序章
僕の瞳は、その一色だけを写していた。
この瞬間、僕の理性は吹っ飛んだ。
「パキッ」
小枝の折れる音が静寂していたその空間に響いた。後ろをゆっくり振り返る
*
違う、違う、違うんだ。
完璧になればなるほど消えてゆく。
人間らしさが。
機械のように淡々と、命ある限り永遠に完璧で、ある意味非凡な日常を過ごしていく。
小さい頃願った完璧ってなんだろう?
僕の耳に喧騒が帰ってきた。
見慣れた青色のログイン画面。キーボードを叩いて的確にパスワードを打ち込んでいく。こんなひとりになった時、思い出すのは過去のこと。
もう三年前のお話。
浄化できない話。
「ロクデナシ。」
そう呟いて出ていった母は、帰らぬ人となってしまっていた。
「最低っ!」
そう叫んで出ていった姉も今だ帰らずに、父とふたりで暮らしている。
僕には自分が何をそんなに悪いことをしたのかわからなかった。だからこそ嫌われてしまったのだろう。溜息をついて顔を覆うと、頬が濡れているのに気が付いた。
泣いていたのだ。
何が悪かったのかわからない。だから、弁解することもできずに母を殺し、姉を出ていかせてしまった自分を責めているのかもしれない。確かに母のことは正確に言えば、僕が殺したのではない。けれど、結果だけ見れば何ら変わりのないことなのだ。
自分を責めているのか、責めていないのか。そんな自分の気持ちすらも、理解できなくなっていた。
だから、周りにいた数少ない友人にも愛想を尽かされ、今のような生活が続いているのだ。そのことだけはわかっていた。そのことだけしかわからなかった。
非常だった。
いつか、「お父さん!僕いつかカンペキな人になりたい!!」と言っていた。
お前がなりたかったのはこれなのか?と、幼い自分に問いたかった。
幼少の僕は勘違いをしていた。ただ頭が良ければそれで完璧だと。
いや、つい最近までそんな考え方をしていたのだ。その勘違いのお陰で今は無駄に頭が良い。
でも、ただそれだけだった。
頭が良いだけで、人間らしさなんてない。
結局それが僕の本性なのだ。
そんなことを考えながら適当にパソコンをいじっていると、変な広告をクリックしてしまった。すぐにそのタブを閉じようとしたのだが、ふとこんな文字が目に止まった。
「命をかけたデスゲーム参加者募集中」
あ......
再び教室の喧騒が戻ってくる。