴーレムちゃん。

 ルオナ草をすりつぶすのは、それなりに力がいるし疲れるんだよね。

 一応、事前に説明はしておいたんだけれど、手のひらサイズのゴーレムの出現に三人とも驚いてる。


 すりこぎ棒と大して変わらない身長なのに、けっこうパワーがあるよ。

 みんなも気に入ってくれたみたい。ゴーレムちゃんが一生懸命ごりごりしてるのを、四人で微笑ましく見守ったんだ。


 すりつぶしたルオナ草をナベに投入するよ。

 そうえいばモラリちゃんに見せてもらった教本だと、初級ポーションを作るのにルオナ草じゃなくてスヤイ草を使ってたんだよね。

 こんどスヤイ草でもやってみようっと。確かにスヤイ草の特性を考えればできそうだ。だけど私はやっぱり、ルオナ草の方が高品質になりやすいと思うんだ。


 おや? 考え事をしてる間に三人が調理場から出ていったぞ?

 そういえば毎回このタイミングで出ていくけれど……まあいいや。集中しよう……うへへえ!


 ――むっ!


 おかしいな、虹色の魔力が浸透しきったのに、まだできあがらない?

 これは……もしかして。


 いつもより少しだけ時間がかかった理由は――。


 なんと! 『初級ポーション+』が偶然できあがったのだ!


 これはいい兆候だぞ。『+』のポーションができるのは、ほぼ運なんだ。この運気が続くなら、『解毒ポーション+』の成功もそう遠くないはずだ。


 ***


 使わせてもらった調理場を、キチンと最後まで掃除して。

 置かせてもらっていた調合道具を全部回収して、最後に調理場に向かって、ペコリとお辞儀した。いままで使わせてくれてありがとう。


 店の方に出たら、ミミレちゃんたち三人が待ってたよ。

 ミミレちゃんはちょっと寂しそうな顔をしてた。調理場を借りるのは最後だけれど、ごはんは食べに来るからね。そんな顔をしなくていいよ。


 そして、いままで調理場を使わせてくれたお礼に、プレゼントがあるんだ。

 ミミレちゃんに小さくて細長い箱を渡したよ。中身は、私がつけてるものと同じ、赤いリボン。


 箱を開けたミミレちゃんはびっくりしてた。

 ふふ。たまに私のリボンをちらちら見てたのは知ってたよ。ミミレちゃんはずっと、おしゃれする暇も無くこのお店で働いてるからね。

 ミミレちゃんの三つ編みの髪に、似合うと思ったんだ。


 実はこの赤は、普通の染料では出せない、特別な植物を使って染めてるんだ。薬師だけのオリジナル染料だよ。

 だから他にはない色で、私と二人だけのおそろいなんだ。喜んでくれるかな?


 心配だったけれど、ミミレちゃんはすぐに髪につけて、お母さんやオバちゃんに自慢してた。良かった!


「ありがとう、ユリシィちゃん!」

 最後に、私に抱きついてお礼を言ってくれた。わわ、ミミレちゃんにしては大胆だな。

 ちょっと涙をぬぐってたのが見えたよ。喜んでくれて私も嬉しいね。


 あと、お母さんとオバちゃんには、薬師特製のハンドクリームをプレゼント。手が荒れる仕事だから、使ってね。もちろんミミレちゃんにもプレゼントしたよ。


 ***


 定食屋を出たその足で、そのまま白衣のお姉さんの家に向かおう。

 どんなところかな、ドキドキするね。


 白衣のお姉さんの家は、薬師ギルドから歩いて2分、ギルドのすぐ近くに住んでいるらしい。なるほど私が来たと聞きつけてすぐにやって来たわけだ。

 このあたりは富裕層の北区にも近いから、大きな家が多いね。さすが二級薬師だ!


 おっ、見えてきた。あそこだ。

 モラリちゃんち程ではないにしても、かなり大きなご自宅だ。さすがに門番や執事さんはいないようで、白衣のお姉さんがお迎えに出てきてくれたよ。


「来たなお嬢ちゃん。まあ上がって上がって。ちょいと散らかってるけどなあ」

 白衣のお姉さんの案内でお邪魔させてもらったけれど……。うーん、あちこちに脱ぎ捨てた服やら、何か書き殴った紙やらが落ちてて歩きにくいよ。

 けっこういろいろと、無頓着な性格みたいね、外見どおりに。


 お姉さんも忙しい人だし、仕方ないよね。作業場をお借りするお礼に、整理してあげようかな。


「助かるけど、まあ気にせんでええよ。またすぐ散らかしてまうしなあ」


 そう言って作業場まで案内してもらった。隣には分析室があって、お姉さんは今はそこでおしごとしてるみたい。

 好きに使ってや、と言い残してすぐさま分析室に入っていったよ。


「お邪魔しまーす……」


 私はちょっとオドオドしながら作業場に入っていった。どれくらい散らかってるんだろうか……。


 そして入ってみて、びっくりしたよ。

 意外なことに、すっきり整理整頓されていたんだ。私が来るから慌てて掃除した、って感じじゃない。


 道具の配置とか、素材の棚の位置とか。

 完璧に計算されていて、ものすごく効率的に作業できそうな配置だ。これが、二級薬師の仕事場なんだ……。


 作業場を見るだけでも勉強になるなあ。

 これは俄然やる気が出てきたぞ。今日は作業しないけれどね。物置き棚は好きに使っていいって言われてたから、私の調合道具を置かせてもらおう。


 後は……東沼ダンジョンへ行って、シケクド草を採ってくるだけだ。

 シケクド草を採取するには、9層まで下りていかなきゃいけない。厳しい戦いになりそうだ。


 だけど私だって魔力は増えたし、新しくゴーレムを呼べるようになったんだ。

 これまでよりは戦えるはず。無理はしないけれど、挑戦してみよう。


 明日は東沼ダンジョンへ行って、頑張るぞ!



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