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第1章プロローグ 歴史の染み

 ゆらゆらと、泡が踊っては溶けていく。


 激しい海流にもみくちゃにされ、上下左右すら判然とせず、己の身体が浮いているのか、沈んでいるのかすらも分からず。


 視界は暗闇に閉ざされ、手足の感覚が薄れていく。


 揺らめく水泡が海水に溶けていくとともに、己の意識までもがそれに混ざり合っていくのを、『男』は確かに感じている。


 ――だというのに、右手に握りしめた刀の感触だけ、やけにはっきり感じられるのはなぜか。


 溺死しかけている今となっては何の役にも立たない代物だというのに、『男』はそれを手放すことができないでいる。


 それさえも手放せば、己に残るすべてを失う――そんな気がしたのか。


 それこそが彼に残された、最後の生の証だったからか。


 その証にしても、ろくなものではなかったというのに。


 ――かつての彼はならず者、浪人だった。


 家族と別れ、故郷を捨て、彷徨い続け、剣の道に生きることを夢見続けていた。


 『男』には、生まれ持った才があった。

 それを活かすための努力も怠らなかった。


 ただ、不運なことに、彼はその才を拾い上げる者に巡り合えなかった。


 長年さすらい続けて『男』が辿り着いたのは、日ノ本の行く末を憂う志士達の下だった。


 彼らが掲げる世直しの理想など、彼にはピンとこなかったが、己の剣の才を世のために役立てるならと、『男』は志士たちに手を貸した。


 最初は夢を追いかけ、大義のため、英傑たるものとして彼らに手を貸したつもりだった。

 疑いなどなく、ずっと悪を裁いてきたつもりでいただけ。


 いつも通り、志士たちに言われるがまま、ある悪徳商人に誅を下すまでは。


 ――その日に限って、『男』は聞いてしまったのだ。


 今際の際に己の死への恐怖よりも、残される妻子を案じる『悪徳商人』の声を。


 彼は、善良な人間ではなかったかもしれない。だが、誰かの家族で――ただの日ノ本の民でしかなかったのだ。


 ――これは違う、と思った。


 『男』は人喰い(いぬ)になるために、志士たちの手を取ったわけではなかったのだ。


 『悪徳商人』の最後の掠れた声が耳にこびり付き、濁った瞳が目の裏に焼き付いて、いつまでたっても離れてくれなかった。


 ――それが『男』の最後の仕事となった。

 その日のうちに志士たちとは袂を分かつこととなった。


 それからというもの、剣を振るうため鍛えたはずの指先は、もっぱら糊口を凌ぐための笠を編むことに使われた。

 剣を振るったとて、精々がならず者の成敗か、用心棒止まり。


 仕えるべき主に恵まれることもなく、強敵との胸躍る死合(しあ)いもなく。


 そんな鬱屈した日々が続く中、幕府から一風変わった触れ(ふれ)が出されたという噂が『男』の耳に届いた。


 異国――英吉利(イギリス)への留学志願者を広く募るとのことだった。

 噂では特に厳しい審査もなく、志があり、身体健全であれば誰でも良しとされた。


 戯言と一笑に付した者がほとんどだったが、燻っていた大勢の志士崩れや浪人たちが半信半疑ながらも集まった。


 その中には、『男』の姿もあった。


 剣の道に生きられないのなら、何者にもなれず朽ちていくくらいなら、一度限りの人生、せめて何かを遺せる人間になりたい。


 気が付けばその想いに突き動かされ、彼は集合場所へ向かっていたのだ。


 驚いたことに、噂は(まこと)であった。

 集合場所の港では、異人のお下がりらしき古い大船が鎮座していたのだ。


