とにかく驚くぞ
「あんたらも、親がいないか、親に売られるかして、フォケナス様に引き取られたクチだろ。ラッキーだったな。ここにいればひもじい思いをしなくてすむぞ。食堂に行けばそれがウソじゃないってわかるし、とにかく驚くぞ」
当たり前と言えば当たり前だが、ここに連れて来られたばかりのウィルたちは、ここに先にいる子供たちに聞きたいことが山ほどあった。
それに対して、黒い子犬と共に強制労働から戻って来た子供たちの中で最年長の少年は、イタズラっぽい笑みを浮かべて、それだけの言葉、詳しいことは何も教えてくれず、とっとと教会の中に入っていった。
もちろん、その少年の他に問うべき子供は九人ほどいるが、
「もうすぐ夕食だから、話は食堂でしよ」
強制労働で土まみれの体を拭き、着替え、土まみれの服も洗濯して終わっているので、裏庭でやるべきことはやり終わっているし、空もすっかりと茜色に染まっている。
無理矢理、引き止め、反感を買えば、マトモに話ができなくなるし、当面、ここで共同生活を送るなら初日からもめるのも得策ではない。
時刻的に彼らの行動と主張は当たり前のことなので、ウィルたちは疑念を一時的に引っ込め、おとなしくその後に続き、食堂に至ると確かに、初見のウィルたちは驚くことになった。
食堂には三十人が着ける大きなテーブルがあり、そこには二十五人分の料理が並べられていた。
料理の内の二十人分が子供が食べるとしても、その一皿一皿の量は少ない。しかし、テーブルのところ狭しと置かれた皿の数はやたらと多いのだが、それ以上にウィルたちが驚かされたのは品数で、ざっと二十数種の料理が作られていた。
一品一品はありふれた家庭料理で、贅を凝らしているわけではない。が、普通、一般家庭で最も凝る夕食でも三、四品が当たり前なのを思えば、これは異常な光景と言えるだろう。ウィル、ユリィ、リタとて、パーティのような特別な時さえ、十品目が並ぶのを見たことがあるくらいだ。
見慣れぬ光景に立ち尽くす十四人に対して、これが当たり前の十一人は席に着いていき、
「……冷めてしまうと味が落ちる料理もありますから、早く席に着いてください」
邪教徒であろうがフォケナスの言うことはもっともなので、ウィルたちはおとなしくその言葉に従う。
先に席に着いた十一人は、不慣れな十四人をフォローし易いよう、一席ずつ空けて座っている。ウィルとユリィがフォケナスの両隣に座ると、他の十二人も次々と席の合間を埋めていく。
「ゴハンがまずくなるといけませんから、話は後でしましょう。今はおとなしく食事をしてください」
これも邪教徒であろうがフォケナスの言うことはもっともなので、ウィル、セラ、ユリィ、リタは心の中でうなずく。
かくして二十五人は食前の祈りを捧げてから、二十五品目の料理に手をつけていった。




