第10話 最終章。男性の生理現象について理解しておかないと危ないこと。
校内で決闘騒ぎを起こしかけたエレオノーレは、1週間の停学処分になった。
これには思った以上の署名が集まって、間もなく学院はそれを取り消した。
あの赤毛のエラ嬢はこの事件ですべてがさらけ出されて、退学処分になった。
彼女と関係を持った教師も解雇された。
2年Aクラス。アヒム君は今日も病欠になっている。
「残念だったな、クリストフ。くくっ。お前でもうまくいかないことがあるんだな?」
そう従姉殿が笑うが…上手くいかないことだらけだよ、そう言って笑い返した。
家同士の政略的な婚約なんて、ヒビさえ入れば、5分もあれば解消できると思っていたのにな。
「こうなりゃ、従姉殿とでも結婚しようかなあ」
「くくっ、私の婚約者に聞いてみようか?」
そんな気もないくせに。
そう思いながらクリストフは教室の窓から外を眺める。いいお天気だ。
***
停学処分を受けたエレオノーレはこっそりアヒムの部屋に忍び込んでいた。
もちろんアヒムの屋敷のみんなには秘密にしてもらった。
アヒムは昨日から寝続けている。カーテンが閉められて、部屋は薄暗い。
久しぶりにアヒムの匂いがする。
「王子様は、姫の口づけで目が覚めるんでしょ?」
そう言いながら、アヒムが爆睡しているのをいいことにエレオノーレはアヒムにキスをしていた。
「起きないじゃないのよ」
つまらなくなって、もぞもぞとアヒムの布団に潜り込んだ。
小さい頃、夏にアヒムの領地に遊びに行っていたときには、寂しいだろ?と頼んでもいないのにアヒムは私と一緒に寝ていた。いつからだろう…一緒に寝なくなったのは。
ふわふわの明るい金髪を触ったり、鼻筋に沿ってたどったり…好き勝手やってから、アヒムを抱きしめて眠りこんだ。
***
ああ、久しぶりに良く寝た。そう思ってアヒムが目を覚ますと、思いもかけない光景が…
「え?」
「え?」
「え?」
三回言ってみた。それぐらい驚いたが…すぐに夢だと気が付いた。
「…夢かあ…いい夢だなあ…温かいし…あまりにもノーレに会えなかったから、こんな夢見てんだな?」
アヒムは自分で納得すると、自分を抱きしめて眠っているノーレにキスをしてみた。夢だし。
おでこにも、頬にも髪にも…そして唇に…。軽く唸って、ますます体を押し付けてくる夢の中のノーレをそっと抱きしめる。あ、あ、足が…絡む。
…なんて都合のいい夢なんだろう…。
アヒムはそう思いながら…夢の中って、どこまでやっても許されるんだろう、と考えながら、自分自身を緊張と期待で固くしていた。