 集まってきた浪人たちを、身なりのいい役人が愛想よく出迎え、船内へと導いた。


 噂通り、身元を検めることはなく。

 それどころか、刀を取り上げることもせず、持ち物検査もなし。皆、素通りだった。


 あからさまに良からぬことを企んでいそうな輩もいたが、やはり止められることはなかった。


 浪人たちが全員乗り込んだことを確認すると、愛想笑いを浮かべていた役人は「予想よりはるかに多い」などと機嫌よく呟き、手を振って出航の合図を送った。


 ――こうして船はまだ見ぬ英吉利(イギリス)への期待を胸に抱く浪人たちを乗せ、出航した。


 早速高価な上物の酒が振る舞われ、船内はちょっとした宴のような様相を呈していた。


 誰も彼もが酔っ払い、歌い踊り、互いにこれからの明るい未来に思いを馳せながら盃を交わした。


 出航してしばらく経った夜明け前――

 浪人の一人が異変に気付いた。


 ――水夫が誰一人いない。出航した時には確かにいたはず。

 夜闇に紛れて別の船に乗り移ったのか。


 一つ確かなことは、浪人たちは何者かの悪意によって海上に置き去りにされたということだけ。


 大方、古い船の廃棄ついでに不穏分子を一掃しようとしたのか。

 だが、もはや浪人たちにその悪意の主の意図を確かめる術などなかった。


 彼らを乗せた棺桶はそのまま潮に乗り遠洋へと流され、ついには大嵐に見舞われ――

 『男』が覚えている最後の記憶は、嵐の海――船上から投げ出された瞬間のものだった。



――ひと際強い潮にさらわれ、水泡が一つ、また一つと弾けて消えていく。


 もう『男』に苦しみはない。

 ただ、無念ばかりが募る。


 何も成せなかった悔しさが、そして虚しさが『男』を苛む。

 剣の道を捨ててもなお、何もできなかった。


 ただただ悔しい。


 その想いのままに、水泡のように散っていく己の命を手繰り寄せるように、『男』は刀を、より強く握りしめようとし――


 わからない。刀はどこへ行ってしまったのか。

 否、そもそも手はどこについているのだろうか。


 彼は愕然とした。


 無情にも、刀を握りしめていた手の感覚までもが失われている。

 もはや刀を握っているのか、手放してしまったのかさえ分からない。


 『男』に残されたのは、今にも消え入りそうな微かな意識だけ。


 『男』の『世界』はもはや底知れぬ暗闇に様変わりし、遂には意識という名の最後の水泡も弾けて深淵に融け、混じっていった。


 やがて訪れるのは『無』であるはずだった。

 しかし、『男』の自我は未だ完全には潰えず。


 己以外のすべてが虚無と化した世界をただ揺蕩う存在となった、この状態こそが『死』だというのだろうか。


 ここが彼岸だというのか。


 否――


 どこかへの強い引力を感じる。

 それに従ってしまえば、間違いなく、この状態から抜け出すことはできるのだろう。


 ――が、この無念を晴らすことは永遠にできず、抱いたこの想いも消えてなくなってしまうのだと理解してしまった。


 故に『男』は耐えた。ひたすら、耐え続けた。

 己の存在が引きちぎられようとも、その引力が感じられなくなるまで。



◆◇◆



 ――どれほどそうしていたのだろうか。

 ついには引力に打ち勝ち、何も感じられなくなった頃のことだった。


 己ひとりしか存在しないと思っていた虚無の世界に、何者かが入り込んできた。


「どうも、初めまして。桐間(きりま)光玄(みつはる)君」


 誰だ、と問おうとするが、『男』――光玄(みつはる)にはもう肉体はなく、声を発する機能は失われてしまっている。


「ああ、大丈夫。ちゃんと言いたいことは伝わっているんだ。僕は――そうだねぇ……

