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ユリィを連れて来るべきだったか

 メイリィの浄化の御業は、ぶち破った市門をくぐろうとした一体のアンデッド・ナイトと二十数体のゾンビをただの死体に戻したが、アンデッド・ナイトもゾンビもまだまだいる。


「炎よ! 壁となりて阻め! ファイア・ウォール!」


 だが、後続はリタの生み出した炎の壁によって、次々と火葬にされていく。


 もっとも、さすがにアンデッド・ナイトとなると、全身から白煙を上げつつも炎の壁を突破し、


「太陽神よ! 彼の武具に祝福を与えたまえ!」


 メイリィがウィルの手にする槍に祝福を、聖なる力を与える。

 無論、ウィルのスキルなら自前で自分の槍を色々と強化できるが、それを人前で行うのはあまりよろしくないので、メイリィに槍を聖なる輝きで包んでもらったのだ。


「気をつけてください、ウィル兄さん」


 サイコ・ゴブリンとの初戦で革の鎧を穴だらけされてから新調も修繕もしなかったゆえ、今のウィルは槍に平服姿なので、防御力に不安を禁じえない。


 このブランムの町で何かしらの防具を調達することは可能だったが、ルウが来ているから問題は解決したも同然と考え、緊張をゆるめたウィルは防具を後で何とかすればいいと判断したのだ。


 素体がどんなボンクラ騎士だろうと、アンデッド・ナイトの力と技は一体でベテラン冒険者一組と互角以上に渡り合えるほど。


 本来ならかなりの強敵なのだが、


「ハッ!」


 鋭い斬撃をかわしたウィルの一突きで、アンデッド・ナイトは沈む。


 祝福に限らず、御業というのは御使いの力量で威力・効果が異なる。メイリィの祝福を受けた武具なら、ファイア・ウォールでダメージを負ったアンデッド・ナイトを一撃で倒せても不思議はない。


「三、四人はリタの、その精霊使いの護衛を頼む。残りは弓なり石なりを持って、外壁に上がるぞ」


 言うなり、ウィルは手近な階段から外壁の上へと上がっていき、メイリィもそれに続く。


 この場にいる騎士らは少し戸惑ったものの、結局はウィルの指示に従い、その意図に大いに得心した。


 外壁に昇った一同の眼下には、まだ百や二百できかないゾンビの姿があった。ゾンビらは三体のアンデッド・ナイトの指揮の元、一部はファイア・ウォールの突破を試みつつも、大部分は外壁は打ち砕こうとしている。


 外壁の上に立った騎士や兵士、冒険者らは、眼下のゾンビに矢を放ち、石を投げつける。また、冒険者の一部、魔術師や御使いは、魔法や御業でゾンビらを攻撃した。


「ユリィを連れて来るべきだったか」


 アンデッドにとって弓矢は効果的な武器ではないが、それでもダメージを与えられないわけではない。ただ、万一を考えれば、セラたちの護衛としてユリィを残したのは、仕方のない戦力分散だろう。


 上から射られ、石をぶつけられていたゾンビらは、アンデッド・ナイトの指示で上へと石を投げ返していく。


 上に立つ方が有利とはいえ、数の上では圧倒的に不利だ。もっとも、防具で身を固めていれば、下からの投石で大したダメージを受けない。


 そんな中、ウィルとメイリィはうまく石をかわしつつ、


「太陽神よ! 不浄なる存在を清めたまえ!」


「ハッ!」


 浄化の御業が再び一体のアンデッド・ナイトと二十数体のゾンビをただの死体に戻し、投げ下ろされた祝福を受けた槍は、掲げた盾を貫いてアンデッド・ナイトの胸に深々と突き刺さり、別の一体のアンデッド・ナイトをただの死体に戻す。


 残る一体のアンデッド・ナイトは、ゾンビらに引き続き投石をさせつつ、自らは大きく後ろに、外壁の上から槍や御業が届かぬ位置まで下がろうとする。


「太陽神よ! 我に天使の弓矢を貸し与えたまえ!」


 仕える神に祈りながら、メイリィが弓を引いて放つ動作を行うと、光輝く一本の矢が後退するアンデッド・ナイトへと打ち出される。


 そして、天使の矢の御業が後退するアンデッド・ナイトを仕留めると、ゾンビらは完全に烏合の衆と化した。


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