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全て神にしかできない領域なのですから

「さて、お久しぶりです。あなた方が来られた理由はわかっていますが、まあ、立ち話も何なので、とりあえず中にどうぞ」


 カミサマが去るや、フォケナスはフレンドリーにウィルたちを教会へと誘う。


 牙を剥いて唸っていた魔獣神も、今は尻尾を振って嬉しそうに「ワンワン」と鳴いている。


 教会へと戻って行くフォケナスと魔獣神の後ろに続きながら、


「ウィル。まだ詳しく聞いてなかったけど、あのアフロはナニモノ?」


「あー、何というか、魔獣神に仕える神官というか……」


 ルウに耳打ちで説明を求められたウィルは、言葉を探しながら応じる。


「それは見ればわかる。変な頭だけど、悪い感じはしないのもわかる。でも、ヤバくはなくても、あんたらがどうこうできる相手じゃないはずよ。聞きたいのは、そんなのと、どうやって知り合ったかよ」


「……護衛の仕事を引き受けた時、襲われた……」


 ためらったが、素直に馴れ初めを語る。


「は? いや、襲われたなら、仕方がないか。逃げるのも、まあ、無理か」


「ルウ姉じゃないと逃げられないよ」


「逃げられるなら、一目散に逃げるのが正解か。無理なら、抵抗しないのが一番なんだけど?」


「その時の仕事が、孤児の護衛だったんだよ」


「うーん」


 ルウとしては複雑な表情となるしかない。


 弟や妹たちには我が身を大事にしろと言いたいが、自分が同じ仕事、同じ状況にあったなら、敵わぬのを承知でルウはウィルらと同じ選択をしただろう。


「その場にうちがいればなぁ」


 フォケナス相手に勝てないまでも、ルウのスピードならかき回すのは可能だ。そして、攪乱に徹すれば、ウィルらが孤児を連れて逃げる時間を稼ぐのは不可能ではない。


 無論、それは、タラレバの話でしかないが。


 仮定の話を重ねても詮なきこと。ルウにしても、フォケナスの人間社会から孤立しているとはいえ、幸せに暮らしている孤児たちの姿を見れば、何が正しいのかなどわからなくなる。


 日数がそうは経っていないが、ウィルたちが護衛していた孤児たちは、新たな生活でだいぶ明るくなっており、今ではセラの方が表情が暗いぐらいだ。


 おそらく、サイコ・ゴブリンの出現とエンシェント・ドラゴンの襲来で、ウィルらが護衛していた孤児たちの故郷はトドメを刺されただろうが、そのことをわざわざ告げたりしない。新たな生活に慣れてきたばかりの孤児らには、不用、あるいはまだ早いと判断したからだ。


 時刻が時刻ゆえ、孤児たちは夕食の途中であり、フォケナスも夕食の席を立って魔獣神に従っていた。


 自分の分の夕食は残っているフォケナスだが、わざわざこんな場所まで来たウィルたちに配慮して、子供たちに用事ができたと告げてセラの苦悩を優先してくれた。


 やや手狭ながら自らの私室にウィル、セラ、ユリィ、ルウ、そして魔獣神を通したフォケナスは、


「さて、結論から申しましょう。この世界の者が温泉まんじゅうを手に入れるのは不可能。売店に赴く術も、現地通貨に両替する術も、全て神にしかできない領域なのですから」



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