神様みたいなものだけど、自分でそう名乗るのは少しあれだから、『神モドキ』でいいや」


 軽妙で、優しげな声色。

 しかしながら、感情が一切乗っていないその声の主は、複数の存在が混ざり合っているような、奇怪で圧倒的な存在感を放っている。


 実体は感じられないが、相対しただけで押しつぶされそうな、凄まじい圧迫感を覚える。

 光玄の前に現れた神モドキはそれほどの異質な存在であった。


「悪いね。怖がらせるつもりはないんだ。死してもなお、そこまで自我を保っていられたのは想定外だったよ」


 ――ついに光玄は己の死をはっきり告げられた。

 分かっていたにも関わらず、何も成せぬまま落命してしまったことに対する無念さが彼を苛む。


「すごいね、君は。無念の想いというのは普通、酷く濁った音色を響かせるものだけどね。君のそれにはとても澄んだ……心地よい響きがある」


 好青年のようで、円熟した老人のようでもあり、あどけない少女のようでもあるソレの存在感は絶えずその様相を変え続ける。


 恐らく、神かそれに近い存在であろうこの神モドキは、人ごときが相対できるような存在ではないのだろう。


 肉体が、物理的に思考できる脳がある状態でこの神モドキに対面すれば、たちどころに発狂してしまうような、悍ましい存在なのだ。


「失礼しちゃうな。でも、その通りだね。あまり僕と長く接するべきではないと思う。だから早速本題に入ろうか」


 居住まいを正すような気配と共に、依然軽妙で砕けた様子で神モドキは続ける。


「実は、君が死んでからずいぶんと遠い未来の世界でね――

君みたいに、無念のうちに非業の死を遂げた人間がいたんだ。

ところが、その人間が大好きな物語の世界が実体化しちゃってねぇ」


 つかみどころがなく、その姿もはっきり見えないが、どこか遠くを見つめるような雰囲気を纏い、神モドキは言葉を繋いだ。


「――すごいんだねぇ、人の情念って。

架空の世界を具現化して、新世界の卵として生み出すなんて」


 光玄は神モドキの言うことの半分も理解できなかった。そんな光玄をよそに『神モドキ』は勝手に話を続けた。


「――で、『彼女』の魂は自らが生み出した、新世界の卵に流れ着いて新たな存在を得たんだ」


 もはや死した光玄とは関係のない話を神モドキは一方的に語る。


「それはどうかな、君次第では関係なくはないんだけどね」


 神モドキは一度言葉を切り、調子よく説明を続けた。


「――『光溢れる彼方へ君と共に』。それが、新世界の元となった『乙女ゲーム』さ。君にはそこへ行ってもらいたい」


 乙女げぇむなどと言われても、それが何なのかは光玄には皆目見当もつかない。


「ああ、そっか。君ってば『幕末』の人だったよね」


 しばし何か考え込む神モドキ。


「……いちいち説明するのもめんどくさいなぁ。西暦二〇〇〇年代あたりの知識を直に流し込むね」


 そう、神モドキが口にした瞬間、凄まじい知識の奔流が光玄に流し込まれる。

 例えるならば、湯呑に池の水を丸ごと無理やり押し込むような暴挙だ。


 当然、許容量を超えた光玄の存在が軋みをあげ爆ぜそうになり、ほとんどの知識(データ)は溢れ出て、残ったものは穴だらけのノイズに近い状態のものばかりだった。


「あれっ、ほとんど入らないや。存在力がもう残り少ないからかなぁ。

でもまぁ、必要最低限は入ったみたいだし、ある程度理解できたかな?」


 無理やり押し込められた、その穴だらけの知識からすると――


 『光溢れる彼方へ君と共に』というのは、どうやら物語を追体験できる『乙女げぇむ』という遊戯の一種のようである。


 しかも、おなごの色恋沙汰を扱う内容のようだ。


「うん、概ね理解できているみたいだね。

