体と服を洗っているから、よろしく
改めて述べるまでもなく、ウィル、セラ、ユリィ、リタは教会で育っている。
教会の造りなどどこも同じようなものであり、それはフォケナスの教会も同様であるので、四人は詳しく案内されずとも、どこがどういう構造になっているかはだいたいわかるというもの。
ただ、構造自体が同じでも、他の教会と多少は違うところはある。
正確には教会そのものではなく、その裏庭の景観が四人の育った場所と少し違い、何本かの木が転がっていた。
裏庭に散乱する木々は切り出したというより、力づくで引きちぎって砕いた木片といった感じだが、なぜ、そのようなものがあるか、ウィルたちには何となく想像がつく。
この世界の燃料は主にたきぎでまかなわれている。たいがいの町や村の側に野山がある、豊かな自然と人が隣合っているこの世界では、最も入手の容易い燃料と言える。
この教会、高原も周りを山林に囲まれているので、少し歩き回ればたきぎなどいくらでも手に入るだろう。ただし、それも山林に入れれば、だ。
魔獣の棲息している場所で悠長にたきぎなど拾っていられない。だから、フォケナスは従えている魔獣に木を折らせ、裏庭に運ばせ、砕かせたのだろう。
無論、伐採したばかりの木材など、たきぎとして使えない。が、何日かけて乾燥させれば、燃料として使えるようになる。
ウィルたちが男女に分かれ、井戸の水で体を拭いている間に、替えの古着を持って来たフォケナスは、それを置くと使えそうな木片を拾って教会の中に戻って行った。
体を拭いて用意した古着を着たウィルたちは、近くにあったたらいと石けんで自分たちの服を洗って出す。
奥に引っ込んだフォケナスはそれから出て来なかったが、指示されずともウィルたちは先に干してあった洗濯物を取り込み、洗ったばかりの洗濯物を干していく間にけっこう時間が経ち、いつの間にか夕刻に近くになると、一同の耳に子供たちの笑い声が聞こえてきた。
最初、ウィルたちは一緒に洗濯をする子供たちのものと思ったが、すぐに自分たちの方に近づく足音に気づいた。
「……何だ、オマエたち?」
ほどなく裏庭へとやって来た一匹の黒い子犬と十人の子供の内、ウィルより二つくらい下とおぼしき、最年長の男の子が首をひねりながらいぶかしげな声を上げる。
やって来た子供たちと子犬は、別段、さほど奇異な外見も様子もなかった。衣服が土でいくらか汚れ、手に土のついた野菜、野草、山菜を手にしているものの、特段、目を引くのはそれくらいだ。ウィルたちの側にいる子供たちの方が、暗い表情と雰囲気な分、人目を引くだろう。
「ああ、フォケナス様が言っていた、新たな供物か」
その男の子は少し考え、自分で出した答えに、後ろに続く子供たちも納得したようにうなずく。
「そうなるのだろうな」
間違った推測ではないので、ウィルも肯定する。
「なら、こいつを洗っておいてくれ。オレらはその間に、体と服を洗っているから、よろしく」
そう言うや、手にしている土まみれの収穫物を置くと、その子供たちの内、男の子はその場で服を脱ぎ出し、女の子たちはたらいと石けんを持って物陰へと移動していった。