――で、ここからが重要で、この新世界の卵は、ゲームのエンディングの先への道が途絶えているんだ」


 何となく、光玄には向こう岸に繋がる橋が途切れているようなイメージが浮かぶ。そのイメージは正しかったのか、神モドキは調子よく説明を続ける。


「――決まったシナリオを辿り、エンディングを迎えればまた最初から、というループ世界になっているんだよね」


 好き勝手に流し込んでくれた概念知識から、神モドキの言う聞きなれぬ言葉の意味自体は光玄にも理解できる。


 だが、理解はできても、状況を飲み込めるかは別の話だ。

 その『るぅぷ』している、『乙女げぇむの世界』とやらに行って何をしてほしいというのか。


「まぁ、難しく考えなくていいんだ。君にはこの新世界に向かってもらい、運命(シナリオ)を破壊し――

ループから脱却させて未来へ繋がる道を切り拓いて欲しいのさ」


 とんでもないことを神モドキが言い出した。


 おなごが好むような世界に、このような武辺者を送って何ができるというのか。お門違いだ。


「お門違いだからいいじゃないか。物語を既定路線から脱線させるには、君みたいな武力に全振りした完全な異物が適任ってわけ」


 そして神モドキはやや真面目な声色で続ける。


「――それに、乙女向けと言っても、その元となった世界はずいぶんと殺伐としてるから、きっと君の剣は役に立つよ」


 生前、何も成し得なかった半端者に何を期待しているのか。

 武力ならば、なおさらもっと適任がいるはず。


 ――そう、例えば誰もが知っているような英雄豪傑が。


「そういうわけにもいかないんだ。彼らの存在はもう僕らの世界に深く刻み込まれて、その一部となっているんでね。

剥がすのはまず不可能だし、剥がせたとしても途轍もない大災害が起こるかもしれない」


 つまり、神モドキにとっては世界そのものから忘れ去られた、光玄のような半端者こそ都合がいいというのか。


「どうかな? 行ってくれないかな?」


 これで行きたくなるのなら、それこそ狂人だ。

 しかし、光玄にもこれだけは判る。


 ――要するに、この存在は光玄にもう一度機会を与えてくれるというのだ。

 何も成し得ぬまま朽ちていくだけだった、端役にすらなれなかった者に。


 あまりにも胡散臭く、信用できない。


 躊躇いはある。また剣を振るった結果、無自覚のまま無辜の民を傷つけることになるのではないかと。


 だが――これは光玄にとってはまたとない機会だ。

 ――もう一度、剣の道に生きることができる。


 この胡散臭い話に高揚感を覚えるあたり、やはり彼は『狂人』の類なのだろう。


「おや? 行ってくれるのかい?」


 しかし、『運命(しなりお)』の破壊と言われても見当もつかない。

 一体何をすればいいのか。


「そう難しくはないさ。

その運命(シナリオ)によって避けられぬ破滅を定められた、ある人物を助け導くことだけ」


「――避けられぬ破滅とは、また難儀なものでござるな。

しかし導くなどと、(それがし)如きにできるだろうか」


 瞬間、この虚無の空間に無尽蔵に拡散していた存在、神モドキが一斉に光玄を注視した。


 死とは本来、不可逆な現象だ。

 だが、今光玄は確かに自我を取り戻し、その思念は言語化できるほどに強まっている。


 肉体を失い、永い年月を同じ刻にしがみついている間、彼の存在そのものがボロボロになり自我さえも曖昧になっていたが、今彼はわずかながら死を克服したともいえる。


 このあり得ざる現象に、神モドキは尋常ならざる興味を見せ、今まで感じられなかった感情らしきものを発露する。


「すごいなぁ。『己』を取り戻したんだね?

その状態で自我が完全に復元されるなんてね。中々興味深いね」


 その感情らしきものはますます強まっていき、神モドキの存在が一つの巨大な存在へと収束していく。


 それでもなお、その全体像を捉えることはできず、はるかな高みにてこちらを見下ろす巨大な光る鳥のような存在として辛うじて感じられるだけだ。


 だが、光玄は臆せず問い続ける。


「どうやって彼の者を見つける?」


「これから、その人物のもとへ君を送り出すよ。

……きっと、出会えばすぐ判ると思う。なにせ、どうあがいても救われることのない運命に囚われた子なんだからね」


「では、出会ったら何をどうすればよい?」


「君はその者を主として仰ぎ、剣を捧げ、守護し導く――そう、君の夢を叶えるだけでいいんだ」


 夢――生涯光玄が抱え続け、最後には捨てたもの。

 単純なもので、その言葉だけで光玄の気持ちはより強く固まった。


「某としては望むところではござるが……

本当にそれだけでよいと?」


「そうとも。僕だって、君に世界そのものを変えられるほどの力がないのは、よく分かっているよ」


 神モドキはため息をつくような、やや人間臭い雰囲気を纏う。


「――ほんの僅かな綻びを作って、シナリオ破壊のきっかけを作ってほしい。それ以上は求めないさ」


「然様ならば良し。もはや問答は無用にござる」


「おや? もっといろいろと聞くべきことがあるんじゃないの?

向こうの世界や、君の主となる者の詳しい情報とか必要になるはずだよ?」


「否、断じて否」


 またもや、神モドキの方から何やら不穏な大波(データ)の気配を感じ取った光玄は、即座にそれを拒否した。


 次またアレを注ぎ込まれれば、今度こそ光玄の存在は爆発四散しかねない。

 この神モドキは人とは物差しが違う故、加減というものを知らないのだ。


「――御免こうむる。さっきのをまたやられては某がもたぬ」


 神モドキは光玄の返答に少し困った――肩をすくめるような、やや人間臭い気配を纏うと、大波(データ)をひっこめた。


「極めて困難な使命を君に押し付けているのは承知の上さ。

だからこそ、できる限りの手助けはしたかったんだけどねぇ」


「心配ご無用。成し遂げるも、潰えるも、全て某次第にござる。それに――

失敗したところで、某の代わりは他にも用意しているのであろう?」


「……中々鋭いではないか。でもそうだねぇ、君がそう言うのなら敢えて何も教えず、何も与えず君を送り出すことにしよう」


 少し突き放すような物言いだが、その声色には隠しきれない楽しさ、期待に似た感情がにじみ出ている。


「――自由にやるといいさ。きっと、それが使命完遂に繋がるだろうから」


 ふっと神モドキが纏う空気が和らぐと同時に、ソレの感情が強烈な圧力を持ち光玄へ向けられた。


 それは、困難な旅路へ向かう子への心配混じりの優しさにも、矮小な生き物を荒海に放り込むような残虐な好奇心にも似ている。


「――じゃあ、行ってらっしゃい。君の旅路に、救いあらんことを」


 神モドキの、その言葉と共に止まっていた世界が爆ぜ、光玄という名の沈殿していた『染み』が浮かび上がる。

 そして優しく押されるように彼方へ――光溢れる彼方へ運ばれていった。





 光玄の存在が旅立った後。崩れゆく虚無の世界の中。


 神モドキは困ったように呟く。


「やれやれ、せめて救済すべき相手の名前くらいは聞いていって欲しかったなぁ。

まぁ、彼の行動は予測できないほど好ましいか」


 神モドキがその巨大な翼を広げると途端に虚無の世界に光が満ち溢れる。

 その光に触れた先から、光玄を留めておくという役目を終えた虚無の世界の欠片が分解され、消えていく。


「――『濡れ烏の君(ぬれがらすのきみ)』を、イングリットちゃんをよろしく頼むよ、光玄君」


 消え去る世界の中、光玄が去った方を見つめる神モドキの視界に、ひどく頼りのない存在が一つ、光玄の後を追うように飛び去って行くのが見えた。


「ふふ、やっぱり人という存在の情念というのは面白いね。

――いい旅を。君も、ちゃんと光玄君に会えるといいね」


 神モドキが力強く一つ羽ばたきをすると、今度こそ虚無の世界は光の本流に飲み込まれ、消滅した。

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